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魔法都市探索

 「ここですね、周囲には特に魔物の存在は感じられませんが、一応気を付けていきましょう」


 目的地の少し手前で地面に降りると、そこの安全を確認し、もし何かあった時の合流地点に設定することにした。何かがあって逃げる時はここに逃げるというわけだ。


 「ここは、昔魔法都市があった場所らしいので、重要な手がかりが見つかる可能性は高いです」


 「魔法都市・・・ここは普通の町とは違うのね?」


 「ええ、魔法を研究する魔法使い達が中心となって生活していたようです。大きな魔法図書館なるものもあるのだとか、表層の町並みは既に崩れ去っていますが、ここの研究施設などは、主に地下とのことなので、まずは入り口を探さないといけませんね」


 「地下かぁ・・・」


 そう言いつつも、地下に入れる場所を感覚的に探し出すと、崩れた町の中でも中心部分に当たる場所に何やら気になる場所がある。

 何があるという訳でもなさそうなのだが、そこが淡い光を放っているかのようにアイリーンには見えたのだ。


 「シエル、ちょっと気になる場所があるんだけど」


 「どこでしょうか?」


 そう言われ、気になる場所のほうを指さし、シエルに伝えると、シエルは首を傾げてみたり、目を細めてみたりしている。


 「なんか、淡い光が見えるんだけど、見えない?」


 「すみません、私には見ることができないようです」


 「とりあえず、行ってみよっか」


 「はい」


 慎重に徒歩で近づいてみると、その場所にはやはり何もないように見える。瓦礫が積みあがって、それが更に朽ちている。


 「うーん、瓦礫が邪魔くさいわね」


 アイリーンがそう言うと、瓦礫がまるで意思を持っているかのように、動き出した。


 「わわっ! なんか動いた!」


 その様子を見たシエルも、驚いて言葉も出ないようだ。朽ちた瓦礫の山は隠していたそれをアイリーンに見せるように、それから離れた場所に移動したのだ。まるで整列をした軍隊のように。


 「これは・・・地下への入り口ですね」


 「おぉっ、早速見つかったね!」


 「流石アイリーン様です、私では見つけられませんでした」


 「これも女神の力なのかしら・・・? 良く分かんないけどちょっと便利だね」


 「ふふっ、女神の力をちょっと便利で済ましてしまうのですか」


 シエルの笑いのツボは良く分からないが、何やらウケているらしい。普通では考えもしないような力の使い方をして、ちょっと便利とは。確かに可笑しい事ではあるのだが。


 「ま、まあ、見つかったからいいじゃない? 早速行ってみよ!」


 「あ、お待ちください、何か罠などがないか一応調べてみます」


 結界などの反応はない、特に罠を仕掛けているような様子ではない。それを確認すると、漸く中に入る事になった。


 「何百年と経ってる割にはかなり綺麗な感じだね・・・」


 灯りをつけ、地下へと続く階段を下りながら周りを見てみると、数百年経過したとは思えないほど綺麗なものだった事が分かる。

 砦によっては、地下の廊下部分には施されていなかったりした状態保存の魔法が、ここではしっかりとかかっている。

 螺旋状に続く階段の途中には、その階層へと続く廊下があり、この地下空間がかなり広いものだということが分かった。


 「うわぁ、どこから探せばいいんだろ・・・」


 「流石にここまで広いとは・・・一旦一番下まで降りてみましょうか」


 「そ、そうだね・・・」


 階層を数えながら進むと、結局9階層まであった。表層は一般人が住む場所で、メインは地下都市と言われれば信じてしまうほどの規模だ。

 まずは一旦一番下まで降りて、下から順番に上がっていきながら調べるという事になったのだ。ゴールが地上なので、何事もなければそのまま帰れるという寸法だ。


 「では、ここからは手分けして探しますか、かなり広そうですし」


 「そうね、固まってちゃ効率悪いもんね。じゃあ、私はこっちから・・・」


 アイリーンは右側、シエルは左側と言う風に分担が決まった。広い範囲に灯りの魔法を施したおかげで視界は良好だ。特に魔物が住み着いたような気配はないし、何よりも数百年経過しているのに、真新しい建造物の中にいるような感じなのだ。


 廊下は左右に続いていて、そこから更に細分化しているようだった。一番深い所で生活していた人々は、一体どんな人たちだったんだろうと、想像を膨らませながら二人は別れて探索を開始した。


 一部屋一部屋扉を開けて確認しては、閉めるを繰り返し、シエルから貰ったメモに地図を作っていく。通路一つ一つを全て確認しながら進んでいくと、3つ目の通路に差し掛かったところで、その扉が魔法で封じられているのに気付いた。


 その扉の前に立つと、一見普通の扉に見えるのだが、アイリーンにはその扉に鎖が巻き付いているかのように見えたのだ。


 「これは・・・なんか怪しいわね、この鎖外せるかな?」


 その鎖に触れようとしたが、くれぐれも慎重にと言われたことを思い出し、思いとどまった。触れずにこの鎖を外せないかと考えると、その鎖はパキィンと音を立てて消えていった。


 「うーん、便利」



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