表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/261

二人で探索開始

 「逃げれる実力があると分かったところで、もう明日から一緒にいってもいい?」


 「反対する理由もなくなったしな・・・シエル頼めるか?」


 「そうですね、何か問題があればその都度対応しますので、私は構いませんよ」


 「やった! じゃあ明日はどこらへんからいく?」


 アイリーンのその問いに、シエルはしばし考えた後、持っていた新しい方の地図を広げた。既に探索済みの所はバツ印がしてある、何があったかを一応こまめに書き込んでいる辺り、真面目なシエルらしい。


 「おぉ、この星の地図なのね、手書きっぽいのがまたなんとも味わいがあるわね」


 「ええ、これはこの星を以前担当していた神が書いたものです」


 「ええっ!? 神様の直筆なの?」


 「とはいえ、現在は転生してアイリーン様の担当する大陸で生活しています、人間ですよ」


 シュウについては、シエルも大まかな事しかわからない。この星に居た頃については、それほど興味がある訳でもなかったので、詳しく聞いたりはしなかったのだ。


 「へえ、じゃあ今は誰も管理してないの?」


 「そうですね、一応この地図を描いた人の上司にあたる神は居ましたが、管理しているとは言えませんね。私達に嫌がらせをする為だけにこの星を維持していたに過ぎません」


 「うへえ、やな奴なのね・・・ああ、そいつに私の記憶も消されたんだったっけ」


 「そうです。私も深手を負わされましたから、やな奴という認識で合ってますよ」


 「やな奴で済ましていいのか、神様っつっても色々いるんだな」


 神と言う存在が、ウィードの知る限りでは存在しなかったので、二人の話は新鮮に聞こえるのだが、そんな遠い存在の話をしている風には見えないので、イマイチ神様という存在が良く分からなくなったウィードであった。


 「そのやな奴も、現在はその行為の罰を受けているそうですので、休眠中です。何時目覚めるかはわかりませんが」


 「えっ、じゃあまた私に何かしてくる可能性もあるってこと?」


 「そうですね・・・ないとは言い切れません。アイリーン様が不在ということは分かっているでしょうから、神も使徒もいないラプールを狙う可能性も・・・」


 「何の罪もない人たちが酷い目に合うかもしれないの・・・?」


 「そもそも・・・私やアイリーン様はその神に対して何かしたわけではないのですが」


 記憶がないから覚えてはいないのだが、そんな理不尽な存在があっていいのだろうかとアイリーンは次の言葉が出てこなかった。直接何かしたわけではない自分が記憶を奪われ、人間に転生させられた。その理不尽な事実を見れば、何もしていない無辜の民を傷つける事を何とも思わない可能性は大いに考えられる。

 自分の奥底に眠る記憶の中の愛する人々が、酷い目に合うかもしれないという時に、自分は記憶を戻すかどうかで悩んでいてもいいのだろうか?

 今の自分の葛藤が、とてもちっぽけなものに思えて仕方がなかった。


 「なあ、アイリーン。まずは記憶を取り戻せ、悩むのはそれからでもいいだろ?」


 そんなアイリーンの考えを見たかのようにウィードは背中を押してくる。20年も連れ添った家族のような存在のアイリーンが居なくなる事は、ウィードにとっても寂しい事なのは間違いないのだが、それでも、きっとここに居てはいけないのだという事も理解している。


 「お前に心配されるほど、俺たちは弱っちい存在じゃねえよ。だから、まずは行ってこい」


 「ウィード・・・」


 「辛い思いをされるのならば、無理にとは言えません、私は貴方の使徒なのですから」


 「いいえ、行くわ。まずは記憶を取り戻さないと、前に進めないもの」


 「分かりました。では、明日の朝またここにお迎えに上がりますので」


 「うん、ありがと・・・シエル」


 翌日、日が昇り始める頃に、シエルは再び狼の森へとやってきた。今日までの探索ではめぼしい書物は見つからなかったが、これからは二人で探す旅に出る。

 アイリーンにとっては初日という事で、比較的近い場所から探していく事にしたのだが、ここから近い場所と言っても、徒歩で行けば数日はかかってしまう。


 ウィードに聞いた話では空中移動も問題なく出来るとの事だったので、移動速度については心配はない。イメージさえ渡せば、直ぐにでも実行に移せるだけの力はあるのだ。


 「おはよう、シエル。今日からよろしくね」


 「おはようございます、アイリーン様。こちらこそ宜しくお願いいたします」


 「気ぃつけていけよー」


 「はいはい、気を付けますよーだ」


 「アイリーン様は命にかえてもお守りいたしますのでご安心を」


 「お前も無事に帰ってこいよ」


 「善処します」


 このような軽いやり取りの後、早速地図に印をつけた地点へと旅立った。直線で進むと途中結界のある場所にぶつかるので、そこだけは迂回していく事をアイリーンに知らせる。


 「森の外って・・・こんな感じなのね」


 この世界に生まれてから、初めての外の世界。永遠に続いているような見渡す限りの緑。山々も、草原も、大きな大きな湖も、全ての景色がアイリーンには新鮮に映った。


 結界の場所は迂回して進んで約2時間程、本日の目的地に到着したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ