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目覚め

 「まったく・・・だからいつまでも子供だっつーんだよ」


 「あの・・・すみません、私のせいですね」


 「いや、気にしなくていいと思うぞ。お前はお前の役目を果たした、そうだろ?」


 「ええ、そうです。私は神の使徒としての使命を果たすためにここへ来ました。ですが・・・その、記憶のない状態のアイリーン様を傷つけてしまいました・・・私は、あの方がこの星に留まりたいと仰るのなら・・・」


 「でも、あいつはお前のとこの星の女神なんだろ? 連れて帰んねーと、お前の星の民たちはどうなる。こうしてる間にも何か問題が起こるかもしれねーんだろ?」


 「それは・・・そうですが」


 そう、こうしている間にもラプールでの時間は経過している。いくらここよりも進みが遅いとはいえ、いつまでも待たせるわけにはいかないのだ。しかし、無理やり連れて行くという選択肢はシエルにはない。


 「まー傷つけたのは俺だしな? 頭冷えたら戻ってくるだろ」


 「ええと、それでは私は一旦拠点へ戻りますね、他の人間の遺物が残っていないか調査してきます。記憶を取り戻す方法が記された書物などがあればいいのですが」


 「そうだな、あいつの頭が冷えるのがいつになるかわからんしな、大人しく話聞くようになったらまたって感じだな」


 いきなり衝撃的な話を突き付けられたのだ、整理する時間は必要だろう。整理したところで、感情はどうにもならないのだが。


 「ああ、そうじゃシエルちゃん、帰る前に像をここの上に設置してってくれんかのう?」


 女神アイリーンの像はこの地下空間の上部、地上の寝床の中心部分に置かれた。狼達は喜び、多少小躍りしたやつもいたが、概ね好意的に受け入れているようだ。


 「さて、後は時間が解決・・・とはいきませんか。とりあえず私は地図に記された残りの遺跡になっているものを探す事にしましょう」


 狼の森を後にし、一旦拠点へと戻ったシエルはそうつぶやいた。シュウから貰った地図にはまだまだたくさんの都市や砦の名前が記されている。全部は残っていないだろうが、以前見た王都のようなところには、書物も沢山あるかもしれない。

 一応王都も詳しく調べてみる事にし、何もなければ、他を探す。そう計画を立てたのだった。



 「そう簡単にいくとは思えませんが、何もしないよりは断然マシです」


 もう日暮れが近いので、今日の探索はなしだ。夜間には危険が伴ってくるとシュウから聞いている。戦闘に慣れていないシエルは、余計慎重にならざるをえない。


 「そういえば・・・この星にも温泉などはあるのでしょうか・・・ついでにそれも探しておきましょうかね・・・温泉には母様との思い出もありますし」


 眠気が襲ってきてぼんやりとした思考で、かつて一緒に行った温泉や、白い部屋からいける女の子達が遊べる温泉。楽しい思い出を夢うつつに見ながらシエルは眠りに落ちた。


 

 「そろそろ起きなよ? お寝坊ギルちゃん」


 ここは罰を受けた神々が眠る寝所。病院のベッドのような簡素なベッドに横たわるギルに語り掛けるも、反応は・・・いつもならばなかった。

 そもそも、眠りにつく期間などとうに過ぎている。なぜ目覚めないのかは不明だった。愛しく思う子らをひどい目に合わせてしまった負い目があるからか、それともごちゃごちゃした事が面倒になって目覚めたくないと思ってしまったのか。それはギルにしかわからないのだ。


 声に反応してか、どうかはわからないが、ギルの瞼がピクリと動いたように見えた。


 「お? 俺の必死の声かけによって起きちゃう? お目覚めのちゅーとかしちゃう?」


 「・・・やめろ」


 「あらおっはよー? えらく遅いお目覚めだね。俺ここまで長い時間の罰は与えてないはずなんだけど?」


 「どのくらい眠ってたんだ」


 「ここの時間で? それとも君の担当のトリル時間で?」


 相変わらずふざけた態度を取り続けるそれをギロリと睨みつける。


 「あらやだこわーい、君の寝てる間に色々・・・ほんとーーーに色々あったんだよ? ちなみに正しい年月はわかりませーん! 心配ならすぐに行ってやれば?」


 「言われなくてもそうするよ、じゃあな」


 「寝ても覚めても塩対応だねえ、ま、いいや、行っておいでよ。きっと子猫ちゃん達は困ってるぞ」


 その言葉を聞き終える事もなく、ギルは急いでトリルの白い部屋へと向かったのだった。どのくらい寝てたかより、目覚めてからのこの胸のざわめきが気になったのだ。


 「誰か、誰かいないのか? コーマ! アイリーン! シュミカ・・・はまだ結界張ってるか」


 白い部屋には誰もいない。長らくここには誰も足を運んでいないような、そんな静かな空間に感じた。


 「ギル・・・おっせえよ! 今すぐシュウが元管理してた星にいってアイリーンの記憶戻してこい!」


 「は? アイリーンがどうして・・・」


 「あーもう、説明するからそこで正座でもして待ってろ!」


 通信でもわかる、凄い剣幕だ。遅くなったのは事実だから、言い訳などはできない。大人しく正座をしてコーマを待った。


 正座をして3秒ほどで現れたコーマは


 「マジで正座してんのかよ・・・」


 なぜかドン引きしていた。

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