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寝床のお引越し

 「おぉ、ここが新しい寝床かぁ!」


 「ここなら雨の時も濡れなくて済むな!」


 「食い物もあるって本当か?」


 狼達はいつもの寝床をあっさりと諦め、アイリーンの見つけた砦跡地へと引っ越ししてきた。引っ越しと言っても、家具などあるわけもなく、普通に寝る場所を変えるだけなのだが。


 砦が経年劣化で風化していたところは、崩れてくると危ないので、アイリーンが補強を魔法で行った。なので、地下空間の他にもちゃんと屋根のある場所ができた、半分外って感じなのだけども。


 アイリーン達や、ご長寿さん達は地下の個室が寝場所になった。毛布は沢山あったので、それぞれに一枚ずつ渡してもまだ余裕があった。食糧庫はセントールの砦と同じく、色々なものが備蓄されていたが、狼達に料理など出来るはずもなく、野菜などはそのまま頂くことになる。

 食材などを見ても、アイリーンにも調理の仕方などが分かるはずもなかった。この星に生まれ落ちてからずっと狼達と生活を共にしていたのだ、知る機会もない。

 野菜すらも初めてみる物ばかり。普段は木の実や果物ばかり食べているので、ここに備蓄されている食糧は大体初めて見るものばかりだった。


 「うーん、ここの食べ物っぽいのはどうやって食べたらいいんだろ?」


 「俺らは狼だから、そういうのはさっぱりわかんねーぞ」


 「だよねえ、私もさっぱりわかんない。なんか分かるような魔法ってあるかしら?」


 そう言った途端、アイリーンの目の前にある食糧の上に文字が浮かんだ。


 「わっ! 何これ! なんか変なのが浮かんだんだけど・・・あれ・・・なんで、読めるんだろ」


 「どうしたんだ? 何が読めるって?」


 「なんかね、分かるような魔法あるかな? って思ったら、この食べ物の上に・・・文字? が浮かんだのよ」


 「文字ってなんだ・・・?」


 「良く分からない・・・でもなぜか読めるのよ。不思議よねー」


 「人間だからなのか? あとで爺にでも聞いてみりゃいいな」


 「そだね、なんで読めるかは多分分かんないだろうから、とりあえずこの文字読んでみるね」


 細かい事は気にしない、大らかな狼とそれに育てられた娘であった。


 アイリーンは、野菜一つ一つの名前を読み上げて、その調理法を見てみるが、調理などしたこともないので良く分からない。


 「に、煮るってどうやるの・・・。焼くっていうのは、多分火で燃やす?」


 「おい、この粉はどうすんだ?」


 「えっと・・・それは小麦粉って言って・・・色んな料理に使われるみたいだよ」


 「ほう・・・例えば?」


 「ええと、水を混ぜて・・・捏ねて焼く?」


 「良く分かんねえな・・・詳しく分かったら教えてくれ」


 「そういえば、道具とかも色々あったよね、それで食べ物どうにかするものとかあったらいいんだけど」


 魔道具は、大体が使途不明だ。ご長寿さんですら分からないものだらけだった。


 「とりあえず、ここのは非常食として取っておこうか。何かの時に助かるかもしれないし」


 「まあそうだな、狩りが不調だった時の事とか考えて、無駄に使わずに置いておくのは賛成だ」


 食糧庫は一旦保留、非常時に持ち出すということに決定した。次は魔道具倉庫なのだが、ここの道具倉庫にも取説などは置いてなかったので、全て使い方やらなんやら分からないものしかなかった。


 「あー、これもさっきのお野菜みたいに何なのか魔法でわかるかな?」


 やはり発言した途端に情報が浮かんできた。鑑定という言葉が分からないので、目の前の物が知りたい時に教えてくれる魔法という長ったらしい名前がアイリーンの中で付けられていた。


 目に止まったのは鞄類。当然ながらマジックバッグである。容量は馬車一台分と書かれているが、馬車が何か分からなくて容量の把握ができなかった。だが、それなりに色々入れれる事はわかった。


 「これ、狩りの時に狼達に持たせたら、移動が楽なんじゃない?」


 「へえ、色々入れれる袋か、確かに便利だな。使いやすいように紐の長さを調節すりゃ大丈夫か」


 次に目に止まったのは、平べったくて四角い石板のようなもの。これは一体何に使うのだろうと眺めていると、情報が浮かび上がる。


 「魔道コンロだって、コンロってなんだろ?」


 「俺に聞くなよ、俺だって知りたいわ」


 「ですよねー」


 「なになに・・・魔力を通すと火が出る。野外でも料理が出来るって書いてある。もしかして、焼くとか煮るとか炒めるとかそういうやつがこれで出来るのかな?」


 「わからんが、そうなんじゃねえの?」


 「適当ねえ・・・」


 魔道コンロの傍に、フライパンと、鍋が複数組置いてあったので、そちらも情報を見てみると、魔道コンロの大きさに合わせたフライパンと鍋ですと書いてあった。


 「このフライパンと鍋ってやつを使って料理するみたい。あの野菜をどうやってこれで・・・」


 「流石に丸ごと使わねえだろ・・・ちぎるなり切るなりするんじゃないのか?」


 当然ながら、女子力という概念も言葉もないので、アイリーンの女子力皆無なのはウィードに知られる事は無かった。セーフ。

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