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棄権?

「泣きそうなギルに絆されたわけじゃないけど、トリルを棄てるなんて事はしないわ・・・」



その言葉を聞いてギルはくしゃりと顔を歪ませて、安堵の笑みを浮かべた。

トリルを自分達が育てているという自覚は既に生まれていて、今更それを棄てるなんて

もう出来はしないのだ。

巻き込まれた自分に責任の所在がないのだけど、それでも責任放棄みたいで嫌。


「シュミカが棄権って事なら、神の力を行使することはできなくなる。それが嫌なら

もう地上には行かせることはできない、どうする?」


崩れた表情を改め、真剣な眼差しを向けながらギルはシュミカに問う。


「棄権する、地上に行けなくなるのはやだ」


ほぼノータイムの即答だった。そりゃそうだなシュミカだし。

いくら元の世界の部屋を再現したり、人間の生活をしている風に過ごしていても、生きた世界で

過ごすのとは全然違う。

そうか、見えないところでシュミカには限界が来ていたのか。

と、自分の中で見えた結論はストンと腑に落ちた。


「アイリーンやコーマにはどうしても許可できないこと以外は極力僕が力を貸そう、細かな事でも

構わないから要望はどんどん出してね。」


「分かった、いきなり言われて直ぐには思い付かないけど、その都度相談させて貰う事にするわ」


とりあえず100年程時間を進めるという今日伝えるつもりだった要望をギルに伝える。

考えるまでもないようなささやかな要望だったらしく、その場で処理はなされ、左下に見えている

時間表示が目まぐるしく動いた。


「あの・・・・」


そこで、おずおずと背中を丸めながらシュミカが挙手をしていた。


「ん、どしたのシュミカ」


先程感情のままみっともない姿を晒してしまい、少しだけバツが悪いが

気にしてない風を装い返答する。

なんだか子供を宥める様な声色になってしまったが、まあいつもの事だろう。


「神様の力はなくなっちゃったけど、ここには来てもいい?」


もう怒ってない?と言いたげな目で人の事を覗き込みながら聞くんじゃない、可愛すぎか。


「いいよ、私もシュミカの下界での話聞きたいし・・・シュミカいないと寂しいし」


照れて最後のほうはゴニョゴニョした言い方になってしまった。

なんだか青春の1ページみたいで非常に照れ臭い、成人してるのに、いや神になってるのに。

最後の言葉が聞こえたか聞こえなかったかは分からないけど、シュミカはぱぁっと表情を明るくした。


「良かったぁ!嫌われたらどうしようって今更だけど怖くなっちゃって」


手のひらを胸の前で合わせ、心の底から安心した感じの表情を浮かべている、目尻にはキラリと

輝く涙が一滴見えた。

見目麗しいエルフになったシュミカに涙とか鬼に金棒だよね・・・。


「お前らさ」


ニコニコ微笑み合う私達に冷静な声がかけられる


「俺の事忘れてないか?」


もはや空気より存在感がなかったコーマがポツーンしていた。

あらやだほんとに忘れてたわ。


「・・・・・ごめん」


直視できずに目を泳がせながら明後日の方を見る事しかできなかった、マジごめん。


ガチの謝罪に影の薄い幼馴染は部屋の隅っこでのの字を書いていじけている。

黙って立ってたら乙女ゲーのスパダリみたいな見た目なのに、やることは小学生男子みたいな

ギャップに・・・トキメキはしない、今更だ。


それは置いといて、これからの事をもっとちゃんと考えないといけないな。

長い長い星の歴史とずっと付き合っていかなければならないのだから。


身近なシュミカの変化でさえ見逃してしまったという負い目もあるが、これからは今以上に

この星を見守っていこう、そう新たにアイリーンは決意を固めるのであった。


視界の端で未だにいじけているコーマを見ないことにしながら。


確実に構って貰えないと理解したコーマは気を取り直してギルに問いかける

幼馴染とはこういうものだ、淡い純情恋心を抱いたり発展したりするのはゲームの中だけだ。

頭の中ではギャルゲーの幼馴染ポジションの子が朝起こしに来て「もう、遅刻しても知らないんだからっ」

とかなんとか言いながらプンスコ怒っている風景を思い浮かべている。

そんなものは幻想だ。


「神の使徒って作ったりできるのか?」


くだらない事を考えていたのにこの発言である。


神の意志を下界にて実行する者は現時点では存在しない。

自分達の希望になるべく沿うように誘導しようとはしているが、上手くいく事はそれ程無い。

漠然としたイメージだけでは、やれる事に限界がある。


神の意志を明確に理解しており、人々を導ける存在。


そんな都合のいい存在がいても大丈夫なのだろうか・・・。


「出来ないこともないけど・・・」


できるんかい。

言いにくそうにしているところを見ると、なんだろうな、ややこしい事でもあるんだろうか。

あるんだろうな・・・。



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