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アイリーン奪還のために

 「って言ってもよー、その上司とどうやって連絡とるっつーんだ?」


 以前通信をしたのは、アイリーンとシエルだけだ。それも、あちらから話しかけてきただけなので、こちらからの連絡方法は不明だった。


 「んー・・・ギルに連絡したら通じるとか・・・ないかな?」


 「そんな都合よく・・・」


 そう言いながらも、ギル宛の通信を試みてみるコーマ。ギルが居なくなってから、定期的に通信はいれているが、反応があった試しはない。

 そこまで都合よくギルの上司が通話に応じるとは思えないし、そもそもギルの通信だから、出るはずがないのだ。


 『結構いい加減な子だと思ってたけど、意外とマメに連絡くれるね~?』


 突然の返答に、三人は固まってしまう。コーマとシュミカには聞き覚えのない声だったが、シエルは一度聞いている。間違いなく、ギルの上司だった。


 「マジかよ・・・あの、ギルの上司さん?」


 信じられない、と言った様子でコーマが上司に話しかけてみる。


 『なんだい? ギルはここにいるけど?』


 (((いるの!?)))


 「ちょっと! いるなら返事してよギル!」


 『いるけど、彼は今眠りについてるんだ。君の力を許可なく取り戻させてしまった罰としてね』


 いつもの軽いノリから一変して、真面目な声での返答。シュミカの中の魔物の力を取り除いた副産物として、シュミカは神の力を取り戻してしまった。それの罰だというのだ。


 「でもそれは、例のアレのせいでしょ!? ギル悪くないじゃん!」


 「お、おい、シュミカ、一応相手はお偉いさんだぞ・・・」


 『まあギルは悪くないっちゃー悪くないんだけどね? 一応どんな形であれルール違反は処罰されちゃうんだよねえ、まあもうそろそろ目覚めそうなもんだけど』


 「うぐぐ、神は理不尽・・・!」


 『あはは、そうだよ、理不尽なんだよ~?』


 「じゃあもう、お偉いさまでもいいや、ちょっと聞きたいんだけど!」


 『あー、例のアレ関連? アレも罰を受けてて今は眠ってるよ。他の星にちょっかいかけるのも厳密に言うとダメなんだけど、直接じゃないってんで見逃されてたのを、直接手にかけちゃったじゃん? 今はそれの罰』


 「え、まじで、だから最近ちょっかい掛けて来なくなってたの・・・」


 『そういうこと。他に聞きたい事は?』


 「あの、その例のアレという方によって、アイリーン様が害されたようなのですが・・・」


 シエルは、微かに震える声で、気丈に自分の身に起きた事、シュウの考察を述べていく。ノリの軽いギルの上司は、いつもの茶々を入れる事もなく、真面目に聞いてくれているようだった。


 「それで、元々例のアレという方の担当している星に向かい、アイリーン様がおられないかの確認だけでもしたいのですが、見つけることが出来たならば、連れ帰りたいと・・・」


 『んー、一応それはギルの仕事なんだけどなー、寝てるしなぁ。どうしよっかなぁ~、でも例のアレのやらかしは俺の監督不行届きだからなあ・・・うん、一人だけなら特別に許可してあげようかなっ』


 一人でぶつぶつ言いながらも、少しは申し訳ないと思っていたのか、許可が下りてしまった。


 「わ、私が・・・! 私が参ります!」


 片膝をつき、空を仰ぎながらシエルは言う。あの時守れなかった悔しさも当然あるが、何よりも母に会いたいと願う子供のような純粋な心からの叫びだった。


 『分かった。じゃあこのアイテムあげるから~、気を付けて行ってくるんだよ~?』


 そう答えが返ってくると、シエルの目の前に光り輝く玉が現れた。それはふわふわと浮かんでいる。


 『行きは一人分、帰りは二人分で指定してあるから、定員は守ってね~、あ、使い終わったら消滅するんで!』


 恐る恐るその玉を両手に受け取ると、光は収まり、綺麗なガラスのような玉になった。


 「ありがとうございます・・・!」


 『んじゃ後は頑張ってね~、ま、一応無事を祈っておくよ! またね~☆』


 「・・・、なんというか・・・温度差が酷い」


 「うん・・・ノリの違いがヤバイ」


 何はともあれ、これでアイリーンを取り戻す事が出来るのだ。まだそこに居ると確定したわけではないが、確信に近い何かは感じている。


 「とりあえず、出発する前にシュウに元居た星の事を聞いておこうと思います」


 シエルは逸る心を抑えつつ、冷静に準備を進めるようだ。


 「そうだな、情報は大いに越した事は無いからな。俺らはトリルから離れるわけにはいかないから、頼んだぞシエル」


 「アイリーンを・・・お願いね」


 「はい、必ずや母様をトリルへ」


 そう言うと早速シエルはシュウの元へと飛んだ。一旦天界を経由せずに直接ラプールへと飛んだようだ。冷静を装ってはいるが、きっと一刻も早く会いたいのだろう。

 シエルが居なくなってから、暫く二人はシエルの居た場所を見つめていた。


 「大丈夫よね・・・シエルちゃんなら」


 「そうだな、俺らが行くよかよっぽど頼りになるしな・・・」


 後はシエルに任せるだけ、自分達は信じて待つ。アイリーンがどのようになっているかはまだ分からないが、連れ帰ってきた時にどうするか、少しだけ話し合った二人であった。


 記憶を戻す方法を。

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