トリルの異変
「というわけで、ギルは暫く帰ってきません」
連絡会で、コーマに事のあらましを説明し、最後にそう締めくくった。コーマは神妙な面持ちで、私の話を聞いていたけど、私がそう締めくくると、大きく息を吐きだした。
「は~~~、なんだよそれ。神様同士で一体なにやってんだよ・・・」
「私が聞きたいわよそんなの・・・」
ギルが最初私達をここへ連れてきたのは、ゲームのベータテストってことだった。シュウ君も、似たような感じで、ゲームしている感覚で星を育ててたって前に聞いたことがある。
他の星でも同様の事が行われている・・・? 一体何のために?
考えても答えが出るわけではないけど、考えを止める事は出来ない。
「ねえ、コーマ」
「ん? なんだ?」
「神様って、気の遠くなるくらいの時間を過ごしてるって感じよね?」
「まあそりゃそうだな、俺達はまだ序の口ってとこだろうけど、早送りなかったら、絶対暇だったと思う」
「これ、さ・・・、もしかしてなんだけど、神様たちのお遊びだったりしない?」
「は? 俺達やシュウみたいなのを使って、遊んでんのか?」
「なんか、そんな気がしてきて・・・、違うと思いたいけど」
もし、それが本当だったとしたら、神になってまで神に弄ばれてしまっている私達って・・・。ううん、神様なんて理不尽なんだから、それはあきらめるしかないんだけども。
「でも、シュウっていう例があるしな・・・アイリーンの言う事も、とんでもない事ってわけでもないかもしれないな」
「まあ、それが分かったとして、私達にはどうしようもないんだけどね・・・」
「ま、まあな・・・」
二人で妙に落ち込んでしまい、沈黙が流れる。どうすればいいのか、見当もつかない。神々のお遊びに巻き込まれたっていうのが分かったとして、私達にはどうすることもできないのだ。
何もかも投げ出して、地球に帰せと言ったところで、じゃあトリルはどうなるの? シエルは? ネルは? シュウ君も元々は地球人だよ? それに、既に恐ろしく時間が経っているって前にギルが言ってた、今更地球に帰るにも、もう地球はないのだから。
私達を諦めさせる方便かもしれないし、そうじゃないかもしれない。憶測でしか、今は考える事ができない。八方ふさがりとはこの事だろう。
「今は、その事実の追求より、ギルの居ない間にまたちょっかい出されないように、気を引き締めるしか出来ないな」
「うん・・・」
「シュミカも結構参ってるみたいだから、ちょいちょい顔出してやって元気づけてやってくれよ。俺じゃ無理だ」
「そうね、そういうのは私の担当だもんね?」
今は分からない事について、あれこれ考えて沈み込むより、やるべきことが沢山ある。身動きが取れなくなってしまったシュミカを、少しでも元気づけてあげれれば・・・。
「部屋に戻ったら、早速シュミカのとこに行ってみる。もし、何かあったら通信で呼んでね」
「ああ、わかった」
コーマは、私がシュミカの所へ行くので、この白い部屋に残り、トリル全体の様子をみる役目を買って出てくれた。シエルも、念のため私と一緒に来てくれるらしい。
部屋に戻った私は、早速・・・と思ったけど、今までギルに連れていって貰っていただけなので、ウレインに行く方法が良く分からない事に気付く。
こんな事なら、自力で行けるように、やり方を聞いておくべきだった・・・!
「母様は、私がお連れしますので、ご心配なさらず」
まさかの、シエルが連れてってくれるとか! ああ、そうかシエルは何度もラプールとここを行き来しているんだったわね。頼りになる子!
「あ、あはは・・・ごめんね、余計な仕事増やして」
「母様をお連れするというのは、私にとっても嬉しい事なので、謝らないでください」
ふわりと、優しく微笑んでくれるシエル。娘ポジションなのに、なんて頼りになる子なのかしら。母親気分でいたけど、これではどちらが母親なのかわかったものではない。
しっかりしなきゃとは思うんだけど、そ、そのうちね・・・。
「では、行きますよ母様」
「お願いするわね、シエル」
シエルがそっと差し出した手を取り、その様子を見ていると、シエルが首を傾げている。
「・・・? おかしいです、母様。ウレインへ入る事を拒否されているようです」
「え・・・?」
拒否? シュミカが拒否ってんの?
「ちょ、ちょっと通信で呼んでみる! シュミカ! シュミカいるの?」
『はぁい、アイリーンどうしたの?』
何かあったのかと思ったけど、いつものシュミカの声だった。ちょっとだけ、元気がない程度だ。
「なんか、ウレインに入れないんだけど?」
『えっ・・・!? ど、どどどどういうこと?』
「いや、それは私が聞きたいんだけど・・・」
『あ、だ、だよね? 結界の機能はなにも変えてないし、それは通過できるはずなんだけど・・・』
その間も、シエルが転移を試みてみるも、見えない壁に阻まれているようだと、悲しそうに私に報告する。やがて、通信をしているシュミカの声にノイズが入りだした。
一体、何がトリルに起きているの・・・?




