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ギルの上司

 シュミカから、なぜか通信が入ったと思ったら、特大の爆弾が投下された。なんでまた、次から次へと問題が起きちゃうんだか・・・。これは全部例のアレのせいね、ギルのうっかりもちょっとあるかもしれないけど。


 考えたくないけど、もしかして、これも罠だったりするのかな・・・。考えすぎかしら? シュミカが結界を張ったのはあちらにバレていたとして、結界に吸収させるために、自分の力を入れた魔物を用意。そして、その異変に気付いたギルが取り出すところまで想定していたとしたら?

 取り出すときに、シュミカの制限まで引っぺがすように細工されていたとしたら・・・?



 「だめだ、なんか良くない考えばっかり浮かんでくる・・・!」


 ギルに通信で呼び掛けてみても、今はまだ反応がない。もしかして、分析しているギルに何かあったのでは・・・。あーだめだめ、今物凄いマイナス思考になってる。

 ルール違反ってことで、ギルが処罰されたりしたら・・・。あ、また良くない方向に・・・!


 早く反応返してよぉ・・・!


 祈るように、通信のアイコンを見つめてしまう。今はラプールが落ち着いてる状態だからいいものの、もし、今何かあれば、私とシエルで対応しなければいけない。気をしっかり持たなくては!


 シエルもどうしていいのか分からずに、私の隣に座って、私の手をそっと握ってくれている。その瞳には不安の色が見える、そうよね、私がしっかりしないと、シエルが困ってしまう。でも・・・、ギルと連絡が取れない事には、この不安は解消される事は無い。


 と、その時、通信のアイコンがキラリと光ったように見えた。


 「ギル? そこにいる? 返事して!」


 「ざぁ~んねんでした、ギルじゃないよ。ぼくちんは、ギルの上司だよ~?」


 このふざけた喋りの人は、私の知る中にはいない。ギルの上司? 話の中には出てきたけれど、会話をしたことも、姿を見た事もない。どんな人なのかもまったく知らないのだ。

 でも、この言い方・・・ロクな性格ではなさそうなのが良く分かる。


 「お急ぎの所申し訳ないんだけどさ? ギルはもうちょ~~~っとだけ顔出せないからね?」


 「!? それってどういう事・・・ですか!」


 「んー、それは、ひ・み・つ☆」


 「ふざけないで! ギルをどこへやったの!」


 「あらまー、えらい懐かれてんねー? 簡潔に、かつ、色々はしょって言うとだね、ギルはルール違反の容疑が掛かってて身動きとれねーんだわ?」


 嫌な形で私の不安が的中してしまったようだ・・・。なんてことだ・・・。


 「もし、何かお困りの事でもあれば、代理の奴そっちにやるけど、いる?」


 「いらない。ギルじゃなきゃダメだもの」


 「おーおー、部下にこれだけ慕われてたら、上司冥利に尽きちゃうね~。今の言葉はちゃんとギルに伝えておくから、安心しなよ?」


 「早めに、ギルを私達に返してください、私からはそれだけです」


 「ふうん、結構落ち着いてんね。ま、いいや、君らの言う例のアレがやらかした事っていうのが確定したら、帰れると思うよ~? んじゃまったね~☆」


 ・・・、なんてふざけた人なのかしら。いや、神だったわ。


 これは、シュミカに報告しておかねば・・・。でもどういえば・・・。


 「あの、あのねシュミカ?」


 『ひじょーに言いにくいんですが・・・』


 困ったような声が聞こえてくる。まさか、シュミカにまで何かあったの!?


 『さっきの会話、普通に聞こえてた・・・』


 「えっっ? さっきのふざけたギルの上司の言葉も?」


 『うん、なんかノリが軽すぎて、神様って感じが欠片もなかったけど、理不尽なのは神様って感じだったね?』


 「ま、まあ・・・話聞いてたんなら、そういう事なので・・・」


 『なんとなく、想像で、そういう事になるんじゃないかなー・・・とは思ってた。しばらく普通に何も考えずに農業だけやる事にするね』


 「う、うん・・・」


 農業大好きなシュミカが、農業だけやるって言ってるのに、あんなに沈んだ声してるなんて・・・。今すぐにでもギルの拘束されているであろう部屋に、怒鳴り込んでやりたい。でも私にはそれがどこにあるかさえ分からない・・・。


 なんて姑息な手段で、ギルを追い落とそうとしているのか。例のアレは、本当に性格が最悪だわ!


 考えれば考えるほどに、腹が立ってきて、頭に血が上る。そんな私を隣で静かに見つめているシエル。ああ、冷静になれ私、シエルを困らせてはいけない・・・。


 「母様、今は私達に出来る事を、少しずつやっていきましょう。ギル様は、きっと帰ってきます、先程の方も時間はかかるけど、帰ってこないとは言いませんでしたし」


 「そう・・・ね。そうよね、あの人の言うちょ~~~っとっていうのがどの位かは分からないけど、帰ってこないとは言ってないもんね。ごめんね、シエル。私がしっかりしないといけないのに・・・」


 「いえ、気になさらないで母様。大変な思いをしているのに、私の事を気遣っていただいてありがとうございます」


 そうだ、私は今は一人じゃない。ギルが帰ってきたときに、ビックリするくらい発展させてやるくらいの思いでやっていこう。シエルと一緒に。

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