シュミカの異変?
シュミカが地上に遊びに行くようになってからというもの
三人がそれぞれの部屋でトリルの前に居揃う時間が減ったため、時間の流れがそれまでに比べて
とても緩やかになっていた。
以前にも増しての遅い歩みに痺れを切らしたアイリーンとコーマは次の定時連絡会で時間を100年余り
進めてみようと提案するつもりだ。
コーマがギルから教えてもらった集落の個人情報一覧の出し方は既にアイリーンとは共有されている。
神託については、限定的なサービスなので伝える事でもないか、とコーマの判断で伝えられていない。
困った様子を見ればギルがなんとかするだろうと、楽観的に考えたためだ。実際そんな状況になれば
ギルはそうするのだろうけども。
アイリーンは、一覧を出すとき「何か困っている事」を出すようにしている。
人々が何を欲しているかを知り、ポイントを使って解決の土台を用意する、そこからは下界の人々の手に
委ねる。
お手本のような運用だった。
それを繰り返してはいたが、いかんせん秒で解決できるものなど存在しないので、膨大な待ち時間が発生していた。
当然ながら課金で解決することはできない。
大陸のほとんどが実行待ち状態になった所での亀の歩みである。
100年も経てば、現在は小さな畑も大きなものへと変わり、村も町へと発展し新たな土地の開拓も
多少は進むであろうと考えたのだ。
シュミカだけがトリルの前に居ない事が多いので、自然とコーマとアイリーンが意見を交換したり
情報の共有を行ったりするようになっていた。
シュミカはあれから毎日6時間きっかり下界に降り立っている。
毎日がエブリデイである。
「大体いないとか毎日何やってんだか・・・」
ため息交じりに独り言ちる。
気になってギルに尋ねてみても、なんやかんやとはぐらかされる。
まぁ、何かしらはやっているんだろうけど、当人が元気そうだし後ろめたい態度も取っていない、と思う。
シュミカは隠し事ができないタイプだ。それは高校時代から大人になってもずっと変わらない。
神になっていきなり腹芸を覚えるなんてことはないはずだ、シュミカだし。
嘘をつくのはアイリーンだって苦手なので人の事は言えないが。
案外なんとなしに聞いたらとんでもない事をポロッと言いそうな・・・そんな予感さえする。
と、考えていたところでシュミカが白い部屋に現れた。
生き生き、ツヤツヤとした笑顔がまぶしい。多少寝ても寝なくても肌ツヤ関係ない今の体では
ツヤツヤのお肌の秘訣など聞いても意味はないのだが、そうじゃない。そういう意味ではない。
眩しい笑顔を見ていると、ふとシュミカの頭に何かついているのを発見した。
「シュミカ、あんた頭になんか付いてるよ?」
自分の頭を指さして、シュミカに何かついているのを伝える。
「えっ、なになに!?虫でも付いてるのっ!?」
あわあわ慌てて全然見当違いなところをペシペシ払っている。
「そこじゃなくて、ほらこれ」
見かねて取ってあげる。
なんだか高校時代にも似たようなことがあったなー・・・と既視感を覚える。
大地を独り占めーとか言いながら帰り道に河原の土手を転げ回って正直ドン引きしたので、めちゃくちゃに印象に残っている。
あの時も転げ回ってこちらに戻ってきたときこういうふうに頭に草をつけて・・・草?
「シュミカ・・・あんたこれ・・・っ!」
つまんだ草をシュミカの目の前に突き出す
「あー!ちょっとはしゃぎ過ぎて転んだ時に付いちゃったのかなー?」
転んだのはまあいい
いつもの事だ。
いやそこじゃない、はしゃいで転んで・・・付いた?どこで?
草とシュミカを交互に凝視する、その後ろでギルが「あちゃー」と言わんばかりに
片手で顔の片側を覆っているのが見えた。




