最初の設定を思い出す
そういえば、もう随分と時間が経ってる気がする、だからというか、なんというか。自分のした初期の設定をすっかり忘れている気がする。例えば、魔物の分布。次に獣人の分布。
思い返してみると、ゴブリンとコボルトは配置したわ。でも人間の住むところとはかなり離れた場所に配置してるし、今もそこから動いてもいない。そして普通に暮らしている・・・。
わざわざ配慮しなくても、割と平和だったのでは? そう思ってしまいそうになるが、いやいや、人間の近くだったらきっと初期設定のゴブリンやコボルトだと、仲良くとか無理じゃない?
コーマのとこはゴブリンとオークで、しかも後から配置したから、設定も穏やかに極振りとかやったおかげで、ちょっと見た目の違う人くらいのレベルに馴染んでいる。というか、ロクストはそもそも普通の人間いないからいいのか・・・。
「ねえ、ギルちょっといい?」
「はいはい、何かな?」
「初期で配置したゴブリンとかコボルトって後から設定弄ったりできるの?」
「ポイント使えば出来るけど、ゴブリンやコボルトクラスなら割とやっすいよ。ステータス弄るのが一番高くて、性格とかそういうのはお安い」
「なるほど、あまり能力に関係ない所だとそんなにかからないわけね。その処理は一括で行われると考えていいのかな? あと、その場合、数によって変動したりする感じ?」
「そうだね、確か100単位くらいで加算だったかな? うろ覚えなんだその辺、ごめんね」
「なるほど、ありがとねー」
そういえば、ゴブリンて繁殖力凄いぽいけど、あまり溢れ出したりはしてないよね。今の数は・・・っと、検索かけてみよ。
全部で1000も居なかったわ。各地の森の奥の方にひっそりと集落を作って慎ましやかに暮らしていた。コボルトはそれよりも少なくて、全部で500もいなかった。これなら、ポイント的にも余裕かな?
一応弄る予定で、この子達のステータスとか特性とか見てみるかぁ。
ふむふむ、ステータスは全く弄ってないからデフォルト状態だね。うん、弄った覚えないもん。コボルトも右に同じだった。
一覧状態にして、デフォルトにはついてない性質や技能などがないかチェックしてみよう。
魔法は、元々素質がないのか、全く覚えていなかった。そういえば、コーマも言ってたけど、ゴブリンて魔法が覚えにくいって話だったよね。コーマのとこのゴブリンが異常ってギルがボヤいてたことも思い出す。
初期状態だと、ほっとけば勝手に増えて、人間や家畜を襲う可能性があるってことだったよね。
技能的には、生活に必要な物を覚えているといった感じだ。例えば、掃除とか料理とか。特に戦闘技能もあるわけでもない。食肉を得るために粗末な竹槍とか持ってるかと思いきや・・・この子達も罠作って捕獲してた。
そして性質なのだけど・・・。
『穏やか』が付いてた。魔物にまでラプールに染まってんの? いやまあ穏やかに越したことはないんだけどね?
そして繁殖力のところにマイナスが付いてた。詳細を見てみると、どうやら繁殖し過ぎると、慎ましく生活しているせいで、食糧難になってしまうと。なので、必要最低限の繁殖で済ませるようになっていったらしい。
進化なのか退化なのか・・・。
同じようにコボルトにも『穏やか』が付いてましたわ。
そして、存在をすっかり忘れていた私の事をどちらも崇めているらしいのよね・・・。集落の中央部分には私の木の像が立ってた。
なんだか、滅茶苦茶申し訳なく思えてきたんですけど・・・。これはお詫びの石、じゃなくて、スキルをプレゼントした方がいいわね。この子達の言葉はギャギャギャとかワフワフとかだから、言葉と、木像の前に生活魔法の石碑をプレゼントすることにした。忘れててごめんね・・・。
全部で1500くらいだから、ポイント加算が怖いわーって思ってたら、思ったより安く済んだ。お財布にも優しいなんて、更に申し訳ないと思ってしまうんだけど?
無言でプレゼントというのもアレなので、皆が寝静まった頃に、夢で神託をばら撒いておく。
「この星に生まれてから、慎ましく、穏やかに生活してきた貴方達に私からのささやかな贈り物です。どうか受け取ってください。皆に言葉を。そして、皆に生活で使える魔法を。これからも、このラプールの民の一人として、元気に生きてくださいね。」
営業スマイルばりばりだけど、今の姿なら大丈夫。女神なので!
忘れててごめんねってことは、あえて言う必要もないし、内緒にしておきたいので言わない。
「母様は、魔物にも慈悲をお与えになるのですね」
「ええ、迷惑をかける様な魔物だったら、ここまでしないけど。この子達はそうじゃないからね」
「お優しいですね、流石母様です!」
飛び切りの笑顔いただきましたー! これで私はあと10年は戦える(何と?)
翌朝起きたゴブリンやコボルトたちは、自分達が喋れるようになっている事を互いに確認し、そして集落の中央へ集まり、石碑を優しくそっと撫でていた。まあ、触るだけで覚えるんだけど。本当にこの子達は穏やかで優しい気質を持っているんだということが良く分かった。
まだ人とは出会っていないこの優しい魔物達の慎ましい幸せがこれからも続きますように。




