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転生者シュウ、新種の動物と遭遇する

※シュウ視点です


 暫く音沙汰のなかった女神から、メモ書きが送られてきた。どうも、乗り物を作る際に、引っ張る動物が要るだろうってことで、新しく創ったらしい。既存の馬じゃない辺り、真面目な性格なんだなと思う。

 きちんと、ファンタジーしないといけないって思ってるのかもな?


 まあ、折角ファンタジー要素を盛り込むのが可能なんだから、それをやりたい気持ちはよーくわかる。俺も実際そうだったし。それでもやり過ぎないあたりに、彼女のバランスの良さが分かる。やり過ぎず、ショボすぎずだな。


 「さて、ちょっと動物に詳しい人を連れて、キャドリーを探しに行ってみるかな。」


 ついでに、ゴムゴm・・・いや、トリルゴムの木を探してこよう。乗り物の研究には既に乗り出している、車輪関係には俺もちょっと悩んでたんだよな。これは素直にありがたい。


 早速動物に詳しい人の家に行ってみると、丁度出かけるところだった。なんでも、新しい動物が居るというのを神託によって知らされたというのだ。女神様は結構根回しもしっかりしてらっしゃるな。


 これは幸いとばかりに、一緒に行くことにする。場所は、アルケミスタから歩いてもそこまで遠くない場所だった。草原があって、さらに進むと森がある。その付近にいるらしいというのだ。


 女神からのメモ書きによると、キャドリーは草食で、その辺の雑草が主食なんだとか。餌も結構配慮されている気がする・・・。人の食べる物だと世話が大変だもんなぁ。

 人の生活を脅かさない程度にって考えたんだな、ついでに言うと、乗り物を引っ張る仕事以外の時は、畑の雑草を食べて貰ったりできるみたいで、人の生活に大いに役立つ。


 雑草抜くのって、意外と手間がかかるし、しんどいんだよな。主に腰が。


 父親が、畑仕事をしているから良く分かる。俺も手伝うしな。一息ついたときに、よく腰をトントン叩いてる父親をよく見かけるようになった。いつまでも若いというわけにはいかない。


 それがちょっと楽になるかもと考えると、乗り物云々が無くても、キャドリーがちょっと欲しいと思ってしまう。何匹か連れ帰って、乗り物が完成するまでは、畑の雑草を食べてもらおうか。


 まだ見ぬキャドリーを相手にそんな事を考えながらも、黙々と歩き続けると、草原地帯に差し掛かった。この辺にいるのか?


 「この辺りに、生息しているはずだ。」


 一緒に行動している動物好きの人、ラントさんがそう俺に告げてきた。キョロキョロと辺りを見回し、やがて、何かを発見したような動きを見せた。


 「あ、あそこ!」


 指さす方向を見てみると、かなり遠くの方に何かいるのが見える。良く見えたなこの人・・・。


 「もう少し近づいてみますか?」


 「そうだね、もう少し近づいてみないと鑑定もできないしね。」


 動物限定の鑑定をしてくれるらしい。まあ、一応設定自体は俺も知っているんだけど、実際に触れあってみないと分からない事もあるしな。あ、夜叉鵺は家に置いてきた。キャドリーが怖がるといけないからな。


 驚かさないように、静かに近づいていくと、鳥のような顔の手足がドラゴンのような? なんか上手い事足して2で割ったような動物がいた。草食ってるわ。

 そこには単独ではなく、複数のキャドリーがいた。群れで生活する習性でもあるのか?


 「ふむ・・・この動物はキャドリーというらしいね。主食は雑草で、人懐っこい性格をしているらしい。ちょっと接触してみるよ。」


 そう言うと、ラントさんはそのままそろりそろりとキャドリーに向かって歩き出した。この人は俺が契約魔法を伝えて、普通のその辺に居る動物と契約したりしていて、動物と仲良くなることにかけては集落で一番だと思う。


 ある程度近づくと、キャドリーたちはラントさんに気付き、首を一度かしげた後、ラントさんに自ら近づいていった。割とデカいので、あんなの普通に近づいてきたらちょっと怖いけどなぁ。

 

 ラントさんは近づいてきたキャドリーたちに何やら話しかけているようだった。デカいくちばしをラントさんに擦りつけて、頭を撫でて貰ったりしている・・・。懐くの早すぎじゃないか? いやでも人懐っこい設定だからそれでいいのか。野生とは。


 何を話しているのかは、ここからでは聞こえないが、言葉の喋る事の出来ないであろうキャドリーたちと和気藹々としゃべり続けているラントさんは、なんかすげーって感じだ。ム〇ゴロウさんみたいなもんかな?


 やがて、ラントさんが契約魔法を発動し、その場にいたキャドリーたちは全員一緒に集落に行くことになった。野生で既に人懐っこいけど、一応人のいる場所に慣れさせようということになったのだ。

 俺は、乗り物の計画があるという事をラントさんにも話し、キャドリーはそれを牽引する動物になりえるんじゃないかと伝えた。


 ラントさんは、キャドリーの足を見て、「なるほど、足が速そうだし丈夫そうだし、いいんじゃない?」と軽いノリだった。いいのかそれで。


 キャドリーは全部で4匹。そのうちの一匹を後日、乗り物を研究している人達に譲るという事になった。


 これでまた俺たちの生活が一歩進むことになる。

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