表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

駅のエレベーターの鏡【夏のホラー2020】

作者: 江渡由太郎 原案:J・みきんど
掲載日:2020/08/22

 これは私が体験した実際の恐怖体験である。


 会社から自宅へ向かう帰り方向の地下鉄に毎日のように乗車し、自宅の最寄り駅で下車をする毎日変わることのない日々を送っていた。


 いつも地上階へ向かう急で長い階段を足腰痛めながら登っていた。


 登り切ると呼吸は荒くなり、心拍も激しく拍動している。


 無理をして急いで階段を駆け上がっている訳でもない。


 只々、階段の傾斜がきつく何かの苦行でもしているかのようであるためである。


 ある日、隅に隠れるようにエレベーターの設備があることに気がついたわたしはその日何気なくそれを利用することにした。


 エレベーターのボタンを押すと鈍い光が点灯した。


 それは、橙色の暖色系でありなんとなく見ていると眠気がしてくる。


 だか、そんなのも吹き飛ぶくらいに苛立ち始めていた。


「遅いな。こんな夜遅くに他に誰がこのエレベーターを使うって言うんだよ。全然来ないんじゃ、いつも通り階段登ってた方が早く外についたんじゃないのか!?」


 わたしはなかなか降りてこないエレベーターに益々苛立ちを募らせていた。


 やっとエレベーターの扉が開き、私は中へと乗り込んだ。


「やっと来たか。何でこんなに遅いんだよ。階段で上がった方がもうとっくに外に出てるぞ」


 目の前に人が居て驚いたが、それはエレベーター内に設置されている大きな鏡であった。


 この鏡は車椅子利用者の為に設置されているもので、わたしはそれに映った自分の姿に驚いたのだ。


 気を取り直し操作パネルの前にたった。


 B2、B1、地上という三種類のボタンがあり、私は初めてここが地下二階だったのだと知った。


 地上という文字のボタンと閉のボタンを押すと、扉は閉まり上へと向いはじめた。


 その感、この密室のエレベーターの中でわたし一人のはずだが、人の気配というか何かに見つめられているというような違和感を感じていたのだ。


 直ぐに地上階へ着き、扉が開いた。


 何故か、あんなにも待たされて乗ったはずのエレベーターがこんなに早く地上階へと着くのかという疑問が頭を過ぎった。


 その日は、あまり深く詮索しないように気持ちを切り替えて家へと帰宅した。


 次の日もまたエレベーターを利用する為、私は昨夜と同じようにエレベーターを待っていた。


「相変わらずこのエレベーターは遅いな。こんなに遅いんじゃ夜が明けちまうぞ」


 わたしは皮肉をエレベーターの扉に向かって吐いた。


 やっとエレベーターが来たので、わたしは中へと入ると異臭がした。


「臭えな。誰か屁でもエレベーターの中でしたのか!? それともこのエレベーターの中で糞でもしたんじゃなあだろうな→」


 悪臭はまるで腐った肉の様な腐敗臭であった。


 そして、枯れ枝を折る様な乾いた音がしはじめたのだ。


「な、何だよ。エレベーターの部品でも壊れてる音か!?」


 すると、突然三度ほど鉄製の扉を激しく叩かれエレベーターの鉄の箱が小刻みに揺れて停止した。


「ま、マジかよ!? エレベーターが止まった!? 何なんだよいったい!」


 予想外の出来事にわたしは混乱してしまい、頭の中が真っ白になった。


 そして、突然エレベーターは通常通り動き始め、私を地上階へと運んでくれたのだ。


「エレベーターが止まるなんてマジ焦った。まるで宙吊りの鉄の棺桶だ」


 わたしは地上階でエレベーターから降りると安堵の溜息をついた。


 ふと、後ろを振り返るとエレベーターの中の大きな鏡にわたしの姿が映っていた。


 その顔はわたしの表情とは異なり、不敵な笑みを浮かべながら口を動かして言葉を発している素振りをしていた。


 わたしはその口元を読み取ってみた。


「お・れ・か・ら・は・に・げ・ら・れ・な・い・よ」


 その言葉が終わるのと同時に、目の前のエレベーターの扉は閉まってしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ