序章 1話 神の誘拐
連載頑張ります!!
神々の国アルカトラル、そこは全ての神々が住う神域。そこは神々の楽園であり世界を保つための場所であった。
ある者は言った。
「神を殺すぅ?……………無理に決まっていんだろぉ?誰がそんなこと出来るってんだよ」
と、またある者は。
「そんなことは、あり得ません。神は絶対であり遥か超常の存在である。我々の手が届くことなど起こり得るはずがありません」
と、言った。
しかし今、一人の人間がこの神国アルカトラルの地に立っていた。周りには多くの瓦礫の山のようなものができていた。それらが彼の手に握られている大量の血が滴る二本の刀から彼によって倒された神々の山だということが分かった。
その人間は真っ青な海を重ねたように深い青色の髪に、それと同じ色をその双眼に宿らせていた。顔立ちは中性的な顔つきでありその双眸は相手を見定めるように細められていた。その両手に握られているのは二本の刀。ひと目で業物だとわかるその刀を中心に大きな魔力の奔流が生まれていた。
「人間ヨ。ナニヲソコマデ欲ッスノダ。ソノ眼ノ先ニハ何ガ見エテイル」
彼に語りかけるのは一人の神……、いやアルカトラル最後の神。六対の翼を持ち、その背中には巨大な光の光輪のような魔法陣が描かれており、その両手には巨大な錫杖が二本握られていた。その神、最高神アムシリス。
「………」
最高神アムシリスの問いかけに彼は無言を貫く。最高神アムシリスの放つ魔力も尋常なものではなく、彼が持つ二本の刀を遥かに上まわるものだった。その魔力の前には何者も存在することすら許されない。浴びただけで全てのものが消滅する。
しかし、彼は最高神アムシリスの目の前に立っていた。それは刀だけではなく彼自身の実力がかなりのものだということを語っていた。だが彼からは一切の魔力を感じない。それだけ彼が自らのの魔力を完全に制御していることの証明だった。だからこそ最高神アムシリスは彼の底知れぬ力に警戒して下手に動くことができなかった。
「人間ヨ!!答エヨッ!!」
勝負は一瞬だった。最高神アムシリスが声を荒げたその瞬間を狙って彼は二本の刀を重ねた神速の袈裟を放った。世界最高峰の強者同士の戦いとしてはあまりに呆気ないものだった。彼は倒れゆく最高神アムシリスに言った。
「……世界のためだ」
彼は、表情を変えず無機質にそう告げ、刀を鞘に納めようとした。しかし最高神アムシリスもそれで黙って倒されるほど容易い相手ではなかった。
「ガッ?!ナントイウ…………力……。…………シカシ!貴様ノヨウナ者ニ、コノ世界ヲ明ケ渡スワケニハイカヌッ!!!!我ガ最後ノ光ニテ共ニ散レッ!!『神の残光』!!!」
「な……………ッ?!」
油断していた彼に『神の残光』を止めることも、防ぐことも敵わない。辛うじて納めかけていた刀で身を守ることしかできなかった。
そして彼の視界は眩い爆光に支配され、その場所に神々の国アルカトラルすら破壊するような最高神アムシリスの膨大な魔力による超爆発が起きたのだった。絶対絶命、そんな状況であり例え彼でなくとも例外ではなく助かる道など万に一つもある筈がなかった。しかし……。
「全く、アムシリスはなんてことやっているんですかねぇ。せっかくの私が選んだ子だというのに」
一人の神によって彼は助けられた。いや、これからの彼のことを考えると連れ去られたというべきか。
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