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腹の蝶々  作者: ×万
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頭痛

「あんな所にも花は咲くんですね」

病院の廊下の窓から眺められる工場の淵にある用水路の両端に、大量に咲いた花を見て、柴田洋太郎は医師にそう呟く。

「あれはというハルジオンという花で、北アメリカ原産の帰化植物です。主に道端等で見かけられます。」

「花、詳しいんですね。」

「いえ、たまたま知っていただけです。あのハルジオンという花は、繁殖力が強く、定着力があるので、あの様な場所にでも花を咲かすことが出来ます。今回の事故は、誰にも予想できないものでした。柴田さんの怪我は、今後の生活に支障をきたすものになりますが、辛い環境にめげずに頑張って下さい。」

俺は去年の大震災で、崩れてきた家の瓦礫が右足に挟まり、右足を切断した。

意識が戻り、目を開ければ病院のベットの上で、暖かくて黄色い日差しが部屋の窓から差し込んでいた。首を下に曲げると、自分の膝の下が丸くなっているのを感じ、全てを悟った。

意識が戻ると、直ぐに退院することが許されたが、今後が問題だ。

これからは障害者として生きていかなければならなくなった。

両親から今朝、紫色の障害者手帳を受け取ったとき、生きていたのは良かったけど、本当に面倒なことになったんだと改めて実感し、小さくため息を着いてしまった。

あの時、瓦礫が右足に挟まった後、誰かと何か話をしたような気がするが、その時のことを思い出そうとするたびに頭痛がして、気分が悪くなるので、思い出すことを諦めた。

「洋太郎、大変だったでしょう。とりあえず家へかえろうか」

母親が、病室の戸を開けて部屋の中に入り、眉間にシワを寄せて心配そうにそう言う。

「ああわかった、帰る」

「大変だったな、これからは何をするにも協力して生活していこう」

母の隣に立っていた父親は少し小さい声で俺にそう言う。

俺は看護婦に車椅子に乗せられて、病室の外に連れていかれた。そこには病室名が横に入った白いハイエースが停まっていて、俺はウェルキャブに乗せられてハイエースに乗車することが出来た。その後、病院のハイエースは俺の家の前に停まり、俺は無事に帰宅した。

今日は何故か食欲がなくて、退院祝いに出前を取ろうという話を父親がしてきたが、何も食べたくない部屋で寝ていたいと言い、あっさりと話を終わらした。

部屋のベットで寝転がりながらスマートフォンをいじってYouTubeを見ていたら、急上昇している動画のトップに去年の震災の動画が上がっていた。只々、地面や建物が揺れ、映像の外から人々の悲鳴や女性の泣き声などが聞こえる動画だった。コメント欄を見てみると当時の恐ろしさを述べたコメントが多いかと思えば、恐怖に陥っている人々を馬鹿にするようなコメントばかりで見ていて余計に不快になった。

その動画を見るのを止めようと思い、動画を消そうとしたとき、その動画に気になる人物が目に飛び込んできた。その瞬間、当時の事を全て思い出した。

その動画に現れたのは、赤いダウンを着た短髪で長身の男だ。そして、そいつは俺の高校時代の同級生だった。

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