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最終話☆あの世界から消えた日
記憶の残滓を辿る。また、忘れてしまったのだろうか。気づいたら辺りは、真っ白な花畑だった。遠景は光と────地平線は森に隠されていた。
ここはどこでしょう?
「来たのね」
その姿は。あの時別れてしまったサンドラだった。
「アレクサンドラ、また逢えましたね!」
「ええ。千年ぶりくらいかしら?」
「そんなに時間が経ったのでしょうか? 申し訳ないのですが、記憶があいまいで……」
無垢色の百合の花畑を、ふたりは歩く。
「ここには何でもある。水も、食べ物も、ほら。鳥だって」
サンドラが手をかざすと、無から生き物が生まれた。
「わあっ! すごいです!」
「でしょ?」
サンドラは微笑む。その表情は安らぎに満ちていた。
これでいいわ。これがあたしたちの幸せなのよ。
他なんて、もうどうでもいい─────
新しい世界で、あたしたちは永遠に暮らすのよ。
偽物の紫の薔薇は、静かに呟いた。
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