表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/21

19☆ふたりの結末

走り疲れたふたりは、石造りの町を歩いていた。このまま逃げ切れるとは思えない。今は彼女たちに残された最後の時間だ。


「サンドラ」


「何?」


「ありがとうございます」


「い、いきなり何よ?」


「記憶を思い出した時、あなたは最後まで私に手を差し伸べてくれましたね」


「ああ、そんなこと」


サンドラは照れ隠しにあまり気にしないフリをした。後ろでは城が崩れる音が遠雷のように木霊していた。


「ティスだって、ひとりぼっちだったあたしを救ってくれたわ。この前も。ずっと前も」


ずっと前。王だった彼女の前世の記憶である。


「なんだ、そんなことですか」


「……馬鹿」


「……うふふ♪」


仕返しだ、といわんばかりに彼女の顔はにやけていた。サンドラもまた、最後だというのに心中は穏やかだった。


音が消えた。城は崩れた。彼女は決意をした。


「次の命でも、また。また逢えますかね?」


「と、当然よ……! でも……」


普段自信家な彼女だが、確信はもてなかった。天使と大王が出会ったのは、気が遠くなるほど遠い過去。御伽噺の世界の話だ。記憶が滲み消え失せるような悠久の時を彷徨った。そして今。次はいつになるのだろう?


「サンドラ……」


「あたしはティスに会うまで、他人なんて気にしなかった。征服、支配。それが、それだけが王族の生き方だった」


「……」


「……あんたが初めてだったわよ。あたしに反抗したヤツはね」


「……サンドラ! まだ諦めないで……! お別れはイヤです!」


気づいてしまったのか、ソクラティスはサンドラに抱き着いた。


「あたしたちは、こうなる運命────」


「あのときだって────」


「また、逢いましょ?」


ソクラティスの頭を撫でるように、サンドラから光が放たれた。


「最後にこれをあげる」


ツインテールをほどき、彼女の瞳と同じ紫色をしたリボンを手渡した。


「そんな……」


「どんな時間だって、世界だって」


あたしは、あんたのそばにいるから────


ソクラティスは光となった。


サンドラの【願い】はソクラティスをこの世界から救うことだった。








次で最終話です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ