18☆願いの果て
「願います────」
「ティス────」
少女の願いは花びらのように散る。
「憎しみの業火に包まれたサンドラを──」
運命に選ばれた天使の力。
「駄目。あたしにそれを使っちゃ───」
「救って!」
光る。
「あ、あ、あ───」
【天使】であるソクラティスの【願いを叶える力】によりサンドラは命を救われた。
しかし。その力を使ってしまうということは、同じ【天使】であるエンペドクレスを倒すことが不可能になってしまうことだった。
「やはり、愚かだ。我が【力】は支配する為にある!」
「いいえ! 【力は】人を救うためにあるんです!」
「ティス……!」
初めてだ。この世界で彼女が声をあげる瞬間を見たときは。
「【力】に憑りつかれ、かつて王だったあたしを見てるみたいね。あんた」
(そういえば、アイツに惚れたのもあれがきっかけだったわね)
「今の貴様等に何ができる……!?」
「できるさ。逃げるくらいはね」
「その声は……!?」
「お待たせ致しました。お嬢様」
セリスとアリス。二人とも満身創痍だが、このピンチの状況では、頼もしい存在だ。
「あんたたち……!」
「あまり時間はない。猶予はやるから、二人で決めるんだ。これからどうするか」
「戯言を……! う……!」
「他の天使は無力化させました。残るは貴女と、ソクラティス様のみです」
天使の消失。即ちそれはクレスの戦力の半減を意味する。倒すことはできずとも、時間稼ぎなら可能というのがセリスの見立てだ。
「でも、あたしたちじゃそいつには勝てないんでしょう?」
サンドラの言葉。弱体化しているとはいえ、今の四人で天使は倒せない。
「ああ。そうだ。今の我々ではね。ティスかサンドラ。どちらかの犠牲無くして勝利は無い。これだけは言える」
「……!」
「行けッ!!!」
アリスの魔法。玉座から伸びた、氷の滑り台。
「わかったわ。ティス!」
「え……!?」
わかってる。あいつらを見捨てるってことなのは。それをあんたが認めないことだってね。
「サンドラ……!」
「いいから!」
サンドラは強引にティスを連れて飛んだ。
「サヨナラだ。二人とも」
アリスが倒された。残ったセリスは灼かれながらも最後の力を振り絞り剣を振るうのだった。
そろそろ終わります




