17☆崩壊
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遠い過去の記憶が流れる。
「ダメです! こんなことは間違っています!」
「あたしが王として! 成し遂げならなければならないの!」
「あなたどうして一人で全部背負おうとするんですか! それじゃあ私の…天使が存在する意味は!?」
「あたし一人でやる! あんたは何もしなくていいの!」
「そんな……」
これじゃあ…あのときと同じ…
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「サンドラ!」
ソクラティスは力いっぱい叫ぶ。そして敵に向かって走った!
「馬鹿っ!? なんで目の前に!?」
「私の力で! サンドラを守る!」
「そんなことしたらティスの命が…!」
光の壁が相手の攻撃を防いだ。寿命を削り願いを叶える、天使の力。
「片割れ! 何故そいつに協力する!?」
「大切だからです!」
「そんな理由、理解できない!」
容赦なく四属性の攻撃が放たれる。衝撃波と共に天使の記憶が流れてきた。
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天使は五人いた。その中にクレスとソクラティスの姿もあった。人を導き幸せにする。それが彼女たちの使命だからだ。
しかし、過去の記憶は違った。神話では良い部分のみ伝承されていたが、実際は違う。天使を戦争や政治の為に利用する者たちが現れたのだ。
そしてその力は分散して一部の者に分け与えられた。それが魔法。
人々に力を与え、豊かにする。その目的は達成できた。だが。最終的に天使は戦争の道具と成り果てた。
『私たちは、こんなことの為に生まれたのではありません!』
天使たちは散り散りになり、やがて千年の眠りに就いた。心が壊れたまま。
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「全部…! 思い出しました」
天使としての記憶。理不尽への反逆。憎悪。怒り。悲しみ。
「ティス…!?」
「ほう。ならばあなたもこちら側に付くべきです」
エンペドクレスはゆっくりと、ソクラティスに手を差し伸べた。
「なっ!? ティスに触らないで…!」
「黙れ。今貴様を消せばこの輪廻は終わるのだから」
「ティス…」
ためらいつつも、サンドラもまた彼女の方へ手を伸ばした。
「今こそ私たちを苦しめた王の血を絶やすのです」
「あたしは…ティスがいないとダメなのよ…お願い…」
「私は…」
「もういい。貴様が先に死ね」
最後まで手を差し伸べていたのはサンドラだった。
しかし。無慈悲な炎が、彼女の身体を灼いた。
まだ続きます。
そろそろ終わりますが(*'▽')




