13☆最大の敵
「これから俺たちは騎士団に全面的に協力する。失敗すれば反逆者となり命を落とす。降りたきゃ降りればいいさ」
部下たちにぶっきらぼうに言うのがこの男。ギーヴこと本名はギーヴァル。誰も逃げようとはしなかった。かつてはセリスと決別した過去を持つ彼は、今度は仲間を巻き込んで彼女に手を貸そうとしていた。
「気になると思う所だが私たちには勝算がある。決して血は流れない方法さ。もちろん敵も含め誰一人ね」
セリスがソクラティスに触れながらこう叫んだ。しかしそんなにうまくいくのだろうか? サンドラはアリスの隣でそれを見ることしかできなかった。
「……どうされましたかお嬢様。そんなに心配ですか」
アリストテレスこと、アリスはサンドラをなだめるような口調で言った。どんなにあがいてももう遅い。革命は始まってしまった。彼女の屋敷で武器を、部隊を集め、確実性の高い作戦が練られていた。流れに身を委ねるしかない。そんな現実をふたりはどこかで理解していた。
「ふん。弱気なんてアンタらしくないね」
「……誰だっけあんた」
「クサンティッペだ。正直今でもぶっ殺したい所だが、アンタらのやる気はコッチの士気にも影響するんでね」
「ふん。別にどうでもいと思っていたわよ」
「ならいいんだけどね」
そう言うと彼女は後ろに下がっていった。しばらくして全員で移動が始まる。
「これだけの数が動いているのだから、もう謀反は見抜かれているだろう。だからこそ正面きって進む。この国の二大戦力が集結しているのだから、相手は何もできず侵略を受け入れるしかない。もちろん、奥の手でもない限りね」
「本当にそれだけなのか?」
「それが誰にとっても一番さ」
ふたりの団長は勇ましく先陣をきる。既に王宮の門が見えてきた。
「ここまで抵抗なし。少し予想外だね」
「おいおい大丈夫かよ」
王宮は恐ろしいほど静かだった。
「予定通りこのまま玉座に進む」
なんだか嫌な予感がする。サンドラだけではなく皆がそう思った瞬間だった。
「……本命のお出ましだ。全員距離をとれ」
醜く曲がった歪な翼。見慣れた白亜の肌。色が抜けた髪はストレスによるものだろうか。
「殺す…!」
ソクラティス、の紛い物。
「人造天使。生まれて来ることは罪ではないがボクたちの前に来る行為は詰みだね」
「消えてもらおう」
セリスとギーヴは同時に剣を抜いた。
 
 




