case.19 天使と悪魔、神器と死神
ぶち飛ばしていきましょう
『―――あっ』
俺が、カッコよくキメたそのすぐ後、アスモデウスはそう漏らした。
どうした……?
『そういえば言うの忘れてたけど……』
……?
『キミの中にお邪魔させてもらう……ってゆーか、まあボクを連れて行くってことはさ……―――ボクの罪を背負って貰うって事だからね?』
……ああ。なんだ、その事か。
それなら、サタンに会った時から覚悟は出来ていたさ。
『あ、なーんだ。覚悟してたんだー、つまんないのー』
アスモデウスの罪は【色欲】……何故その罪を背負う事になったのかは知らないが、俺はもう【憤怒】と【暴食】の、二つの大罪を背負っているんだ。
今さら一つや二つ、百個だって増えようが構わないさ。
『へー、中々肝が座ってるんだね』
……というか、もう慣れただけだ。
『……過酷な運命ってヤツかな。それじゃボクの力もあげるよ』
……お前の罪……。
▶スキル『色欲』を獲得しました。
―――確かに背負わせてもらったぜ……!
■
「―――なぁアスモフィ」
「ん、なぁに?」
「……やりすぎだ」
「……ごめんなさい」
「だけど……」
「……?」
アスモフィは怪訝そうな顔で、こちらを覗き込む。
俺は、近くにあるアスモフィの顔にドキドキしつつ、一息置いてからポソッ、とこう零した。
「―――ありがとな」
「……ふぇっ……? え、え、今……えっ!?」
顔をボンッと一気に沸騰させ、真っ赤に高潮させたアスモフィ。
そんなアスモフィを見て、恥ずかしくなってきた俺は、すぐさまハヌマーンの方に向き直る。
「―――さあ、随分と待たせてしまったな、ハヌマーン。ここからは俺一人で戦おう」
と、俺が言った。
すると、両隣に居た二人はこう言ってきた。
「えっ、主様! そんな、一人で戦うなんて!」
「そうよそうよ! おねえちゃんも戦うわ!」
さらにはハヌマーンまで、
「自信がある事は良いことだが、それは傲りではないのか……? 傲慢になり過ぎるのは良くないぞ」
なんて言ってくる始末。
皆にそう言われ、何だか馬鹿にされている気分になった俺は、こう返した。
「―――煩え……。俺は、強くなった。なぁ? アスモフィ」
「……え?」
「お前は俺が強くなって帰ってくるって信じてたから、何の躊躇いもなく俺を殺したんじゃないのか?」
「……」
「―――俺を信じてくれ……二人とも」
「……そうね。そうだったわ。分かった……おねえちゃん信じてるから!」
アスモフィは握りこぶしを、優しく俺の胸にこてん、と当ててきた。
「……主様。主様が、本当に危ない状況に陥った時は……その時は助けに行きますからね……?」
「ああ、その時はありがたくルインの力も借りるぜ」
「―――負けないで……」
少し俯きがちに、そう言ったルインの頭に手を置いて、俺は、
「安心しろ! お前を置いて俺が何処かへ行くと思うか? クハハ! 俺は魔王なんだぞ? 眷属一人すら守れないで何が魔王だ! ……まあ、それとは別に……お前には言いたい事もあるしな」
「……えっ……?」
俺のその言葉にルインは一瞬驚くも、すぐにこう返してきた。
「……私も、主様に言いたい事がありますから……。ですから、絶対勝って下さいね!」
「ああ、任せろ」
俺は二人に下がるようジェスチャーをし、両手に“魔鎌”を生み出してハヌマーンの方に歩み寄る。
『さっきのすげぇ死亡フラグっぽいよな』
『同感だ』
『まけちゃえー!』
外野が煩いが、無視だ無視。
てかアスモデウス、お前俺に負けてほしいのか!?
「―――まるで死神だな。長く伸びきった黒髪に、獲物を捕らえる野獣の眼光。目に見える範囲でも分かる膨大な魔力に、目の前にして分かる異常な闘気。その両手に握られた魔力の鎌と、お前から感じ取れる僅かな神気。先程までとは段違いなオーラだ」
「……それは褒め言葉で良いんだよな?」
「無論。―――魔王……貴様は本当に、魔王なのか?」
ハヌマーンがそう言った。
……俺は魔王なのか、と。
そんなの分からない。
確かに俺は魔王だ。
だがそれ以外にも、答えられる選択肢が多過ぎる。
俺は……
―――大罪を背負いし者だ。
俺は……
―――半神だ。
俺は……
―――別世界からやって来た者だ。
俺は……
―――魔王……だ。
俺は……誰だ?
いいや、どれも正しくて、どれも違うだろう?
俺は……!
「俺は俺だッ! それ以上でも、それ以下でもないッ!」
「―――ッ……そうか。そうか……面白いッ! 我も久々に大戦時代を思い出したわッ! さあ来るがいい魔王! そして我を滅ぼしてみろッ! 貴様は面白いッ! 貴様なら、あの生意気な想像神を滅ぼせそうだッ! いいや、滅ぼせるッ!」
……なんだよ、それ。
コイツ……急に……!
「―――楽しくなってきたぜ……」
「ああ、我もだッ!」
ここからは神と神の戦いだ。
こんな、チンケな鎌じゃ、場違いもいい所だ。
そんな事を考えていると、俺の中でアスモデウスが語り始めた。
『―――スキル『天使』は、光属性の魔法を完璧に操ることの出来るスキルだよ。光属性の魔法には、もちろん回復系の魔法も含まれている。これはキミの持つ『大魔道』のスキルには出来ない芸当だ。あれは基本的に基本五属性と創造を司るスキルだからね』
スキル……『天使』。
光を操る……か。
『対してスキル『悪魔』。これは闇属性の魔法を完璧に操ることの出来るスキル。このスキルには、魔族を癒やすことの出来る闇を放つことが出来るんだ。魔王のキミにはピッタリのスキルだろー?』
スキル……『悪魔』。
闇を……。
神で、魔王……今の俺にはピッタリのスキルじゃないか。
そうだ……このスキルを鎌に混ぜれば……!
俺は咄嗟の思いつきで早速行動を始めた。
俺は、右手に持つ鎌に『天使』の力を。
左手に持つ鎌に『悪魔』の力を混ぜていく。
―――濃く、濃く。深く、深く。
さらに俺は、“双月”の片割れを取り出し、さらにそれを二つに勢いよく折った。
神特効のある双月を、だ。
二つに折れた“双月”を、俺は二本の“魔鎌”に融合させていく。
“双月”は自然と、鎌に吸い込まれていく。
すると、両手の鎌はそれぞれ神々しい光と、禍々しい闇を放ち始めた。
しばらくして、その両方は収まる。
「出来た……」
偽物じゃない。
模倣じゃない。
盗作でもない。
俺が生み出した、俺だけの武器。
これは、神を滅ぼす光の鎌と闇の鎌。
その力は、誰が見ても神器に相当するだろう。
神器“双滅鎌トワイライト”。
確かな実体を持った、この鎌の名前はこれにしよう。
たった今、天啓が降りたように思い浮かんだ。
「―――やはり……貴様は」
俺は、“トワイライト”を両手に構えて、『天使』の翼と『悪魔』の翼を4枚展開した。
この時、ルインは見逃さなかった。
主の眼が、金と紫……虹彩眼になっていたのを。
同じくそれを見たハヌマーンは、こう言った。
「貴様はやはり……―――神でも魔王でもない」
「―――『死神』だ」
▶スキル『死神』を獲得しました。
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