表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/369

case.7 錯綜する思い

本日2話目。

よろしくお願いします。

『もう決める時だ。覚悟を決めろ。』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お前も俺の傀儡となれ。『死配』」



▶スキル『死配』を発動しました。



「ヒィッ…………」


 後退る勇斗であったが、その目からは光が消え、力も無くなり、やがてその場に倒れ込んだ。



「お見事です、主様」


「ああ……。終わったな……。ルイン……」


 ルインに会えた喜びも、この転生勇者のパーティーを殺した悲しみも、今の俺には何も無い。



 完全なる無だ。



「主様……」


「ルイン、もう一度俺のもとに来てくれて、ありがとう。本当に……本当にありがとう」


「いえ、それで主様はこれからどうなされるのですか?」


「俺がこれからどうするか、か。ルインは、どうしたい?」


「私が、ですか? そうですね、私は魔族が虐げられない世界をつくりたいです。今回の件で、その思いは一気に強くなりました」



 魔族が虐げられない世界、か。

 そうだな。ルインはずっと、狙われてきたんだもんな。



「俺が……この世界に来た意味……。俺の……この世界との向き合い方……。魔王……」


「主様……」



 俺が、これからどう生きるのか。


 その問いに対する俺の答えはもうほぼ出ている。



「俺は、決めた。ルイン、俺はこの世界に、魔族の国をつくる。俺がこの世界を『支配』する。だから、ついてきてくれるか?」



 その答えを聞いて、ルインは頷く。



「はい……! はい! 前にも言いましたが、私は貴方にずっとついていきますよ!」


「ルイン……。ありがとう」



 『感情』が無い、今の俺には、笑うことはできない。でも、ぎこちなくても、口角を上げ、何とか笑おうとする。



「主様……笑えないんですか……?」


「ッ、ああ。お前を助ける時に、その代償に持ってかれたみたいだ」


「……ッ! うっ、うう……うああああああああああん!」



 滝のように涙を流し、その場に崩れるルイン。


 まただ。また俺は……!



(本当に見たいのは、この子の笑顔なのに……!)



「ルイン、泣かないでくれ。俺はお前が生きていてくれる事が本当に嬉しいんだ」


「でも……! でも……! 主様がっ!」


「ルイン! いいんだ。それと、謝らせてくれ。俺は2度もお前を守る事が出来なかった。それに対する謝罪だ……」


「私も謝ります! 私のせいで……! 私の……ッ!」



 不毛な言い争いが続く中、暫くしてその喧嘩は終わった。



「ハァ……ハァ……。と、取り乱してしまい申し訳ありませんでした……」


「構わん……。それより、一度あの洞窟へ戻ろう。一度、全て整理したい」


「そ、そうですね……」



 そう提案した俺だったが、疲れ果てた様子のルインを見て、少し気が変わった。



「すまない、少し休んでから帰ろう」


「わっ、わかりました!」



 そうして俺たちは、その場に座り込んだ。



「いい機会だ、少し話そう」


「いいですけど、何を?」


「俺の話だ。俺はな、もともとこの世界の人間じゃないんだ」


「えっ、それって……?」


「“転生者”ってやつなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。気づいたら、この世界に居たんだ。そして気づいた時から“魔王”だった。そしてルインと出会った。あの時はドキドキしてさ、同時にワクワクもしたんだ。なんて可愛い子なんだろう、これからどうなっていくんだろう、って」



 ルインは黙って俺の言葉を聞いている。



「ルインは前に言ったよな。魔族を救ってくれって。俺はその言葉を聞いたときから、お前を……いや、魔族を救おうって決めたんだ。それなのに、俺は、ルイン一人すら救えなかった。あの時は悲しくて、悔しくて、辛かった。そしてそれをした奴らが憎かった」



 俺の目からは自然と涙が零れていた。



「なぁ、ルイン。今の俺は、お前の目にどう映ってる……? 本当は怖いんだ……。感情が無くなっていくのが実感出来て。辛いのに、悲しいのに、顔にも、心にも出ないんだよ……」



 ルインは、目を閉じ、そして優しく語り始めた。



「主様は、最初から主様です。魔族の……いいえ、私の魔王様です。誰がなんと言おうと、私の大好きな人です。私の為に、感情を捨ててくれた。魔族の為の国をつくってくれると言ってくれた。そんな、優しい、優しい魔王様です。怖い時、辛い時はいつでも頼ってください。私が、隣に居ますから。もう、二度と離れませんから」



 そんな、ルインの言葉を聞いて。



 心の中に色がついた。

 溜まっていた感情が溢れてきそうな、そんな感じがした。



「ルイン……俺、もう一度笑いたいんだ。だから半端な覚悟はもう捨てる。もう、躊躇もいらない。俺は“蹂躙”するのが怖かっただけなんだ。過去に、イジメられてたから……。でももう決めた。魔族を救うって、ルインを守るって。だからもう一度言わせてくれ。ルイン、俺と一緒に来てくれるか?」


「はい。もちろん!」


「ありがとう……!」



 そう言った俺を見て、ルインは目を点にして驚いていた。



「どうした……?」


「主様……?! 笑って……笑えてます!」


「本当……か?」



 自分では分からないが、ルインがそう言うなら、間違いではないのだろう。


 俺が、笑えた……。



 『感情』を代償として支払ったとは書いてあったが、もしかすると、『感情』自体は失われていないということか?



 なら……俺は自分の感情を取り戻す。

 一度失った物を取り返すのは難しい事だ。だが、俺ならやれる。




(だって俺は……“魔王”なんだから!)

 


 

 魔族も救って、ルインも守って、自分の感情も取り戻す!



「なんか、やる気が出てきた。よし、そろそろ戻って、サファイアと合流するか!」


「はい! 行きましょう! 魔王様!」



 二人並んで、歩き始める。


 俺たちは、今から新たな道を歩むことになる。



 まずは目先の事から!

 あの洞窟へ戻るところからだ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「あ、そういえばあのゴミたち忘れてたな」



 戻っている途中で、支配したまま置いてきたあの勇者パーティーの事を思い出した。



「いいんじゃないですか? 放っておけば」


「いや、そうもいかない。奴らが転生勇者であるならば、奴らを雇っていた国側が、勇者たちが帰ってこないことに疑問をいだき、こちらの方へ調査にくるだろう。そうなったら、奴らの死体が見つかってしまう」


「あれ……? でも主様、あいつら支配してるんじゃ?」


「あ、そういえばそうだったな。なら命令しておくか」



 “洞窟へ行く。勝手についてこい”



 簡潔な命令を出したところ、ゴミ3つがのろのろと歩いてくるのが見えた。



「まあこれでいいだろう。さあ、早く戻ろう」


「はい!」



 俺たちの本当の旅が、これから始まる。



―――これから始まるのは、魔王による魔族を救うお話。殺戮や蹂躙を躊躇わない、感情を無くした悲しい魔王による、今ある世界を『支配』する、そんなお話。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


▶『死配デストゥルー』が『支配ルール』へと変化しました。


▶『憤激焉怒エンドレイジ』が『憤怒レイジ』へと変化しました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《Tips》



・魔王ルミナスについて



現在確認されている情報だと、

・感情を失っており、人を殺す事に躊躇が無いという事。

・支配下に転生勇者のパーティーが居るという事。

以上が確認されている。


著:王国暗殺部隊『闇風ヤミカゼ

明日はツイッターでの告知通り、夏休みスタートダッシュとして、新作を2つ含む、4作/合計6話分を間あけて更新します!


是非チェック&拡散お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 感情表現豊かな魔王様やなw
[気になる点] それ感情というより表情やん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ