case.16 天に浮かぶは真昼の黒き双月
スキル『魔道』シリーズの解説は近いうちに入れます。ひとまずは魔法バンザイ!万能スキル!イェェェェイ!って感じのイメージでお願いします!
初登場回に解説をいれなければ……
「―――我が負ける……?」
消えそうな声でそう漏らしたハヌマーン。
その表情は、悲しく……辛そうな物だった。
「―――十二神将であるこの我が……?」
何度も、何度も繰り返すようそう言っていた。
「―――我は……この醜い顔をどうにかしてもらいたかっただけなのに……?」
そう言うが、もうハヌマーンの身体は消えかかっていた。
「我は……もう―――」
俺たちが見守っていた、恐らく最期の瞬間になったであろうその時の、刹那の出来事だった。
『―――ハヌマーンよ、これが最後のチャンスです。貴方をしばらく生きていられるようにいじってあげる』
突如、空から声だけが響いた。
さらにその声がしたすぐ後のことだった。
「おお……おお! 我はまだ……生きれる!」
ハヌマーンが、まるで奇跡でも起こったかのように立ち上がったのだ。
「おいおい、マジかよ……。さすがにもう動けねぇぞ?」
「フフ……フハハッ! まだ……チャンスがッ!
ありがたき幸せですッ! アダム様! 見ていてください! 今から我がこの愚か者共をッ―――」
『無駄口を叩くのはそこまでにしなさい。言葉ではなく行動で、妄想ではなく結果で示しなさい。貴方に残された道はただそれのみです』
謎の声は、ハヌマーンにそう言った。
ハヌマーンはその言葉で、より一層引き締まった顔つきになり、すぐこちらを睨んでくる。
「今ここで皆殺しにして……それで……。クッ……クッククク……クッハハハハハハッ!」
高笑いをして、余裕を見せるハヌマーン。
そんな中、サタールが俺に言った。
「―――おい、大将。今の内にルインのとこへ行っておけ」
「いや……だがお前たちが」
「俺たちは大丈夫だ! いいから早く先に行きな!」
「……分かった。先に行って待ってる」
サタールにそう言われ、俺は渋々振り返って走る。
「魔王……! まずは貴様を殺すッ!」
それを見たハヌマーンは、俺を追って走ってきた。
……ラッキー、ってやつかな?今サタールたちの方へ敵意を向けられると正直キツかったから、どっちにしても俺へとヘイトを溜める必要があったから。
結果オーライってやつだ。
「ヘッ、そのままこっちへ来い! 糞猿がッ!」
「あまり調子に乗るな……ッ!」
俺は再び走り出した。
それに続いてハヌマーンも追ってきた。
俺はすぐさまルインの待つ“死の間”へと飛び込んだ。
「ルインッ!」
「あ、主様ッ!?」
突然飛び込んで来た俺に驚いたのか、それとも俺の背後にいる醜い猿の神に驚いたのか、どちらかは分からないが、とにかくルインが驚いた表情でこちらを見ていた。
「話はあとだ! ひとまずコイツを喰らえ……ッ!」
俺は、いつの間にか真後ろに居たハヌマーンに対して目くらましの魔法を放つ。
「“炎天爆煙”ッ!」
空から、無数の魔力弾が降り注ぐ。
“炎天”は、その魔力弾が炎属性である……というだけの魔法だったが、そこに“爆煙”が加わる事で、爆発系魔法の特徴と、目くらまし系魔法の特徴を同時に兼ね備えた魔法となる。
魔力弾が着弾すると、着弾点で爆発が起き、さらにその爆発によって煙が巻き起こる。
「チッ! 小癪なッ!!」
ハヌマーンは、先程のルシファルナの攻撃や、魔帝八皇3人分の超火力の技を受けたせいか、反応が鈍くもなっていた。
いわば、今のハヌマーンは“首の皮一枚繋がっている”状態なのだ。
アダム様とやらの力でな……。
「あの、それでこれはどういう……?」
安全なのが分かったのか、ルインは俺に状況説明を求めてきた。
俺は今までの流れを簡潔に話したあと、ある武器を取り出した。
「それは?」
“魔改造”シリーズ第4弾、だ。
今回はルインの得意武器である“短剣”にしてみた。
今まで通りであれば、神話や伝説の武器の名前を引っ張り出して、そのイメージだけで創り上げていたのだが、今回は違う。
今回は完全な俺のオリジナル、だ。
しかも今回は……その……ルインと……
「これは……俺のオリジナルシリーズの武器。今回はルインに合わせて短剣にしてみた」
そう言いながら、俺は黒く光り輝く二本の短剣を取り出した。
「呪狂剣“双月”……そう名付けた」
「双月……」
これは、見た目だけならば双剣に見えるだろう。だが違う。
これは……その……ルインとのペア用に用意した剣なのだ。
「これを一本、ルインに託す。……その、あの、“お揃い”というやつだ」
俺がそう言うと、ルインは口をポカンと開けて、こちらをあんぐりと見つめている。
「もしかして……嫌だったか?」
言いながら俺はシュンと萎んでしまう。
失敗だったか……?
二人で、一心同体となって使えるように作った……いや、出来てしまったのだが……。
「あっ、いや! 違うんです! あの、その、嬉しくて! 本当に……うれしくてぇ……」
ルインの目から涙が溢れる。
……昔の俺だったら、少しでも彼女が泣けば許せなくなっただろう。
だが、今は少し違う。
これは、嬉し涙だというのがしっかり伝わってきたからだ。
それでも俺の心はキュッと引き締まる感覚になってしまう。
「―――ッ……そ、そうか? そんなに泣くほど?」
「はいっ! もう……本当に、本当に嬉しいんですから!」
彼女は、俺から受け取った短剣の片割れを、まるで赤子を抱くように、とても優しく、ギュッと大事そうに抱えていた。
その姿を見て、とても心が切なくなる。
「それで……効果、みたいなのはあるのですか?」
……きた。俺があまり説明したくなかった部分だ。
この短剣……“双月”は名前の通り二つで一つの双剣なのだが、その効果の特徴は大きく分けて二つ。
一つは“共有”。
これは文字通りの意味で、所有者同士の状態やダメージを共有するという物。
つまり俺がダメージを受ければ、ルインもダメージを受けるし、逆に俺が自分に強化魔法をかければ、それがルインにもかかる。
使い方によっては狂気とも思える程の能力だ。
もう一つは“吸血”。
これも文字通りの意味なのだが、“攻撃対象に血液が存在する場合、対象の傷から血を吸収し、その種族に対する特効性を即座に付与する”という効果を持つ。
つまりハヌマーン相手にこの武器を使えば、ダメージさえ与えられればその傷口からハヌマーンの血を“吸血”し、その血を解析したのち、特効性がその刀身に付与される。
さらにその後、その特効はもう片方の剣に“共有”されることになる。
と、俺はルインに説明した。
すると、
「―――最強じゃないですか」
と、一言。
確かに最強かもしれない。だが忘れてはいけない。この武器を装備している間は、全てが共有されるのだ。
つまり……
「―――死すらも共有される……?」
「その通り、だ」
だから説明したくなかったのだ。
だがまあ、この点さえどうにかなってしまえば、あとはただただ最強の武器であるとも言える。
「分かりました。つまり私と主様は、正真正銘文字通りの“一心同体”になる訳ですね」
「そういう事だ」
この武器を託したのはルインだから、だ。
端からルイン以外のヤツに渡すつもりもなかったし、最初っからルインの事を考えながら創り上げたんだ。
今更ながらスキル『大魔道』、便利すぎるよな。魔法の力は偉大だ。
しばらく続いていた“炎天爆煙”も、ようやく終了する。
そしてしばらくして煙が晴れ、そこからハヌマーンが歩いてきた。
「フッ、小癪な時間稼ぎを。つまらん……我を愉しませてくれ」
ある程度回復する事ができたのか、少し余裕な態度だった。
「―――我の死が先か、貴様の死が先か。さあ、最後の決戦と行こうじゃないか」
今日は、22:00にも更新します!
久々の2回行動です!




