case.15 信じること
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「―――どうやら、貴様らの全力を以てしてでも我には届かなかったようだな」
……俺たちの刃は、確かにハヌマーンの身体を貫いていた。
サタールは、俺の指示通り全力の一撃を。
対する俺も、神特効を持ったこの“神滅”の刀で、ハヌマーンの鋼鉄の身体を突き刺したのだ。
―――深く……深く。
しかし、それなのに、だ。
俺たちの全力の合技は、ハヌマーンには届いていない様子だった。
「―――『神威』。我ら十二神将のみに与えられた能力の名だ。これを使えば、一定時間の間主によって制限されている己の力の全てを一気に解放する事が出来る。つまり、今の今まで俺は手加減をしていたという事だよ。分かったか? 愚かな人間共よ―――」
これで……手加減していただと……?
そんな……ッ!俺たちの全力を以てしても、ハヌマーンにかすり傷一つすら付けられなかったって事かよ……ッ!
「そうだ、もっと絶望しろ。それが我の糧と成り、次の戦いに役立つからな」
「……もう……ダメなのか?」
俺はもう絶望寸前だった。
正直な所、サタールとのタッグでダメだった時点でもう俺たちに勝ち目は無いのだ。
後ろに控えてるのはルインのみ。
サタールとマノンは、俺の指示で全力を使い果たしてしまったから、本当に残っているのはルインだけだ。
「―――いんや、まだ希望の芽はあるみたいだぜ?」
突然、サタールがそんな事を言ってきた。
「希望だと……? そんなの何処に―――」
俺が、そう言いかけた時だった。
「―――“壊滅的崩壊幻想曲・魔蟲妖艶行進曲”」
突如、宇宙から声と共に大量の虫が現れて、それがハヌマーンにまとわりつき襲う。
「誰だ……こんなチンケな虫程度で我にダメージが―――ッ!? なッ……これ……はァァァァ……グァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
直後、ハヌマーンは悲痛の叫びを上げ始めた。
一体……何が……?
「―――お待たせしました」
そう言って、空から降り立ったのは。
「へっ、軍師サマのご到着だ」
「―――ルシファルナ……ッ!」
ルシファルナだった。
“蟲の間”で、雑魚戦士の相手をしていた筈の。
「クッ……少々力を使い過ぎましたかね」
膝をついて崩れるルシファルナ。
「これは……ッ! どういう事……だッ! 何故この虫は……ッ!」
ハヌマーンは身体から電気を放出し、その身にまとわりつく虫たちを払おうとしている。
だが、その思い虚しく、神の雷でさえルシファルナの虫は払えていなかった。
「フフ、その蟲は神を喰らう魔蟲“神蚊”。一度その身体に付けば、その身体から血を全て吸い取るまで離れることのない神の蟲です……」
「神の……ムシ……ッ! く……グ……ッグオオオオオオオオッ!」
ハヌマーンはその言葉を聞いて、死ぬまいと何度も何度も試行錯誤していた。
その隙にルシファルナは俺の隣へ、静かに寄ってきた。
「魔王様、今の内に後退を」
「後退……?」
「ええ、我らの事は心配なさらず。私のスキル『幻想』の効果で逃げることが出来ますので……。ですのでどうか、早い内に後退して、ルイン様と準備を整えて頂ければ、と」
「……分かった」
俺は、少し不安要素を残したままそう答えた。
そして手に持つ剣を強く……強く握りしめ直した後、この場を立ち去ろうと振り返ったその時。
「―――待てッ! 魔王ッ! 貴様逃げるつもりかッ!」
ハヌマーンだ。
ハヌマーンに呼び止められた。
そして軽い挑発に、俺は答える。
「違う。これは仲間を信じた俺の……戦略的撤退だ―――」
「ふざけるなッ! それは逃げたのと同じ―――」
「―――違ェよ」
激昂した様子のハヌマーンの言葉を遮ったのはサタールだ。
サタールは疲れた表情で言葉を紡ぎ始めた。
「俺ァバカだからよ、お前の思っているであろう疑問に答える事はできねェ。ただよ、お前が言ってる“逃げる”ってのが違ェのはハッキリ分かんだよ。……今、ハッキリ“仲間”って言われて、やっと気づいたぜ―――」
サタールは立ち上がりながら、両手に刀を生み出した。
そしてさらにこう言った。
「―――大将。アンタはもしかしたら歴代最高の魔王かもしれねェな」
「え……」
「一つ、一つだけ証明してやるよ」
サタールは刀を一つ、ハヌマーンに突きつけた。
「さっきお前はこう言った。“全力でも届かなかった”、と。―――クッ……おバカさんだねェ? 神サマともあろうお方が!」
「何だと……ッ!?」
「大将が剣を刺した部分……あの背中を見てみな」
俺は言われるがまま、ハヌマーンの背中を見てみた。
そこには、俺がつけた刺し傷が残っていた。
「あれが……どうかしたのか?」
「そうだ、その傷は不覚だったが……ダメージは受けていないぞッ!」
俺の疑問に、何故かハヌマーンが同意する形で答えた。
「―――そいつァどうだかねェ? 大将の“神滅”の名は伊達じゃないってことを今から証明してやらァ」
「何だと……?」
そう、ハヌマーンが疑問の声を漏らした直後……刹那の出来事だった。
サタールが視界から消え、その後すぐにハヌマーンの上空から突然現れる。
「さっきは大将を疑って全力を出さなかったんだけどよ……“仲間”って言ってくれて嬉しかったぜ……。これでようやく、大将を俺の主として信用できるってこったァ。そうさ、俺には信頼が足りなかったんだッ! だから……これが俺の答えだッ! 大将! その剣をッ!」
剣……!?
俺はサタールのその言葉を、考える前に咄嗟に思考を切り替え、手に持っていた“神剣・神滅”を上空待機しているサタールに投げた。
「―――魔王様ッ! 私にもあの弓をッ!」
さらに隣からルシファルナにそう言われて、これも咄嗟の判断で弓……“合神器伝承弓”を取り出し投げた。
するとさらに、
「……ま……魔王……! 俺にも……あの杖をッ!」
後ろで寝かせていたマノンが起き上がり、あの杖を求めてきた。
もうどうにでもなれと、俺は杖……“黒神覇杖”を取り出し投げた。
「―――何を……するつもりだッ!」
ハヌマーンは周囲を囲まれた状態になり、戸惑っている様子だった。
しかも、“神蚊”とやらでだいぶ血を吸われたのか身動きが取れないようだった。
「テメェらッ! 俺に合わせろッ!“百鬼夜行―――”」
「任せてください! “幻想矢連―――”」
「お……う! ……クッ……“爆発炎魔”ッ!」
ほぼ同時の攻撃。
そしてサタールはその技の名前を叫んだ。
「合技……“幻想百鬼之爆炎歌”ッ!」
3人の放った合技は、サタールの元へ……サタールの持つ剣へ集まり、やがて大きな魔力を帯びた神剣となった。
そしてその神剣が、神を滅ぼすべく……その刀身を背中の傷へ、深く……深く……深く突き刺した!
「グァァァァッ!グァァァァァァァァッ……!」
もう何度目か分からないハヌマーンの叫びを、俺は呆然と聞いていた。
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