case.13 十二神将と半神の魔王と憤怒の罪
「にしても大将……アイツァ一体なんでい?」
サタールと俺は、サタールの支配する“剣鬼の間”へと到着した。
後からやってくるであろうハヌマーンを待っている間、サタールはそう聞いてきた。
「アイツはハヌマーン……神、ハヌマーンだ」
「ハヌマーンだァ? ってことァ何だ、まさかあの伝説の?」
「ああ、『双神分離伝説』……。それに登場する神……“十二神将”の一体。雷を操る猿の神、ハヌマーン。それがヤツだ」
「ヘェ……今度は本物なのか?」
前回のゼウス神襲来事件が、偽の物だった事もあり、サタールは少しだけ疑っているようだ。
「安心しろ……? いや、安心しちゃいけないのかもしれないが、今回はどうやら本物の神のようだから」
「……そうかいそうかい」
さて、もうそろそろ来る頃だろうか。
今度は剣で戦うとするかね……。
「それで、マノンのヤツはどうして寝てるんだァ?」
「ああ、それか……。コイツはいわゆる魔力切れだ」
「ヘッ、情けねえヤツだ。そんじゃ俺がコイツの分まで暴れるとしますかねェ……。ほら、言ってるそばからお出ましだぜェ?」
そう、サタールが言った直後……ダァン!という勢いよく放たれた音に驚いてその発生元を見ると、開かれた扉の前に雷を纏った猿が居た。
「ハヌマーン……」
「魔王……魔王魔王魔王魔王魔王魔王魔王ッ! 貴様は殺してやる……殺してやる殺してやるッ! コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスッ!」
ハヌマーンは叫びながら、その手から雷の魔力弾を何発も放ってきた。
「チッ……コイツァ面倒くさそうだなッ! 情緒不安定じゃねェかァッ? オラッ、“魔断”ッ!」
「ああその通りだッ! さっきからこの神サマはこの調子でな! “雷鎧”ッ!」
俺とサタールは避けながら、防ぎながらハヌマーンへと近づいていく。
「神である我にッ! 神である我に傷を付けるなどッ! 許さんッ……許さんぞ魔王ッ!」
傷……?
見ると、ハヌマーンの額から右目の部分に切り傷が合った。
付けた覚えの無い傷だ。
まさか、爆発に巻き込まれて瓦礫か何かが落ちてきたとか……か?
「矮小なる人間共よッ! 生まれてきた事を後悔しながら死ねッ!」
「嫌だねッ! それに俺は人間じゃねぇ! ついでに大将もな! そらっ!」
サタールはハヌマーンの言葉に反論しながら、ハヌマーンに斬りかかる。
「無駄だッ! そのようなチンケな刀如きで我に傷が付けられるとでも……ッ!?」
ハヌマーンは、突然驚いたような顔つきになる。
実際、サタールの刃はハヌマーンに効いてはいなかった。
その身体に突き刺された刀は、だ。
しかし……
「身体が固えヤツってのはな、一度その身体に傷を作っちまった時点で負けが確定するんだよッ!」
「グッ……グァァァァッ……ふざ……けるな……よッ!」
サタールは、ハヌマーンの身体に突き刺している方とは反対の、もう片方の手に握られた刀で、ハヌマーンの右目にダメージを与えていた。
そしてサタールは、その刀をハヌマーンの右目に突き刺したまま飛んで離れる。
「グァァァァァァッ!」
痛みで暴れまわるハヌマーン。
そこにサタールが、追撃を加えるべく刀を生み出した。
「クソが……クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
「クソなのはテメェだ。ほれ大将、お前さんも……」
俺は、あらかじめ腰に備えていた剣を引き抜きながらサタールの方を見ると、サタールは俺の……いや、俺の剣を見て……見つめていた。
「おい、まさかお前……」
「おい大将……その剣……」
あー、うん。もう分かった。
欲しいのだろうな。
弓も杖も、そうだったからな。
「あいあい、欲しいんだな?」
「くれるのかッ!?」
「この戦いを無事に切り抜けられたらな」
「っしゃ! やる気が出てきたぜ……ッ!」
コイツもこんなんでやる気を出しやがって……。
ちなみに、この剣も“魔改造シリーズ”の一つだ。
クラウソラス、フラガラッハ、アスカロン、デュランダル、エクスカリバー、アロンダイト、グラム、レーヴァテインといった伝説の聖剣・魔剣を沢山生み出した。そしてそれを合体させた。
毎度の事ながら、全てが俺の想像で生み出された剣だ。
“神剣・神滅”。
俺の血……即ち“神の血”を少し解析し、それの特効力を持たせた剣にしてみた。
……今度は使える魔改造シリーズの武器だ。
サタールの所に来るまで温存しておいたのだ。
折角なら一緒に戦うやつと武器を合わせたいしな。
「神特効……今回はコイツが役立つだろうな」
「神特効だぁ? なんだ、ワクワクするなァ!」
チッ……耳のいい奴め。どうやら聞こえていたようだ。結構ボソッと言ったと思ったんだけどなぁ。
「さっきからゴチャゴチャと煩いなァァァァッ! いいから早く死ねよッ!」
突然ハヌマーンに逆ギレされた。
まあ当然の怒りではあるのだが。
「おいッ! そこの鬼よ!」
「俺っちかァ?」
「ああそうだ! 貴様、名を何と言う!」
「俺っちの名前は……サタール。魔王軍、魔帝八皇が一人、【憤怒】の戦士サタールサマだァ。そういうテメェは何モンだよ? 名乗りやがれや」
指を付けつけながら、やけに高圧的な感じで質問してくるハヌマーンに、ひょうひょうとした様子でサタールは答えた。
しかも逆に聞き返している。
なかなかに肝が座っているな。
「俺は……我は……ッ! 偉大なるアダム様の配下ッ! 十二神将が一人、【雷】のハヌマーンだッ! 大罪もどきの鬼よ、我に傷を与えた事……後悔させてやる!」
しかもハヌマーンのヤツ、律儀に答えているし。
「貴様らだけは絶対に殺す……そして我の顔をッ……顔をッ!!!」
さっきから顔、顔、顔って……顔がどうにかなるのか?俺たちを殺すことで?
確かに、とてつもなく醜い顔だが……。
「おぅおぅ、俺たちがそんなに簡単に死ぬと思ったら大間違いだぜェ? なんせ俺と大将は、魔王軍のトップ2だからなァ!」
は?勝手に決めないでくれ。
俺の独占一位で他はまだ決まってない筈だが。
「フッ、だが所詮は神より雑魚であろう? 先程のこの傷は単なるまぐれだ。今からそれを証明してやろうではないかッ!」
「いいぜェ? なら俺っちも最初っから本気でブッ飛ばしていくからよォ……!」
すごい、さっきから仲間外れにされてる感じがする……。
けど、まあいいや。
サタールもノリノリだし。
「さあ大将、始めようぜ……?」
「?……あ、ああ」
よく分からないまま俺は返事をした。
そしてサタールは刀を突きつけながら、こう一言。
「―――『鬼神化』」
これが、第三ラウンドの開幕の一言となるのだった。
戦闘シーンの描写は難しいですね……
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