case.2 無法都市ムウラ
遅れました!すいません!
「それで、無法都市ムウラって、どんな所なんだ?」
俺はふと思い、ルインに聞いてみた。
これから行く無法都市ムウラについてだ。
「えっと……実際に行ったことはないので、正確な情報ではないのですが、それでもよければ!」
「ああ、それでいいぞ」
「それでは簡単に。無法都市ムウラはその名前通り街全体が無法地帯で、淫行・泥棒・殺人……とにかくそういう類の犯罪が毎日のように起きている狂った場所……らしいです」
おぉ……本当に何でもやりたい放題なんだな。
でも……そんなところにアスモフィたちが……?
「それにしても、無法都市って……国っていう認識でいいのか?」
「はい……一応その認識でいいと思います……」
そうか。国でいいのか。まあ深くは考えないようにしよう。
無法都市ムウラは、世界地図でいう左下の部分。方角でいうと南西にあたるところに位置する国だ。
聞くところによると住んでいる種族は、色々と混同しているらしい。もとは小人族の地だったらしいのだが。
「主様、見えてきました! あれがムウラです!」
長らく森……いや、林か?まあそんな感じの木々が生い茂る場所を歩いていたが、遂にそれも終わりみたいだ。
さて……今回はどんな感じの街なの……か……
「嘘だろ……?」
正直、自分の目を疑った。
何故かって。それは……
「噂には聞いてましたけど、まさかここまでとは……」
「おい、ルイン……。ムウラは死体がゴロゴロ転がっているような街なのか……?」
そう……。目も耳も疑って聞いてほしいのだが、まだ街に入っていないというのに、目の前には死体の山がそこらじゅうにできていたのだ。
(いやいや、無法都市にも程があるだろ……)
死体の山を無視して見ると、壁もあって、普通に門兵も居て、一見普通に平和な国なのだが。
「いいか……ルイン。俺から絶対に離れるなよ」
「はっ、はい!」
キュウッ……と服の袖をしっかりと掴むルインに、少しドキッとしてしまうも、すぐに冷静になる。
「一応、ということもあるから、お互い気配隠匿魔法を使おう」
一応、なんて言ってるけど、正直なところ少し怖いのだ。
まさかこんな狂ったところだなんて思いもしなかったから。
「そうですね……。それじゃあ、私はお先に……“影陰”」
そう言うなり、ルインはその姿を消していく。
俺も続いて隠れることにした。
「“潜影”」
サタール戦以来の使用になるか。
これは最強の隠匿魔法。誰かに触られない限り絶対にバレないだろう。
「あれ、ルインの姿は見えるんだな」
お互いに気配を隠している、いわば透明人間のような状態なのだが、何故かその透明人間状態のルインが見えるのだ。
「そういう原理なのですよ」
「そういうもんなのか」
サラッと流されてしまった。
まあいいか。
何でも“魔法”の一言で片付けられちゃいそうな世界だもんな。
「さて、それじゃあ行こう」
「はい!」
俺たちは2人並んで街中へと歩いていった。
■
「オラァ! オラァ! 金出せ金ェ!」
「ブチ殺すゾォ!?」
「舐めてっとぶち犯してやるかんなァ!?」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
……いや、嘘だろ。
街中に入るなり、聞こえてきた罵声のピックアップしたものだが。
これは酷いな……。
とりあえず、見た感じ女性はいなさそうだ。
男が見苦しく争いまくっている様子しか伺えない。
「さて、こんな狂った状況の中ですまないが、現状確認といこう」
「……はい」
「うるせぇなァ!? 飯くれ飯!」「ブチ殺すゾォ……!」「ウンコ漏れる!」
酷い……酷すぎる。
こほん。気を取り直して……
「えっと……今俺たちにある手がかりは……アスモフィたちがここに居るっていうことと、その犯人が転生者である、ということ……だよな」
「はい、逆にそれしか手がかりが無いんですよね……」
そう。そうなのだ。何か他に手がかりがあればいいのだが。
とりあえず、片っ端から調べていくしかないのか……?
「まあでも、サタール様が居ますし、全然心配ではないのですが……」
「ハハ……確かにな」
まあその通りなんだが、もしそのサタールに何かあれば、勝ち目はかなり薄くなっているかもしれない。それに3人を、しかも特にアスモフィなんかは、消える直前まで俺たちの近くに居たらしいから、何か相当すごいスキルを持っているのだろう。
それに、複数犯である可能性も高い。
サタールとルシファルナを同時に、一人で相手するなんて、辛いにも程があるからな。
「さて……」
そう、動き出そうとした時だった。
「おい、あの女いいカラダしてたなァ……」
「ああ、横を通っただけだが、スッゲェいい匂いしたぜ……」
「おい、お前らアホか! あの隣にいた鬼族のイケメン……。ああ……そそるぜぇ……」
「んじゃ、追いかけてみるかァ!?」
「そうだな……ヘヘッ、面白くなりそうだぜ!」
……ッ!
俺は咄嗟に振り返った。通りすがりの男たちが話してた会話の内容。確定とは言えないが、女、…いい匂い……いいカラダ……そして鬼のイケメン。
多分……多分だけどアイツらだ……!
「ルイン、今の……」
「はい、多分ですけど、私も主様と同じことを考えてると思います!」
「よし、なら話は早いな。追うぞ!」
「はい!」
俺たちは、道を引き返して行った男たちを追いかけていくのだった。




