case.12 アスモフィVSムル(2)
戦いぃぃ
「“水舞:壱ノ型『津波』”ッ!」
ムルはその手に持つ2つの扇で、華麗な舞を繰り広げたあと、その上から広範囲の水……文字通りの津波が現れ、私を襲う。
避けるには範囲が広すぎて無理だろう。
ならどうするか。
(打ち返すしかないわよねぇ……!)
「最大威力で喰らいなさい……! “暴風”ッ!」
私が一番得意とする風魔法による攻撃。
暴風が目の前で巻き起こり、津波を押し返していく。
「あら、この程度の攻撃じゃ跳ね返されちゃうのね。貴女中々強いじゃないの」
ぐぬぬぬ……こんな見た目幼女に言われたくないんだけど……!
「なら、これはどうかしら? “水舞:肆ノ型『水龍』”ッ!」
ッ……!
何……これッ!
水で出来た、龍……?
咆哮を響かせながら、龍はこちらへ向かって飛んでくる。
避けなきゃ……!
「フッ……!」
「あら、まだ終わってませんわよ?」
何……?
まだ、終わりじゃない?
水の龍は、地面に当たって消えたと思ったのだけれど……。
「下……」
「え……?」
ムルがそう呟いた時だった。
『GRUUUUUUU!!!』
ドガーン!と地面を突き破って龍が現れた。
そしてそれを避けることは叶わず、攻撃を喰らってしまう。
「水舞:弐ノ型『水手裏剣』」
そして私が攻撃を受け、怯んでいる間もムルは攻撃をする手を止めなかった。
華麗な舞の直後に繰り出される技。
今度は水でできた小さな刃物がいくつも現れた。それがこちらへ向かってくる。
「『守護』!」
スキル『守護』を使い、それを防ぐが……
「無駄ですよ。水舞:陸ノ型『波紋』ッ!」
水刃が飛んでくる中、さらに重ねて技を放ったムル。
今度のは薄い衝撃波による攻撃。
だが、こんな攻撃に意味があるとは思えない。
私は『守護』によって護られている。
だから、平気……
―――パリーン……
じゃなかった……。
物理、魔力の二重障壁を展開していたというのに、それを軽々と破壊されてしまう。
「なっ……!」
マズいわ……!
これが壊れたら、水手裏剣が……ッ!
急いで守護障壁を展開しないと!
「『守―――』」
「遅いですわ。“雷舞:捌ノ型『閃光』”」
障壁を展開する直前の事だ。
刹那にして目の前に現れたムル。
ムルは先程までの動きとは違い、(……特にスピードが異常なまでに早くなっている)やけに攻撃的な動きになった。
それに、“水舞”ではなく“雷舞”と言っていた。
そして舞の形も変わっていた。
戦闘スタイルが、舞によって違う……の?
しかし……そんな事を考えていると、
「ムカつきますわね。目の前に私が居るのに、呑気に考えごとなんてッ!」
凪。
扇で横凪にされた私は、そのまま吹き飛ばされてしまう。
「……カハッ……。い、痛いわね……! “暴風―――”」
「はっ、同じ技を2度も喰らうと思って……」
「“―――妖迅”」
仕返しに、と私は新しく覚えた技を使う。
暴風妖迅。荒れ狂う暴風と、無数の妖魔が相手を襲う技。風属性魔法最強クラスの魔法と言っても過言ではないこの技。
(受けてみるといいわ……!)
「ウァァァァッ!」
よし、ダメージは通ってる!
これならもう一度……
「もう1度……させるとお思いで?」
「え……?」
「炎舞:参ノ型『爆撃』」
炎……舞。
また、型が変わった。
今度は何が来るの?
「―――燃え尽きなさい」
そう、ムルが漏らした次の瞬間だった。
―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
辺りに響く、激しい音とそれに伴う激しい揺れ。
これは……上!?
「なっ……ッ!」
上を見上げた私は、驚愕した。
それは……紛れもない“隕石”だった。
「炎舞:肆ノ型『火ノ海』!」
さらに追撃。
私の周りは火……マグマの海へと化してしまう。
そして上からは隕石が。
「氷舞:壱ノ型『氷牢』!」
もう、どうすればいいのか。
今の技で、地面は火の海。周りには氷でできた鉄格子で囲われてしまった。
そして穴の空いた上部からは巨大な隕石が……。
「さあ、どうしますか? アスモフィさん。これを、突破できますか?」
……出来なくはない。
でも、それは……。
いいや、賭けでもやるしかない。
いいわ、やってやるわよ。
僧侶の職業固有スキル、『逆転』を使う。
そしてこの状況を『逆転』してみせる……!
ブクマや評価、是非ともお願いしたいです!




