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case.1 魔王の戦い方

二作同時更新です!

お楽しみください!

『魔王とは只の地位権力を振りかざす者の事では無い。魔王とは、全ての“魔”を統べる王なのだ』




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 自分のステータスを確認した俺は、あまりの驚愕に声が出なかった。



 と、とりあえず何処からツッコもうか……。



 まず、魔王って!いやいやいやラノベじゃないんだから!魔王って!



 と、言うのもこの世界。もし仮に本当にスカーレットだと言うのであれば、この世界の職業ジョブについて少し説明しといた方がいいだろう。



 スカーレットでは、キャラメイク・初期職業・初期スキルが全てランダムの特殊なゲーム設定がしてある。


 まずキャラメイク。

 これは、性別・身長・体重・種族、さらには誕生日までがランダムで決められる。

 その中の種族だが、これはゲーム内で決められた7つの種類から選ばれる。




 ・人族ヒューマン

 ・妖精族エルフ

 ・小人族ドワーフ

 ・鬼族オーガ

 ・獣族ビースト

 ・竜人族トール

 ・機械族マギアス




 これとは別に、ゲーム内のNPCにのみ与えられてる種族があり、聖族・魔族・神族と言うものがある。

 俺の種族、半神ミディムはこの中の神族に当てはまる。


 こういう、少し名前の違う種族は、本来の種族から亜種進化した物で、例として機械族マギアスに魔族の血が混じれば、亜種進化して“魔戒族ディアス”となる。

 半神は、こういうタイプの種族だろう。




 そして次に職業。これは8つある中から一つがランダムに選ばれる。



 ・戦士

 ・騎士

 ・魔法使い

 ・弓使い

 ・僧侶

 ・呪術師

 ・言霊師げんれいし

 ・暗殺者


 

 これはあくまでも初期職業であって、ゲームを進めて、レベルが上がっていけばこれとは別の職業になったり、現在の職業をクラスアップさせたりすることができる。

 例えば戦士が狂戦士バーサーカーになったりだな。


 さらに職業にも、ゲーム内NPCにのみ存在しているものがあり、それが勇者・魔王・巫女と呼ばれるものだ。

 今回俺が選ばれた職業は“魔王”。それに種族は“半神”。どちらも本来ならNPCが持っている筈なんだが……。



 そこら辺も含めて、色々調べないといけないみたいだな。



 あと少し補足しておくと、職業にはそれぞれ固有のスキルが存在する。


 例えば戦士なら『身体強化』、騎士なら『挑発』といったような、その職業に合ったスキル等だ。

 

 そしてさらに、それとは別にゲーム開始時に一つだけスキルがランダムで配布される。

 これは職業の固有スキル以外の全てのスキルが対象なので、無限にあるスキルの中から一つ選ばる。


 俺は、“魔王”の固有スキル『支配ルール』を持ち、配布スキルで『召喚・使役』を引いた。


 それぞれの効果説明の欄にはこう書いてある。



・『支配』……対象を自分の支配下におき、行動や能力を完全掌握する事ができる。対象が小さい存在である程、効力は高い。


・『召喚・使役』……ランダムに魔物を召喚し、それを従わせることができる。保有魔力が大きい程、召喚させる魔物は強い物となる。



 まあつまり……



「俺って最強なのでは?」



 俺は薄暗い洞窟の中で、最強である事を悟った。


 ちなみに何故俺がここまで詳しいかというと、事前にこのゲームの説明書を読み込んでおいたからだ。


 無知は時に罪になるからな。オンラインゲームにおいて、トップランカーになるには絶対必要な知識だろうと、先に覚えこんでおいたのだ。

 ……仕事の合間も、隙を見て……な。




(しかし、そろそろこの洞窟から抜け出したいな。暑くて仕方ない)



 そう思い、俺は歩きながらステータスを再び確認する事にした。



(レベルは1、攻撃力や防御力、魔力は……ん?“―――”になってる? まだ分からないと言うことか? それともバグか? まあ考えても仕方ないか)



 と、ここで二本の分かれ道に着いた。

 さて、どちらへ進もう。



(ま、こういう時俺は大体右を選んでいつも失敗してるからなぁ。今回は左にしてみるか)



 そう思い、左の道を進もうとした。


 しかし、その道から人の話し声が聞こえてきたのだ。




(人か! やったぞ、これで外に出れる!)




 この時の俺は気分が高揚していた。


 だから少しだけ油断していたのかもしれない。


 この人たちが善人である保証も無く、行動してしまった。




「兄貴〜、やっぱり帰りましょうよ〜。流石にこんなジメジメした洞窟にはお宝なんてありませんって〜!」


「チッ、うるせぇな! いいから黙って着いてこいよ!」


「ひぇぇぇぇ! すいやせん! 一生着いていきます! 兄貴!」




 二人の男。背中には一本の剣を携えていた。

 そんな二人組に、俺は話しかけた。




「あの〜すいません」



 すると、一人の男……スキンヘッドの体格がいい方が舌をペロリとしてこちらを舐め回すように見てきた。



「アァン……? おいグル、早速お宝じゃねぇか」


「ヘヘッ、そうっすね! こんな身なりのいいイケメンなら、金も持ってそうっすね!」


「いやちげぇだろうが、バカが! 服を見ろ服を!」


「服……? あっ! こんな服、今まで見たことねぇですよ!」


「そういうこった! ヘヘッ兄ちゃん、わりぃな! 俺たち盗賊なんだわ。何だか困ってるみたいだが、俺たちは助けてやれねぇんだわ。ま、そんなわけだから、とりあえず持ちモン全部置いて逃げたほうがいいぜぇ?」



 薄汚い笑みを浮かべ、近づいてくる二人の男たち。



(しまった……こいつらこういうタイプのやつだったか……)



 迂闊に近づいた過去の自分を殴りたい気分だった。



「嫌だ、と言ったら?」


「だったらこうしてやる!」



 剣を抜き、襲いかかる兄貴と呼ばれた男。



「っぶねぇ!」


「へぇ? 避けれるんだ? じゃあこれならどうかなァ? グル! 行くぞォ?」


「うっす! 了解っす!」



 今度は二人でかかってきた。



「クソッ!」



 何とか1回目は避けられた。だが……!



(2発目……!)



 もう駄目か?そう思いもした。

 だが……



(クソ……このまま死んでたまるかよ! 何か……何か無いのか!?)



 どうすれば……いい!?


 戦う手段は……そうだ、スキルがあるじゃないか!



 二つのスキルの内、使えるのは……これだ!




「『召喚』ッ!」




 俺は、無我夢中で叫んだ。

 スキルが成功する保証もなく。



 だが、予想外にもこれは上手く行ったのだ。




▶スキル『召喚・使役』が発動されました。




「何だこれっ! おいグル! 避けろ!」


「了解っす!」



 足元に現れた魔法陣を避ける二人の男たち。




(頼む……めちゃくちゃ強いやつ……来い!)




 高望みかもしれないが、俺は祈った。


 俺はまだ戦い方も、スキルの使い方も分からない。


 だから俺じゃない、誰か別のヤツに戦って貰えるよう祈った。


 そしてスキルを使った。


 全く使い方は分からなかったが、『召喚』という適当なイメージだけでやってみたら、案外出来てしまった。




 魔法陣から、何かが出てくる。


 その場に居た、俺含む3人はゴクリと唾を飲み込み、その様子をじっくり見ている。




 そして魔法陣から、その全貌が現れた。


 その姿は一人の……少女?のようだった。




「お呼びでしょうか、主様」




 そう言うその子は、見た目から分かることが一つあった。



「悪魔……?」



 角や羽が生えており、髪の色は銀で、瞳の色は赤。

 今の俺の格好と一緒で、全体的に黒い衣服に包まれた可憐な少女。



「はい、悪魔でございます」



 そう答える少女。


 それを聞き、二人の男は驚愕した。



「ま、魔族を召喚しやがったぞ!」


「ヒィっ……ばっ、化け物だ!」




「「逃げろぉぉぉぉぉぉお!」」




 そう叫びながら逃げていく男たち。

 それを眺めていた俺に、少女は語りかける。



「殺さなくても、よろしいのですか?」


「え? あ、ああ。まあな」


「左様ですか」



(それにしてもこの子、よく見なくても可愛いが過ぎるだろうが……。目に毒だぁぁぁ)



「?」



 ジッと彼女を見つめる俺を、怪訝な表情で見つめかえし、首をかしげる。



(いやいやいや可愛すぎんだろぉぉぉ)



「そ、そうだ! 君、名前は?」


「私に名前などありませんよ。私は只の悪魔ですから」



(名前が無い……?)



「ええ……じゃあ俺がつけてもいいか? 流石に名前が無いと、なんて呼べばいいか分からないからな」


「よろしいのですか……?」


「嫌、だったか?」


「いえ、とんでもありません! むしろ嬉しいです! 是非、是非お願い致します!」



 多少食い気味にお願いしてくる少女。


 うーん……そうだな。

 悪魔……悪魔……悪魔ねぇ……。


 名前をつけると切り出したはいいが、何にも思いつかないな。



 どうしようか。


 ここは俺の中二病スキルを最大限活かす時なのか?



 うーーーむ。

 破壊、殲滅、漆黒、大罪……イマイチだな。


 あぁいや……殲滅?滅び……ルイン……あ、いいじゃんかこれ。

 よし、これでいこう。



「うーんと、じゃあ……、“ルイン”で」


「ルイン……! ありがとうございます! ありがとうございます! あの……それで貴方は……?」


「あ、俺? 俺は、三雲……あっ、いや、ルミナスだ! ルミナス!」



 危ない危ない……危うく本名を言うところだった。

 一応ゲームの世界なら、キャラ名の方がいいだろう。



「ルミナス様……。その、失礼ですが、種族と職業の方は……?」


「え? あー、俺の種族は半神。職業は……魔王だ……」


「魔王……様?」



 俺の言葉を聞いた瞬間、ルインの目から涙が溢れる。



「えっ、えっ、どうした!? 何かマズイこと言ったか俺!?」


「いえ、違うのです……。魔王様が、魔王様が居ることが嬉しくて……!」


「どうして?」


「先日、魔王様がお亡くなりになられました。ですので魔族はみな、魔王様の死を悲しみ、活力を失い、他の種族、特に聖族に蹂躙され始めていたのです……。ですが今はもう違います。貴方が……魔王様が来てくださいました。お願いです魔王様! 我ら魔族をお救い下さい!」



「―――いいよ」



「やっぱりそうですよね……急にこんなお願いをした私が間違っていたのです……」


「だからいいよって」


「うう、そんなに何度も言わなくたって……え? 今、なんと……?」


「いいよって」


「本当……ですか!? ありがとうございます! ありがとうございます!」



 泣いて喜ぶルイン。

 そこまで喜んでくれるなら、快諾した甲斐があったってもんよ。


 まあ何故快諾したかというと、俺はとあるワードに弱かったのだ。

 “蹂躙”。力のある者が、力無き者を踏みつける、最低最悪の行為。俺はそういうのが一番嫌いなんだ。


 必要なら、それは仕方ないが。

 必要のない蹂躙、無意味な死ほど残酷な物はない。


 それは、過去に俺の家で起きたとある事件からの教訓であり、俺の信念の一部分でもある。




 どういう訳か、俺は魔王としてこの世界に降臨した。


 力も、まだ使えないが、その強大さは使わなくても何となくわかる。



 俺はその力を使って、この子達を助ける。魔族を救う。

 勿論蹂躙はしない。




 ―――俺はニヤリと笑みを浮かべた。




 だってそうだろう?



 

(『支配』。これは……そのためのスキルじゃないか)




「ルイン、行くぞ。まずはこの洞窟を出る。話はそれからだ」


「はい! 分かりました!」




 ―――これから始まるのは、魔王による魔族を救うお話。殺戮も蹂躙も無い、平和な世界を創る為に、今ある世界を『支配』する新たな魔王のお話。



こちらは次回火曜日更新となります!

拡散宜しくお願い致します!


Twitterアカウント→@tetra1210

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