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case.12 父と子

『グァァァァァァァァォォ!』


「父さん……」



 俺たちが生み出した、真下のクレーター。(元城跡)

 それが出来る様を俺たちはアスモフィの飛行魔法で上空へと飛び、眺めていた。


 そしてしばらくすると、クレーターから“竜の咆哮”がした。


 竜人族トールと魔族のハーフである、リガーテは、クレーターから現れ出た白い竜を見て、「父さん」と漏らした。



「あれが、お前の父……?」


 俺は反射的にその質問をしてしまう。



「はい……僕の父は、以前“竜王”なんて呼ばれて恐れられて来た竜人族トールの1人で、その力を恐れた聖皇国は、無抵抗の父を乱暴に捕らえたのです」


 この国の奴は、一体どこまで汚れてるんだ。

 話を聞くことが出来ないのだろうか。



「魔王殿は聞いたことがありますか。“暴走”、という言葉を」


「暴走……。もちろん分かるぞ」


「この世界には“暴走状態”と言う物があります。それは激しい怒りは、絶望、深い悲しみなど、いわゆる「負の感情」が最大限まで引き上げられた時に起こる状態で、今の父はそれなんだと思います」



 感情……俺にとっても聞き捨てのならない言葉だ。

 “暴走状態”、か……。俺で言う『憤激焉怒エンドレイジ』みたいな物なのか?


 まあアレは俺の意思で発動できるスキルではないんだが……。



「どうして、そこまで怒っているのか分かるか?」


 俺は、“暴走状態”になっているリガーテの父について聞いた。



「はい……。理由は恐らく、僕です」


「お前が?」


「はい。父が……リガルテが捕まったのは約1年前。場所は城の遙か地下。僕はそこに何度も何度も助けに行こうとしました。しかし、いつも何かと邪魔をされ、結果的に会うことが出来ませんでした。それが約1年……。もちろん父は怒るでしょうね」


 そんな……。俺は、聖皇国に対する怒りが暴走状態を引き起こしたのだと思っていたのだがな。



「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。別に貴方は悪くないでしょうが。むしろ貴方も被害者でしょう? だったらもっと被害者ヅラしてればいいのよ」


 俺も思っていた事を口に出して言ってくれたのは、アスモフィだ。



「アスモフィ殿……。いえ、いいんです。とにかく、僕は父を止めてきます」


「……俺たちに、何か出来ることは?」


 俺は、リガーテに問う。



「いえ、僕一人でどうにかしてみせます。あ、それなら僕が死んだ時は、屍を拾ってやって下さい」


「リガーテ……」


「それじゃ、僕は行ってきます」


 そう言ってリガーテ、自らの父の方へ向かって飛んでいく。


 それを見つめながら、ルインは話す。



「主様は、これでいいんですか?」


「ルイン……?」


「主様は、このままリガーテさんが、お父さんに殺されるのを見ていて、いいんですか?」


 この質問の真意が何なのか、俺には分からなかった。

 しかし、俺の口は言葉を放つ。



「多分。俺もそんな予感はしている。今のリガーテじゃ、リガルテには勝てない。でも、だからといって俺たちが介入していい話でもないんだ。これはアイツら家族の問題だ。だから俺たちがするのは、せめてアイツが死なないようにサポートする事だけだ」


「主様……。フフッ、やっぱり主様は優しい魔王様です!」


 ニコリとやわらかい笑みを浮かべ、俺を見つめてくるルイン。

 やはり、ルインには笑顔が似合う。


 それほどまでにその笑顔は可愛くて、今すぐにでも抱きしめてしまいそうになるが、状況が状況なので、何とか自制する事が出来た。



「ルイン、アスモフィ、マノン。協力してくれるか」


 全員に協力を要請する。

 さっきの戦闘で、少し魔力を使い過ぎて、1人でサポートしきるのは少し不安なのだ。



「ふふふ、愚問よルミナス様。おねえちゃんはもちろんイェスよ!」


 ルミナス……?

 あっ、俺のことか。


 みんな俺の事は“主様”とか“魔王様”って呼ぶもんだから、すっかり忘れていたな。



「もちろん俺もいいけどよ、アイツら殺しちまわないか心配だぜ?」


「構わない。そこはアスモフィがどうにかしてくれるだろうさ」


「ええっ!? 私も疲れてるのよ!? もう、そこは『俺に任せておけ』くらい言ってみなさいよ!」


「俺も疲れてるんだ。まあみんなで協力しようじゃないか」



 やはり全員、魔力が底をつきかけているのだ。

 それでも協力してくれるなんてな。やっぱりこんな奴らが殺されなきゃいけないのは、おかしい。


 絶対に、魔族は守らないと。



 俺の中の決意は、さらに固くなる。



「主様、私はずっと主様のお側におりますので。全ては主様の仰せのままに」


「ああ、ルイン。ありがとな」


 空中で、頭を撫でてやる。



「ひゃわ! はわわわわわ〜」


 なんてだらしのない声をあげたルインは、顔を真っ赤にして俯いてしまう。


 そんな態度をとられると、こっちも恥ずかしくなってくるんだが……



「あらあら〜」


「なっ、なんだよアスモフィ!」


 こんな感じで、俺たちの絆はより深まったのだった。



(いいか、リガーテ。絶対に死ぬなよ。お前は魔王軍なかまに必要なんだからな……!)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『グァァァァァァァァァァァァァァ!』



 目の前で咆哮している竜は、僕の父だ。



「父さん……」


『リガ……リ……リガ……リガァァァァァァァァァァァァァァァァァァテ!』



 酷く、怒っているな。


 俺は、こんな状態の父さんを止めるのか……。



 出来るのか?僕に。


 いや、出来るかどうか?そんな事は関係ない。


 “やる”んだ。やるしかないんだ。


 

「父さん、行くよ……」


『殺す……! 殺ス! 殺ス殺ス殺スコロスコロスァァァァァァァァァァ!』

夕方に再び!

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