case.5 【色欲】の僧侶アスモフィ(2)
「それじゃあ―――勝負開始……!☆」
俺たちの戦いが始まった。
この戦いの目的はアスモフィを魔王軍に引き入れること。
別に敵対しているわけではないのだが、何故かアスモフィ本人の提案で戦うことになってしまった。
「オラオラァ! とりあえず開幕祝いだァ! 爆☆発!」
チュドーン!
闘技場をマノンの爆発魔法が襲う。
「ゴホッ、ゴホッ。ルイン、無事か?!」
「はい! 無事です!」
「それじゃあ作戦通り頼んだ!」
「了解です!」
そう言ってルインはマノンの方へと駆けて行く。
「あら、わたしの相手は貴方なのね?」
「ああ、アスモフィ……、俺の力とくと味わってもらうぞ!」
「ウフフ、期待しちゃうわ!」
クソ……、口調はゆるふわなのに、コイツを前にするとすげぇ萎縮してしまう……。
なんていうか、威圧感というか……。
とにかく、そんな物が目の前に広がっているのだ。
「じゃあ行くぞ……! “電撃”!!!」
俺の先制。
雷魔法の“電撃”による攻撃。
だが、
「はいはい! おねえちゃんにはそんな攻撃効きません!」
アスモフィは手に持つ杖でちょん、と魔法に触れた。
するとたちまち魔法は消えてしまったのだ。
「クソ! ならこれでどうだ! “炎天”!!!」
さらに追撃。
天から降り注ぐ炎魔法。
しかしこれも、
「無駄でーす!☆ 消えちゃえ〜!」
今度は触らずに、魔法を消してしまった。
……魔法は通用しない……?
「“雷光”!!」
「無☆駄」
……どんな魔法を撃っても消されてしまう……。
ならやはり魔法を打ち消す能力が……?それともあの杖に何か秘密が?
チッ、何事もやってみなきゃ始まらないか。
俺は剣を引き抜いた。
「あら、今度は剣なのね!」
「受けてみろ……我が剣を……! “飛剣”!!!」
この魔王、ノリノリである。
実は少し楽しくなってきていたのだ。
こほん。
飛剣とは、人の周りをちょこまかと飛ぶ蚊をイメージした剣技である。
まるで蚊のように相手を翻弄し、そして、一撃。
そんな技である。
「魔法が聞かないなら物理で、ってとこかしらね。でも無駄なのよ」
「フッ……!」
一閃。
俺の剣はしっかりとアスモフィの……
―――杖を凪いでいた。
「きゃっ……、ま、まさか杖を……?」
「フッ……コイツを喰らうといい! “招雷”!!!」
……招雷とは、以前使った“壁雷”とは逆の効果を持つ魔法である。
自分以外の、一定範囲内の「内側」にまんべんなく雷を降らす魔法。
もちろん、その範囲の中にアスモフィは居た。
「ギャァァァッ!」
やはり、魔法を消していたのは杖……
「なーんて☆」
だ……と……思ったのだが……!
「はぁ、つまらない。つまらないわ」
……?何だ、アスモフィの雰囲気が……。
「貴方さっきから無駄だって言ってるのに魔法、魔法、魔法……。無駄だって言ってるでしょうがッ!」
……!
豹変……した!?
どうやら、こっちが本性のようだな。
「もういいわ、呆れた。貴方に私は倒せない。いいこと? これが魔帝八皇の力よ! “死歌”!」
来る……か!?
「うふふふ……!」
何だ?何も来ない……?
いや、おかしい。あの余裕ぶりは……何かある!
「そろそろ……ね」
そろそろ……?
そう思った瞬間だった。
「グアァァァッ!」
痛い……!?
身体の内側から、蝕まれていくような痛み……だ!
「貴方に回復する手段はあるかしらねぇ? それ、放置してたら死ぬわよ?」
「なっ……!?」
「まあ素直に負けを認めて、私の下僕になるなら回復してあげるけど……」
ペロリと舌なめずりをして、笑みを浮かべるアスモフィ。
クソ……このまま負けてたまるか……ッ!
(何か……何かないか!?)
焦った俺はステータスを咄嗟に開いた。
(何か……スキルは……! ……! これは!?)
▶スキル『吸収』を発動できます。
俺が見つけたのは、スキル『吸収』の発動確認。
効果を見たことはないが、今ここでこれが出るってことは、この状況をどうにかしてくれるってことだよな?
なら、もちろん使うぜ!
▶スキル『吸収』を発動します。
……おお……!おお!
痛みが消えていく……!
どんな効果なんだ……?これ。
▶スキル『吸収』……対象から対象を吸収する。
簡潔でわかりやすい説明どうもありがとう。
「さて、アスモフィ」
「あら……? 痛みは?」
「消えたさ……。ここからが第2ラウンドの始まりだ。我が底知れぬ絶望の闇に呑まれるといい!」
「言ってくれるじゃないの……! いいわ、受けて立つ! 貴方が私たち魔帝八皇に敵わないってこと、その身を以て思い知らせてあげる!」
明日も【転生魔王】!




