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case.3 聖皇国ラーゼ

「なぁなぁ! ラーゼってのはまだなのか!?」


「もう目の前だぞ」



 歩きながらマノンが騒ぐが、実際俺の答えた通り、もう着いたのだ。



 マノンが来てからだいぶ騒がしくなったな。


 だが、そのおかげで、気づいた時には聖皇国ラーゼに着いていた。


 正確にはラーゼの門前だが。



「あ、主様。我々魔族はさすがに入れないかと……」



 とルインが。


 確かにそうだよな。その心配はもっともな物だ。


 だが、安心してほしい。


 そんなこともあろうかと、ルシファルナからとある物を預かっているのだ。



「これを見てくれルイン。何か分かるか?」


 そう言って俺はとある手帳を見せる。



「手帳……ですか?」


「ああ、これはいわゆる通行手形みたいな物でな。これを見せるだけで証明書代わりになるんだと。それに擬態効果もあるらしくてな。魔族以外にはバレないようになるらしいぞ」


「へぇ〜! すごいですね! これで安心です!」


「よくわからんが! 早く! 入ろうぜ!」



 と、言う訳で早速門を通過する。


 手帳を見せたおかげで特に何も無く、街へ入ることが出来た。



 ここが、聖皇国ラーゼか。


 見た目は……何だろう。

 全体的に白い気がする。


 見渡す限り白、白、白。


 一応、初めて来た、人の街だから、少しはテンションが上がると思ったんだがな。


 そうでもないようだ。



「なあなあ! 何しに来たんだっけか!」


 やっぱマノン……コイツバカが過ぎるだろう。


「いやだから……」


「マノン様、アスモフィ様を探しに来たのですよ」


 と、ルインが親切に教えてやった。



「おお、そうか! アイツか!」


「はい、その方だと思います」


「アイツかぁ……。アイツは変なヤツだからなぁ!」


「あ、アハハ……そうなんですか?」


「おうとも! いやぁ! アイツはキモいんだよなぁ!」



「あらあらウフフ……」



「ま、まあでも、皆さん人それぞれですから!」


「いいや、アイツは特段ヒデェな!」



「酷いですわ……!」



「どういうところが酷いのですか?」


「んーー! んーんー、全部かな!」



 いや全部なんかよ。



「もう……マノンったら……。酷いですね! ぷんぷん!」


「まあまあ、そう怒るな……って……」



 は……?


 ん……?


 え……?



 思考が停止する。


 待った待った、やっぱそうだよな?


 さっきから少しあった違和感、やっぱコイツだよな?



「あら、どうしましたの?」


「あー、いや、あのー、あ、その……」


「あらあらウフフ……かわいい坊や……」



 ツーっと胸のあたりをなぞられる。


 とても……妖艶な女性に。



「主様……?」


 あっ、やばい。ルインが振り向いてしまう!



「なっ、なんでもな」


「ああぁ! アスモフィじゃねぇかぁぁぁ!」


「はい、皆大好きアスモフィおねえちゃんですっ!」



 が、そんな心配は杞憂に終わった。


 マノンに気づかれ、無事にデッドエンド。



 とりあえずルインから一発叩かれる。



 気を取り直して話を聞いてみることにした。



「はぁ……やっぱお前アスモフィか」


「はい! アスモフィです、魔王さまっ!」


「わぁお、そこまで知ってるのか」



 アスモフィ……。

 【色欲】を司る悪魔、アスモデウスの子孫にして、現魔帝八皇の僧侶枠。


 何故ここに居るのかは分からないが、探す手間が省けて助かったと考えるべきだろう。


 アスモフィの見た目は……そうだな。簡単に言うとエロい。

 ピンク髪で巨乳できわどい服。


 おそらく男なら二度見……いや百度見くらいはするだろう、エロさだ。



「あらあら、そんなにジロジロ見られると恥ずかしいですわ」


「あるじさま……!」



 どうどう、ルインどうどう。



「と、ところでアスモフィ何でこの国に?」


「あら、それを説明するには、まずこの国について語らないといけないわね。どこか場所を変えて話しましょう?」


「了解した」 



 こうして話は進む中、一人だけ不満な顔色を出す者が居た。



「なぁなぁ、俺も行かなきゃ駄目なのか、それ」


 マノンである。


「んー、まあ一応?」


「そうかー、じゃあしゃあねぇな! つまんなさそうだけど、一応着いてってやるよ!」



 確かに、難しい話は、アホの子のマノンには辛いだろうな。

 だが着いてきてくれるみたいなので良しとしよう。



「じゃあ行きましょう? いい場所があるのよ」


 そうアスモフィに言われるがまま、ついていった。



 しばらく歩いたあと、着いた場所は、一軒家。

 正面の屋根上には、大きくこう書かれた看板が飾ってあった。



『アスモフィおねえちゃんのお・う・ち♡』



 おおう……。


 確かにヤバいな。この人。



「ささ、入って入って!」


 言われるがまま、家へと入る俺たちだったが、さらに驚きは加速する。



「お、おおう……これは……」


「酷い……ですね」


「な!? な!? ヒデェだろ!?」



 三者三様の反応を見せた俺たちだったが、何がそんなに酷いのかというと。



 まず部屋が汚い。

 ゴミ屋敷よりゴミ屋敷だ。

 と、いうか床が見えない。

 しかもゴミの山の中に男……?が居るのだ。


 次に、廊下。

 これは……、ラブドール、だろう。

 しかもその姿は幼い少年の物から年老いたおじいさんの物まで、多種多様に揃っていた。


 最後に屋内全体に広がるこの匂い。

 いや、かなり酷いぞ。

 ゴミのせいもあるんだろうが、何というか、こう、イカ臭いというか?言葉で言い表せないような匂いがしている。



「あ、あはは、おねえちゃん困っちゃうなぁ……! ちょっと外で話そうねぇ?」


 何故お前が怒るのだ。



「さ、会議しましょ?!」


 家を出た俺たちはアスモフィのその言葉で会議を始めることにした。

 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「こほん。えーっと、まずこの国、聖皇国ラーゼについて話すわ。この国はね、すごい大きな問題があるのよ!」


「問題?」


「そう、問題! この国は皇帝エスペルってハゲオヤジが支配しているんだけど、そいつが魔界に攻めてきたのよ!」


「魔界に?」


 俺はその言葉に疑問を持った。

 そして俺と同じ疑問を持ったルインが、それをアスモフィに聞いた。



「で、ですが魔界に行くには魔族の力が!」


「そうなの。あのハゲオヤジ、たまたま外界に来ていた悪魔を捕まえて、無理矢理協力させたのよ」


「そんな……!」



 またか。

 何故この世界はそこまでして魔族が虐げられなきゃいけないんだ。


 そりゃ俺を襲ってきたあの悪魔っ子たちも、躍起になるわな。



「それで?」


「それで、私はそれを聞いてこの国に来たわ。もちろん魔族であることは隠してね。そしたらこの国のあーんなことやそーんなことが見えてきたのよ」


「ほう、それは?」


「この国はね、戦争をしようとしているわ。魔族と、人間の」


「……」


「この国の人はみんな、聖属性の魔法を使うのよ。だから魔族なんて一撃。そういうコンセプトの国なのよ」



 コンセプトって。


 それにしても、戦争か。



「なあアスモフィ。単刀直入に言わせてくれ」


「なぁに?」


「お前も俺たちの仲間にならないか? 一緒にこの世界を支配しよう」


「うーん、どうしようかしら」



 腕を組み、その大きな双丘をぷるるんと持ち上げ、悩むアスモフィ。


 やがてアスモフィは何かを閃いたように言った。



「じゃあ、私と……そうね、マノン? 一緒に来なさい。私たち2人と戦って、貴方の力を示してちょうだい」


「お、戦うのか!? いいぞ、俺もやるぞー!!」



 は?


 ちょっと待ってくれ。


 偉大なる魔帝八皇の2人と戦うだって?


「いや……は? え? さすがに分が悪いと思うんだが」


「へぇ? 怖いんだ、ぷぷぷー! おねえちゃんがっかりだなぁ!」



 クソ、このクソ悪魔め……。


 俺がそんな煽りに乗る訳……



「いいですよやってやりますよ! 私と! 主様で! 貴方たちをボッコボコにしてやりますよ!」



 え、えぇ……。


 ルインよ、落ち着きたまえ……。


 こうなったらもうやるしかないか……。



「はぁ、分かった。やるぞ」


「ウフフ、そうこなくっちゃ! 改めまして、魔帝八皇が一人、【色欲】のアスモフィ、新たな魔王様に勝負を挑んじゃいます!」




 かくして、俺とルイン対マノンとアスモフィという、明らかに戦闘力に差がある対決が決まってしまったのだった。

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