case.1 魔族の国へ
―――第二章開幕。
俺の名前は、ルミナス。
異世界から来た、この世界の新たな“魔王”。
あの夜、大人気MMORPG『Scarlet Online』、通称『スカーレット』をプレイしようとして、そこで意識を失ってしまった。
そした目が覚めると、この世界に居た。
なんやかんやあって、俺は隣を歩くこの魔族の少女、ルインと出会う。
そしてなんやかんやあって、ルインと共に、この世界に『魔族が虐げられない世界』を作る為に、まずは『魔族の国』をつくることになった。
その為に今の魔族の国へ向かう。
現状把握というやつだ。
ルインに、今の魔族の国に関して確認を取ってみたところ、分かったことはこんな感じだ。
・俺の言う魔族の国は、この世界で言う“魔界”と呼ばれるところである。
・魔界へ行くには、魔族の力が必要である。
・今魔界を治めているのは、『魔帝八皇』と呼ばれる各職業のトップに君臨する者達であること。
まあ、こんな感じだ。
ちなみにおさらいしとくと、この世界には8つの職業が存在している。
・戦士
・騎士
・魔法使い
・弓使い
・僧侶
・呪術師
・言霊師
・暗殺者
この8つである。
それぞれのトップクラスの実力を誇る8人が今の魔界を支配しているらしいのだ。
「あ、そろそろ着きますよ!」
突然ルインは立ち止まって、そう言った。
しかしそこは、何もない森の中。
「本当にここか?」
「はい! ちょっとお待ちくださいね!」
そう言ってルインは、何か呪文のように口ずさむ。
「…………開け、魔界之門!」
そして目の前に現れたのは、黒い扉。
「おお、本当に出てきたな」
「はい! この扉に入れば魔界に入れます!」
「了解だ。行こうか」
そして躊躇いなく扉をくぐった。
もちろん、攻撃が来ることなんて予想していなかったのだが。
「曲者だ! 曲者だ! 殺せ! 殺せ!」
「ッ!?」
背後からの奇襲。
数は2人。
武器は剣と、弓。
冷静に考えろ。
これくらい、対処してみせるさ。
「“壁雷”」
自分を中心に、雷の膜を張る魔法を使う。
これによって、いわゆる“壁”ができるのだ。
「グァァッ!」
「痛い! 痛い! 助けて! 助けて!」
雷をまともに喰らった悪魔たち。
見た目は……まあ何というか、ゲームによくいるような見た目をしているな。うん。
「おいお前ら、いきなり人に襲いかかっては駄目だろう。もうやめるんだぞ」
「うるせぇ! 部外者は黙ってろ!」
「助けて! 助けて!」
教育がなってないな。話を聞くことすらできないのか?
そう思い、悪魔たちに近づこうとした時だった。
「鷲獅子よ」
『GRYAAAAAAAAAAAAA!!!』
「またか……ッ!」
再び奇襲だ。
「いい加減話を聞いてくれないかね……! “屍鬼召喚”!」
今度は『死霊』のスキルを使い、ゾンビの肉壁を作る。
「“閃光”!」
間髪入れず魔法を行使する。
と、そこに遅れてルインがやって来た。
「大丈夫ですか、主様!」
「ああ、何とかな。それにしても魔界の連中は皆こんな好戦的なのか……?」
「いえ、そんなはずはないのですが……」
そして、俺たちを包んでいた光は消える。
「貴様は、何者だ。敵か? 味方か?」
目の前から、一人の男が歩いて来る。
見た目はイケメン、高身長、金の長髪。
……この世界の男共はこんなのしか居ないのか?
「そう言うお前は誰なんだ?」
「私か? 私は【傲慢】を司り、“言霊師”の頂点に君臨する魔帝八皇が一人、ルシファルナである」
ここで魔帝八皇のお出ましか……。
「む……? それより、そこの娘……どこかで見た記憶が……」
突然ルインを見て、うーむと唸りだすルシファルナ。
「いや……そんなまさか……。だが……。貴様は……いや、貴女は……リリス様……?」
「リリス?」
「やめてください。その名はもう捨てました。今はルインと名乗っていますので、そちらでお呼びください」
ほう。ここまでルインが真面目に答えるのは初めてじゃないか?
それくらいとても真面目な顔で答えている。
そこまでして触れられたくない話題なのかもしれない。
「失礼致しました。それで、そちらの方は?」
ルシファルナは俺を見て言った。
「俺か、俺は」
「新たなる魔王様です!」
「あ、ああ」
俺が言おうと思ったのだがな……。
まあよい。
ルインのテンションも元に戻ったしな。
「魔王……? これが……?」
「これがとはなんだ」
「いやだが、うーむ……うーーーむ……?」
すごい悩み始めたぞこの悪魔。
「何だ、疑っているのか?」
「……少しな。流石に、魔力量が少なすぎる気がして……」
「魔力量……か」
(たしか前は測定不能だったんだがな……。サファイアめ……死んでも俺の邪魔をするか……)
「なら一度戦ってみようじゃないか。それでわかる話だ」
俺はそう提案した。
「そういう問題ではない気が……まあいい。言っておくが私は強いぞ?」
「問題無い。むしろ俺も強いから安心してくれ」
「言うではないか! では早速始めるとしよう! リリ……ルイン様、試合開始の合図をお願い致します」
いまコイツ一瞬言い間違えたな。
「はぁ、程々にしてくださいね。それじゃ開始です! 魔王様、やっちゃってください!」
ルインが試合開始を宣言する。
(過度な期待はしないで欲しいんだがな……!)
「“炎天”!」
早速魔法をぶちかます。
炎天……名前の通り、天から炎を降らす、狂気的な魔法だ。
今俺たちが居る場所が、少し広い浮き島のような場所なので、こういう範囲攻撃はかなり効くはずなのだ。
しかし。
「喰らい尽くせ、鷲獅子よ!」
『GRYAAAAAAAAAAAAA!!!』
またコイツか。
翼を持つライオンのような獣。
まさしくグリフォンが現れて、俺の魔法を全て食ってしまう。
「これだけで驚くのはまだ早いぞ! 獅子よ!」
『グルルルル…………』
今度はライオン……か。
コイツはあれか? 召喚獣で戦う感じなのか?
「“凍竜”!」
俺はそのライオンに対して、“凍竜”を使う。
凍竜とは名前の通り、凍りついた竜が現れて攻撃をする魔法だ。
「なるほど、さすが魔王と豪語するだけあって、魔法だけは一流のようですね」
「それはどうも。まあ付け焼き刃なんだがな!」
「フッ、なら無くても対して影響はないでしょうな」
「は……?」
(俺余計なこと言ったか……?)
「言霊師の力を見せてご覧にいれましょう」
言霊師の力……?さっきの召喚獣とは何か違うのか……?
「魔法…………封印…………!」
「魔法……封印?」
何だ、まさか魔法が封印されたとでも言うのか?
「フッ、そんなので騙されると思うなよ。“電撃”……あれ……」
どうせヤツのブラフだろうと思い、魔法を使おうとしたのだが……。
どういうことか、魔法が使えなくなっていたのだ。
「おい……何をした?」
「特に何もしてませんよ? ただちょっとね」
いちいちムカつく言い方をするヤツだな。
まあ今の俺には何も感じることは出来ないのだが。
「魔法が無ければ、貴方は雑魚だ。違いますか?」
クッ、まあ確かに主力は魔法だ。
しかし、俺には戦う手段はある。
俺はニイッ、と口角を釣り上げ、言った。
「“魔法”がダメなら“物理”で攻撃すればいいだけの話だ!」
「は?」
「ルイン! 剣を貸してくれ!」
俺はルインの持つ、ロングソードを指差して言った。
「は、はい!」
そしてすぐさまルインは剣を投げる。
俺はそれを空中でキャッチし、ルシファルナに構え直す。
「俺が魔法だけで戦うねちっこいヤツだと思ったらそれは大間違いだぞ。“無双剣”!!」
無双剣、これはあの勇斗が使っていた技だ。
正面に、適当に剣を振るだけの単順な技だが、これが速ければ速いほど意外とあたるのだ。
「チッ、剣も使えるというのか! 来い、孔雀よ!」
今度はまた別の召喚獣か。
孔雀……それもかなり大きい個体だ。
「だが……無駄だ!」
俺はそのまま突っ込んできた孔雀を切り裂いた。
「チッ、それなら剣も……!」
「させるか、“流星”」
いち早く危険を察知した俺は、“流星”……高速で対象に近づき、切り刻む技……を使い、間合いを詰めた。
「なっ……!」
そして技を放つ。
「グァァッ!」
技をまともに喰らってしまったルシファルナはその場に倒れる。
「そろそろフィナーレとしようか」
俺はルシファルナに手をかざしながら、そう言った。
「お、おい! やめてくれ! 殺さないでくれぇぇ!」
だが俺は聞かない。
「安心しろ、悪いようにはしない」
「ヒィッ! 嫌だ嫌だ嫌だァァァ! 私が悪かった、お前は、いや、貴方様は立派な魔王だ! だ、だから!」
「言い残すことはそれだけか?」
「ヒッ……」
そして俺は言った。
―――俺が魔王であることを証明できる、このスキルの名前を。
「俺の傀儡となれ。『支配』」
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