case.10 蒼玉竜サファイア
更新時間固定!
夏休み中は『毎日』12:00か16:00に更新してます!(仕事無い日は2話投稿も……?)
では今日もどうぞお楽しみ下さい!
『運命に抗え』
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「何だ……貴様のこの力は……ッ!」
―――コツ……コツ……
「おい! 何故黙っている……ッ!」
―――コツ……コツ…………
「何故……何故無言で近づいてくるのだ!」
―――コツ……コツッ。
「なぁ、サファイア。知ってるか?」
「な、何をだ!」
―――コツ……コツ……
「主人に逆らった奴隷の運命だよ」
「そ、それは……ッ! 知るか! ふざけるのも大概にしろ!」
「それがお前の選択か?」
―――パチンッ……
指を鳴らす音が大広間に響く。
「いきます!」
「「「うらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
この音を聞き、ルインと転生勇者3人は動き出す。
「なっ、何を!」
「主様の邪魔をする貴方たちは邪魔なの、消えて。“刺突”」
ルインは太刀使い。
その手に持つ長身の刀で、正面に突進する渾身の一撃。
「ア……アァ……“無双剣”……!」
「クッ……ウゥ……“灼熱”!」
「屍鬼召喚、……」
勇斗の剣戟、ミミ(ゴミ)の炎魔法、真奈美の死霊魔術。
どれも、『転生勇者』と言うだけあってそれなりの威力・強さを持っている。
4人の攻撃により、サファイアの周りにいた雑魚モンスター達は次々と倒されていく。
「チッ……やはりこの洞窟の魔物じゃ限界があったか……ここは逃げるしか……!」
「俺が、お前を逃がすと思ったか? “拘束”」
「なァッ……!」
飛び立って逃げようとしたサファイアを俺の魔法、“拘束”が止める。
スキル【魔道】によって、一般的に汎用魔法とされてる魔法はある程度使えるようになっていた。
まるで生まれる前から知っていたかのように、息を吐くかのように“魔法”が使えた。
さすがに、魔法の種類までは分からなかった為、ここに来るまでの間、戦闘に役立ちそうな魔法をルインやミミに聞き出しといた。
「クソ! まさか魔法が使えるようになっているとは!」
「これだけじゃないぜ。“電撃”」
魔力の線で繋がれたサファイアの足に、線伝いに雷の魔法攻撃が向かう。
「グァァァァッ!」
「いい魔法の実験台だな。次はコイツだ。“氷結”」
今度はサファイアの両翼を、氷の魔力が凍てつかせる。
「これで飛べないな。さぁ、そろそろ終幕といこうじゃないか」
「あまり、我を舐めるなよッ!“竜之息吹”!」
サファイアは拘束されている自分の脚ごと、広範囲の炎のブレスで攻撃してきた。
しかし。
「“魔力変換”」
俺に当たるはずだった炎のブレスは、みるみるうちに消えていく。
正確に言えば、俺の身体に吸収されていく。
「何をしたんだッ!」
「“魔力変換”。魔法使いの基礎中の基礎の技らしいな」
「魔力変換だと……ッ!? だが、あれは自分の魔力量より下の者が放った攻撃でなければ変換出来ないはずだが……ッ!! まさか! 貴様、我を超えると言うのか……?!?!」
「ご名答〜。つまりはそういう事だ。さぁ、改めて終幕といこうか」
一歩、また一歩とサファイアへ近づいていく。
「チッ、何故解けない! この“拘束”、何かおかしいぞ!」
「いいや、これっぽっちもおかしくないさ。ただこの“拘束”に、“魔力吸収”を“付与”しているだけさ」
「“魔力吸収”に“付与”だって……ッ! 貴様、この短時間でどれだけ強くなったと言うのだ……!」
「ほんとに、数時間しか経ってないんだよな……。それでも、俺は強くなった。それが絶対の事実であり、お前はこの俺に勝つことは一生出来ないのだよ」
「クッ……」
俺はサファイアに手をかざす。
「最後に、言い残す事はないか」
「何もないさ」
竜の顔で歪な笑みを浮かべるサファイア。
「フッ、じゃあなサファイア。来世でまた会おう」
そして俺は、“魔刃”を放った。
俺の放った魔刃は5発。
2つは両腕を。
もう2つは両脚を。
―――そして残った1発は首を。
しかし、最後の1発。首に当たる直前の事だった。
「ただでは死なんさ! 我の数千年生きてきた叡智の結晶! 今ここに解放する! 魔王ルミナス! 未来永劫苦しむといいさ! 【やり直しの宝玉】よ!」
サファイアは、手に大きな水晶玉を取り出し、そしてそれを地面に叩きつけて粉々に砕いた。
―――そしてサファイアは首を跳ね飛ばされて死んだ。
「【やり直しの宝玉】……だと……?」
【支配の宝玉】なら俺が作らせたから分かる。だが【やり直しの宝玉】なんて聞いたことはない。
一体、どんな効果が……?
そう思った、矢先の事だった。
「グアァァァァァァァッ!」
全身に走る、電撃を喰らったかのような痛み。
「主様ッ!」
「アァァァァァァァァッ!」
それは止まらない。
ルインが心配そうに駆け寄ってくるが、ルインにはどうしようもない。
「グアッ!」
しばらくして、弾き飛ばされるような痛みで、長らく続いていた痛みが消え、そして同時に遥か後方へ吹き飛ばされた。
「一体……何だったというのだ……?」
痛みに耐え、そして同時に困惑もした。
俺はふと思い、ステータスを確認した。
そこには驚くべき変化があった。
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【ルミナス】
性別:男
種族:半神
職業:魔王
レベル:1
スキル:『支配』
:『転生』
技能:魔刃
支配……・ルイン : 夢婬魔
攻撃力:92
防御力:86
魔力:107
所持SP:500
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「何だ……これは……?」
まず、ステータスが全体的に弱くなっている。
と、言うかこの世界に来たときより弱くなっている。
スキルも技能もほぼ無くなっている。
残ったのは職業固有のスキル『支配』と何故か残っている『転生』の2つ。
技能も、俺の感情を奪った“破滅の願い”が消えて、所持SPも3000あったのが500になっている。
さらにスキルによって『支配』していた転生勇者たちが解放されている。
そして何より、“レベル”という概念が増えていた。
レベルは1。測定不能だったステータスも開示されている。
「一体、どういう事なんだ……?」
「主様、大丈夫ですか!?」
「ああ、なんとかな。それより、ここを脱出するぞ、ルイン。少し面倒な事になってしまった」
「面倒な事……? わ、分かりました! 行きましょう、着いてきてください!」
そうして俺はルインに引かれるまま、洞窟を抜け出た。
「ハァ……ハァ……だ、大丈夫ですか?」
「うむ……俺は大丈夫だ」
「それで、面倒な事って……?」
「覚悟して聞いてくれ」
その言葉で、会話の雰囲気が一気に変わった。
神妙な面持ちに変わり、ゴクリとつばを飲み込むルイン。
「俺、弱くなった。それもルインより」
「………………」
「具体的に言うと、スキルも技もステータスも、大体の物が無くなってしまった。要するに、レベル1の状態と言うやつだ」
「……………………えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」
ルインの叫び声が、森の中に響き渡った。
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《Tips》
ステータスについて
一般的な冒険者(前衛職)の場合(レベル20)
攻撃力 : 500前後
防御力 : 800前後
魔力 : 100前後
一般的な冒険者(後衛職)の場合(レベル20)
攻撃力 : 100前後
防御力 : 200前後
魔力 : 1000前後
転生勇者や高ランク帯の冒険者の場合(レベル50)
攻撃力 : 5000前後
防御力 : 7000前後
魔力 : 5000前後
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魔族の特徴について
魔族は一般的に「魔力が高く」、「遠距離型」に特化した種族である。
ただし中には攻撃力特化の脳筋もいるので注意が必要。
基本的には「スキル」を獲得することは無く、魔族はみな一律に『威力増加』のスキルを持って生まれてくる。
しかし稀にこれを持たずに生まれてくる魔族もおり、そういう魔族は「希少種」と呼ばれている。逆に「希少種」でない魔族は「常種」と呼ばれている。
『希少種』はスキルを後天的に獲得することができる代わりに、ステータスが全体的に低く、レベル上げが困難とされている。
常種の平均ステータス(レベル1)
攻撃力 : 100
防御力 : 500
魔力 : 5000
希少種の平均ステータス(レベル1)
攻撃力 : 70
防御力 : 100
魔力 : 200
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16:00に11話も投稿予定!
明日は【ブランノワール】を更新します!
チェックよろしくです!




