case.6 【忍耐】の美徳 天使ラグエル
※事前告知にあったタイトルに、勘違いがあったので修正です!
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「“剛剣”ッ!」
サタールが俺に斬りかかってきた。
俺はそれを何とか避けながら思案する。
今の状況はマズい。
正直、勝ち目はほぼゼロだ。
前衛職のエキスパートで、回復魔法も使える万能アタッカーのサタール。今は『鬼神化』を使っていて、攻撃や魔法、全ての威力が倍近く上がっている。
しかも、“魔断”という剣技を使うため、サタール相手に魔法は一切効かないだろう。
そして、“勇者”の白夜。コイツは、実際そこまで強くはない……のだが、回避行動が異常なまでに速くて中々攻撃が当たらないのだ。
回避しなくても、防御が素早いため、不意を突く以外にダメージが与えられるのかと不安になる。
それに、勇者固有スキル『魔王探査』がある為、俺が“潜影”のような気配や姿を隠す技を使ったところで、すぐに居場所がバレてしまうのだ。
さらに一番厄介なのが、“巫女”の月夜。コイツは、巫女固有スキル『未来予知』で俺の行動を先読みする事が出来るのだ。
―――俺も知らない、俺の行動を。
と、いう訳で俺は今からそんな三人の相手を、5分間乗り切らなればならない。
「“炎天”ッ!」
サタールは、俺お得意の魔法を放つ。
さらに、
「“追い風”っ!」
月夜が文字通り追い風を放ち、その勢いにのって今度は白夜が突進してきた。
しかしその間も、サタールの“炎天”は空から降り注ぐ。
「クッソ……“炎鎧”ッ!」
俺は“炎鎧”を使い、炎属性のダメージを軽減しつつ、サタールと白夜の二人を警戒していた。
「“双竜”ッ!!」
突進して来ていた白夜が、俺から奪い取った双剣に、龍属性を付与させ、そのまま十字状に斬りかかってくる。
さらに、
「“鬼流”ッ!!!」
サタールも、白夜に合わせて同時に攻撃してきた。
飛び上がって、そのまま回転しながらこちらへ来る。
「……ッ!!!」
どうする、どうするッ!?
横に避けるか? いや、それだとサタールがッ……。
なら……後ろかッ!!!
「ヘッ、これで―――」
俺が、後ろへステップを踏んだ、その瞬間だった。
「―――おにいちゃんっ! サタールさんっ! 後ろに飛ぶよっ!」
……ッ!!!
息を、飲むしかなかった。
何故なら、月夜のその言葉を受けて、サタールが急に回転をやめて、そのまま飛んできたからだ。
「サンキュー嬢ちゃんッ!」
それに、白夜もそのまま走る足を止めない。
「もらったぜェッ!」
気づいた時には、サタールが目の前に居た。
そしてそのまま、
「グァァァァッ!」
―――右肩から斜めに斬られてしまった。
傷口から血が噴き出ている。
痛みと、暗がる視界に苦しんでいると、今度は白夜が仕掛けてきた。
「ハァァァァァァッ!」
チッ……流石にそれは受けるわけにはいかねぇよな……?!
「……“潜影”ッ」
命からがらに影へと隠れる俺。
今、この間に『天魔』で回復しないと……。
俺は、傷口をスキルで癒やしながら再び思案する。
そろそろ、5分経過だ。これでサタールも退場して、少しは余裕が出来るか……?
「―――俺っちが回復する隙を、アンタに与えると思うかい?」
突如、そんなサタールの声がした。
まさか……アイツ、影の中にッ!?
俺は焦って、周囲を見回したが、サタールの影は何処にも無い。
……一体……何なんだ……?
「―――後ろだよ、アホ大将」
え……?
「ガ……ハッ!」
気づいた時には遅かった。
俺は、背後から剣で背中を貫通させられていた。
傷口が広がり、治療していた傷からは再び血がボタボタと流れ落ちる。
そのまま俺は、“潜影”の効果が終了して外へ出てしまう。
「さあ、兄貴。そろそろ降参してください」
白夜は倒れている俺を見下ろしながら、そう吐き捨てた。
チッ……3対1でイキりやがって……!
まだだ……まだ諦めないぞッ!
「さぁて、俺っちはここまでだ。お二人さん、後は自力で頑張りな?」
「はい……と、言ってももう勝ったような物ですが……」
「ヘッ、そいつァどうだかねェ。案外ウチの大将はしぶとい奴なんだ」
「え……それって……?」
サタールの言葉に、白夜は目を丸くして驚いていた。
俺は、スキルを使って超速で回復を進めながら、そのセリフを聞いていた。
フッ……サタールのヤツめ……まだ俺が戦えるって分かってるから、んなこと言えるんだな……?
いいぜ……やってやろうじゃねぇの!
俺は、傷口が塞がった時点で回復を終了させ、ゆっくりと立ち上がった。
「そ……んなっ! 兄貴……なんでまだ立ち上がれるんですかッ!」
「ハァ? んなもん気合だ気合。いいか? 言っとくがめちゃくちゃ痛えぞ? それも超が付くほどな」
実際、痛かった。
腹も脇腹も肩も背中も、めちゃくちゃ痛い。
スキルでできたのは、傷口を塞ぐだけ。
噴き出した血液は戻ってこないし、ましてや痛みなんて消えるわけがない。
「じゃあ、なんでッ!」
「―――それは、やらなくちゃいけない事はやらないと、だからだ」
俺は、そんな当たり前の事を言ってやった。
「え……?」
「親が、上司が、先輩が、先生が、どんなに嫌な奴でも、俺はハイハイ従って来たんだ。それがやらなくちゃいけない事だったから」
「やらなくちゃ……いけない事」
「今だってそうだ。俺はお前たちに、この世界での厳しさを教えようと思った。だが、俺の想像を遥かに超えて、お前たちは俺をここまで追い詰めた」
まさか、ハンデありとはいえ、二人のコンビネーションがここまで良くて、しかもそれで俺にダメージを与えるなんて、想像もしてなかった。
「だが、このままじゃ格好がつかないだろう? だから、少しだけ本気を出す。もちろん武器は使わない」
「でも、それで俺たちに勝てると……?」
「余裕さ。今までどんな事でも耐えて耐えて耐えて……耐えてきたんだ。知ってるか? 塵も積もればなんとやら、だ。ここからが本番だぜ? 覚悟しな」
俺は、少しズルいかもと思いながらも、両手に“魔剣”を生み出した。
「なっ……それはッ!」
「“魔剣”……まあ魔力を具現化した物を剣状にした物だから、コレはただの魔力だ」
「そんなッ!」
俺は、全身の痛みに耐えながら、そう言い切った。
済まないな、二人とも。
少し手を抜きすぎたようだ。
今から本気を出して、少しでも互角にしてやる!
「クハハ、それでは―――」
俺が、そう言いかけた時だった。
『良くぞ耐えました。新たなる神よ―――』
空から、突如として響いた声。
女性の柔らかい声で、その言葉を聞いていた俺は、すぐさまその言葉の“神”というのが俺の事を指しているのだと分かった。
▶おい、魔王。嫌な気配がするぞ……?
ハヌマーン……?
『実は、我も感じている。我ら大罪にとって、何かとてつもない危機が訪れているような……』
さらに俺の中でベルゼブブまでもが、厭な予感を感じ取っていた。
『認めましょう、貴方のその力。我ら“美徳”たる天使が、貴方を神として認めましょう―――』
すると、地下なのにも関わらず、太陽のような眩い光が訓練場を覆った。
「おい、誰だか知らないが……何を言っているのか分からないから、もっと分かりやすく言ってくれッ!」
光に向かってそう叫びながら、俺は皇兄妹にサタールたちの方へ行くようにジェスチャーを送った。
二人はそれを一瞬で理解して、移動を開始し始めた。
サタールとルインは皇兄妹を守るように前に立ち、武器を構えた。
『―――あら、敵対するつもりはないのだけれど』
「いいからまずは誰なのか名乗れよ」
いい加減不気味だ。
光から女性の声、そもそも地下なのに光。
それにさっき、美徳の天使って言ったか……?
『はあ、まあ良いでしょう。よーく聞きなさいね?』
『―――私の名前は、ラグエル。【忍耐】の徳を冠する至高なる天使よ』
ガバガバ設定許してクレメンス




