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さらば北海道

作者: 14

小樽駅から19:58発の、旭川発函館行 特急“北海”に乗り込む。真夏でも、北海道の日暮れは早い、すでに星空になっていた。

車内検札を終え、少し遅くなったが食堂車に向い夕食をとることにした。

食堂車は基本的に編成の真ん中あたりにあり、そして大概隣はグリーン車だ。揺れる車両を何両か進み、空いた席に着くと、すかさずウエートレスが注文を聞きに来た。そして先ほどまで検札をしていた車掌が、列車の揺れに時折よろめきながら通り過ぎて行った。立ち仕事に慣れているのか、ウエートレスの方が落ち着きながら厨房に戻って行った。

車窓の景色は、車内灯に照らされたクマザサが見える程度で、老体の80系特急気動車はエンジン音を唸らせている。

倶知安に付く頃には、食事を終え元の座席で、この旅の思い出を思い起こしていたが、いつのまにか眠ってしまった。

気がつくとすでに列車は、闇夜の大沼公園を駆けっていた。日中なら大沼、小沼の間を疾走し、列車の後方には駒ヶ岳がそびえているだろうが、今はただエンジン音だけが響き渡っていた。車内では、車掌が連絡船利用客に乗船名簿を手渡していた。グリーン船室利用者は、緑の用紙。一般は白色だ。

やがて、オルゴールの音色が聞こえ、函館到着のアナウンスが流れる。そして列車は左右にその長い体をくねらせながらホームに滑り込み、ブレーキノイズとともに停車。定刻の午後11時55分に到着した。扉が開くのが待ちきれない人々は、通路に列をなしている。

『はこだて~、はこだて~』駅アナウンスに聞き入る人もなく、列車のアイドリング音の中、皆足早に連絡船乗船口に向かう。

乗船名簿を渡し、青函連絡船に乗り込む。思わず立ち止まり振り返ろうとするが、人の流れのまま船内に吸い込まれて行く。座敷はすでに先客でいっぱいだ。しかし座席はまばらだった。

午前0時すぎ、船内に“蛍の光”が流れるころ、桟橋では銅鑼が打ち鳴らされ、出航の合図となる。汽笛が港内に響き渡り、岸壁と船の間の暗闇に浪間が見えはじめ“摩周丸”はゆっくりと桟橋から離れていく。

やがて、函館駅桟橋の信号灯が少しずつ小さくなり、函館駅の構内が…、函館の街の灯りが…、そして函館山が離れていくと、もう津軽海峡だ。

船内にもどり、郵便ポストを見つけた。旅の締めくくりに、友宛てに手紙を出すことにした。

余談だが、鉄道郵便存在していた当時、ここに投函すると“函館-青森間”という消印が押される。またホーム上にあるポストに投函すると、荷物列車に併合された郵便車が回収し、同様の押印がされる。

連絡船は4時間足らずで、青森港に入港する。すると、小鳥のさえずりが流れ青森駅桟橋接岸を知らせる。船内乗降口では、たくさんの客がタラップの取り付けを待ちわびている。そして、開口されると一目散に目的の列車に向かって走り出す。

青森駅には、昼間ロングランの大阪行特急“白鳥”と常磐線経由上野行きの特急“みちのく”が同じホーム停車している、また、隣のホームには東北本線経由の特急“はつかり2号”が発車時間を待っている。

午前4時50分、発車ベルの合図とともに、クリーム色地に赤のラインの485系“白鳥”とクリーム色地に青のラインの583系“みちのく”は、同時に発車し見事なコントラストをなしながら構内をしばらく並走した後、それぞれの目的地に向かって行く。


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