ビンとレベル
よいしょっ!5話です!
「ユキ、どうだ?似合うか?」
俺はユキに選んで貰った服を着て感想を聞いてみる。
「うん!似合ってる似合ってる!我ながら完璧なコーディネートですなぁ〜」
俺も鏡の所へ行き自分の格好を確認する。
「おぉ!自分で言うのもアレだけど似合いすぎだろ。ありがとうなユキ!」
そういうとユキはえへへと少し照れくさそうな顔をした。
「あれ?そういえば私まだあなたの名前聞いてないような…あなた名前は?」
俺は脱いだ制服を畳む手を止めて質問に答えた。
「あぁ、俺の名前はきの…ウゥン!俺はエイジ!」
あっぶな。名字を言ってしまうところだった。
「エイジ…か!珍しい名前だね!」
日本の名前と異世界の名前が違うのは当然のこと。
分かっていたのでそうだね!よく言われるよ!
と返しておいた。
てか、女の子に名前で呼ばれるのってもしかして初めてかもな。そう考えると顔が少し熱くなるのを感じた。
「あれ?そういえば、さっき仲間募集したばっかだけど、仲間出来たから募集しなくてもよくね?」
ユキの方を見ながらそう話すと
じゃあ受付に募集終了を頼みに行こう!
とユキが言うので俺は言われるがままに受付へと向かった。
受付の前に来て、俺はお姉さんに声をかける。
「すいません、仲間募集の紙を出してくれとお願いしたんですけど、さっき運命的出会いがあったので募集終了にしてもらえませんか?」
と受付のお姉さんに言うと苦笑いが返ってきた。
「エイジぃ?その運命的出会いってのは何?確かにそうだけど、誤解を生むでしょ?もっかい言い直そうか」
威圧的な声だったのでユキの方を見ることすら出来なかったが、はいと返事をして言い直した。
「えぇ…仲間がさっきできたので仲間募集を終了にしてもらってもよろしいでしょうか。」
かなりの棒読みで言い直したがユキはよろしいの一言を頂いた。
そして相変わらず苦笑いのお姉さんだが俺のくだらない掛け合いに付き合ってくれたのには感謝しかない。
「はい、分かりました。お仲間ができて良かったですね!ではこれはギルドからのささやかなお祝いの品です!どうぞお納めください。」
と言って俺に少し大きめの木箱を渡してくれた。
「なんですか?これ?」
と、反射的に質問したが
それは開けてからのお楽しみです!
と言ってニコッと笑顔を返された。
箱の中身が気になり2人がけテーブルに向かい合って座った。
「エイジ!早く開けようよ!!」
ユキはそう言って俺を急かす。
「分かってる分かってる!じゃあ、開けるぞ」
そう言って俺は木箱の蓋をパカっと取った。
「おぉ!」
俺とユキの声が重なった。
水色の液体が入っている綺麗な小瓶が中には入っていた。
「何これ?小瓶が4本あるけど…」
「えぇ。本当に何も知らないんだね、これは経験値ビンって言ってね、中の液体を飲むとレベルが絶対に1上がる優れものなんだよ!なかなか手に入らないんだから!」
とユキが説明してくれた。
説明してくれてる時のユキの興奮度から考えるとかなり良いものなのは間違いないだろう。
「へぇ、凄いな!じゃあ早速頂きますか?」
「うん!じゃあ2本ずつだね、はい、エイジ」
そう言って俺の前に小瓶を2本置いてくれた。
「おう!ありがと!」
一本手にとって蓋を開けた。
なんだろう。全然良い匂いしないし。むしろ不味そうまであるんだが。
俺は一回深呼吸をした。
「そ、それじゃあいきますか」
そうユキに聞くと嫌そうな顔でコクンと頷いた。
2人とも一気に飲み込んだ。
「まっず…」
流石に息が揃った。
なんだろう、漢方薬によく似た味だ。
とても不味い。
「うえ…なんだよこれ、不味すぎだろ?!」
「エイジ、落ち着いて。不味くても強くなれるの、お手軽に強くなれるんだよ。頑張ろう?」
「だな。お手軽なんだ、主婦の皆さんが大好きな"簡単"‘なんだよ」
そう自分に言い聞かせた。漢方薬程度の苦さでなにを言ってるんだと思うだろ?違うんだ!こいつは口の中からいつまでもいつまでも消えないんだ!苦さ継続なんだよっ…!
相当悶えていたのだろうか、ユキに大丈夫?と肩を叩かれた。
「あぁ、大丈夫だ。心の中で色々言ってただけ」
「そ、そう。ねぇ、そろそろ2本目飲も?一緒なら怖くないよ」
そう言って握り込んでいた右手にグリグリと瓶を押し込んできた。
「分かったから。せーので飲むぞ?」
またも嫌そうな顔で頷いてきた。
そして、せーのという俺の声に合わせて2本目も飲み干した。
そうすると俺とユキのカードが光ながら目の前まで浮いてくる。
「あ?どうしたんだ?」
苦味に耐えながらカードに目をやった。
「レベルアップだよ、この苦味の報酬」
と、ユキはカードに目もくれず机に突っ伏した。
俺は確認しようとカードを見ると確かにレベルの記載されているところの数字が増えているのが分かった。
「こうやってレベルが上がるわけねぇ」
「そうそう、そうやってエイジも強くなってくわけ。記載と更新が完了したらカードが落ちてくるから」
と、助言の為に一瞬顔を上げたが、不味ぅ…とまた突っ伏してしまった。
「なるほど、説明ありがとな!」
そういうと突っ伏したままユキはうーんと返事を返した。
ようやく苦味が引いてくるとムクッとユキは顔を上げて、立ち上がった。
「レベルも上がったわけだし、少し外でモンスターと戦わない?」
ユキがそう提案してきた。
「いいね!もうそろそろ俺も戦ってみたかったし!行こうか!」
「町だ、すっげぇ」
露店は勿論、喫茶店?みたいなのや、食事処も並んでいた。
雰囲気はよくある異世界アニメとかと同じような感じだな。
そんな事を思っているとユキが俺の服を引っ張る。
「何見惚れてるの?田舎者じゃないんだからさ。ここじゃモンスターもなーんにも出てこないから一回森まで行こう」
「おう!でも森ってどこにあるの?」
「うーんとねぇ1番大きい道を北に10キロ行った先にあるよ!」
「10キロ?!遠くない?」
そうユキに聞くと
「まぁね!でも5キロ行くと宿があるからそこで休んで、次の朝から森を目指そう!」
そうユキが言うので
「よし!ちゃっちゃと歩いてちゃっちゃと宿まで行こう!!」
「おー!!」
ついに冒険の幕開けだ
次回はサービス回(?)
お楽しみに!