事情とお願い
速くも2話です!
「そう、冒険者じゃ」
意味わからんことをこのおじいさんが言うので、俺は話を変えることにした。
「えっとおじいさんは誰ですか?」
そう質問するとおじいさんはムッとした表情になる。
「人に名を聞くときは自分から名乗るのが礼儀じゃないか小僧!」
俺は今この瞬間に気づいた事がある、それはこのおじいさん扱いが凄くめんどくさいという事である。
「えっと。俺は木ノ下英治と言います」
そう言うとおじいさんはいきなり自信満々な表情になり、すっと息を吸い込んでこの暗闇に響くぐらいの声の大きさを出す。
「わしの名はゲレンだ!この町、グリスリラのギルド、鮮明団のギルドリーダーをしている!ワァハッハッハッ!!」
うん、予想どうりめんどくさい人だった。と心の中で呟く。まぁとりあえず拍手でもしとくか。
それはもう、これ以上ないぐらいに手を叩いてやった。
「なるほど!あなたはギルドリーダーさんだったんですね!まぁさっき初めて見た時から大物な予感はしてたんですけどね!」
だいぶお世辞混じりの言葉をかけておいた。
でも、この人はそんなこと気づかなそうだ。
現に表情を自信満々から変えないのが物語っている。
「じゃろう?じゃろう?偉大なオーラが溢れているじゃろう?ワァハッハッハッ!!」
案の定だった。こんなによいしょに乗る人間がギルドリーダーで大丈夫なんだろうか。少し心配になる。
「いやーそれはもう!あなたが光を持ってこっちに向かってくる時から凄いオーラを感じてました!」
心の内を隠し、更によいしょしてみる。
「お前はわしの良さがわかっておるのう!決めた!」
どうやらおじいさんが何かを決めたらしい。
「何をお決めになられたのですか?」
ろくな事じゃないだろうと思ったが一応聞いてみる。
「おぬし、いや英治よ、聞いてほしい事があるんじゃ」
結構真面目なトーンで話し始めたのでこれは想定外だ。俺も少しかしこまる。
「は、はぁ。お聞きいたしましょう」
さっきとは打って変わり、顔まで真剣になった。
「実は先月の末に王が亡くなられてな、王が不在のままではいけないと言う話になり、ついこの間まで王を決める選挙が行われていたんじゃ、そして一週間前に王が決まったんじゃ……」
最後に変な間があったので俺が話すべきなのかと率直に感想を言った。
「なるほど、王が決まって良かったじゃないですか。」
ただ話は終わってなかったらしく、おじいさんはとても鋭い目つきで俺を見て、続けた。
「まだ終わっとらんわ、しっかり最後まで聞けい。その王は昔、この世を自分のものにしようとした最悪の人物、いわゆる魔王の子孫なんじゃよ」
「昔の話ならいいじゃないですか。それとも、今の王がその企みをまた実行しようとしているとでも言いたいんですか?」
適当に言ったのだが当たってたらしく、おっとゲレンさんは発する。
「そうじゃ、勘がいいな。なぜそう言い切れるかと言うと最近魔獣の数とダンジョンの数が急激にふえたんじゃよ」
「なぜ、それだけで王のせいということになるんですか?」
王のせいで魔物が増える理由は分からない。なのでこの質問をした。
「簡単な話じゃ、魔獣やダンジョンは昔、魔王がこの世界を征服する為に作ったからじゃ、そしてその魔獣やダンジョンを生成する方法を勇逸知っているのが、子孫である王だからじゃよ」
……。まぁ。なんとなくは理解できた。本当かどうかは分かんないが、それは確かに王のせいとも考えられる。てか、一般的にはそう考えるのだろう。多分。
「なるほど。で、それを聞いて俺はどうしろと?」
そう問いかけると少し困った顔をして、続けた。
「我らのギルドの中では王を討伐しようと計画を練っているんじゃが、圧倒的に戦力が足りないんじゃ。」
少し切ない顔を見せてきたおじいさん。
そんなのは気にせず質問を投げかける。
「ギルドは何人いるんですか?」
その質問におじいさんは即答した。
「500人」
……確実に戦力足りてるよね?むしろ王様涙目だよね?1人対500人って。
「それ、十分戦力足りてますよね?」
「だと思うじゃろ?だがな、王の前には7人の幹部が存在するんじゃ、しかも最近は冒険者になる人が少なくて若者が10人ぐらいで他が全員40歳を越しておるんじゃよ…」
それは確かに勝てないな。
幹部を倒し終わったところで王を倒せるぐらい戦力も気力も無いと考えられる。
「で、俺に冒険者になってくれないかと?」
「そうじゃ、なってはくれぬか?」
俺は考えた、どうせ嫌だって言っても日本には返してくれないんだろうし、第一、ここまで聞いておいて断るわけにはいかない。
そう考えた俺は決心の末、答えを出した。
「じゃあ分かりました、冒険者にはなりましょう!」
そういうとおじいさんは目をキラキラさせてこっちを見つめてくる。
「ですが、タダでとはいきません、僕はあなた方の戦力に速くなれるようにしたい、ですのでなんか特殊能力だったり、凄い武器だったり、なかなかなれない職業だったり、そういうものをください。そしたら冒険者になりましょう」
ここまでくるとおねだり通り越して図々しいだな。
若干心ではそう思った。
「お安い御用じゃ!では好きな職業を与える、それでいいか?」
おぉ!マジか!本当にくれるだなんて!
軽く抜けているところはあるが、気前はいいようだ。
「はい!では強い職業を教えてください!」
そう聞くとゲレンさんはうーんと、顎を親指と人差し指の間で挟み、考える。
「では、ソードマスターなんてどうだ?」
……ゲームなどでも聞かない職業だ。
「どういう職業なんですか?」
「ソードマスターはいわゆる剣士じゃ、でもただの剣士ではない!ソードマスターはレベル制限がある剣でもお構いなく使う事ができるという優れた職業じゃ!しかも加護により剣によるスピード低下をなくす事ができるんじゃ!どうじゃ?」
おぉ!そんなのチートじゃないか。魔法も使いたいところだがそこはぐっと堪えることにした。
「じゃあその職業でお願いします!」
「よしきた!じゃあこのカードを持って、なりたい職業をカードに言うんじゃ!」
そう言ってカードを渡してくれた。
「え、カードに?え、えっと、ソードマスター!」
そう言うとカードが光り出し俺の周りを魔方陣が現れ、俺の周りを回りだす。
「なんですかこれ?!」
あの時、教室の時とは違う魔方陣だが軽く動揺してしまった。
「それは英治の情報を集めているんじゃ、焦らず少し待てい! 」
変なところで切ってごめんなさい!でも次回がきになるでしょ?w