講義の時間
評価せんきゅーてすの
俺は目が覚めると知らない部屋にいた。なんかデジャヴな気もするが…まあ気にしないでおこう。俺はベッドに寝かされていた。上体を起こして周りをしげしげと眺める。広さはおおかた13畳といったところだろう。家具は机・ベッド……とずいぶん質素だ。他に家具は見当らない。
不意に、コンコンとノックがして、扉が開く。
「あ、叶人くん。やっと起きたんだねっ!」
ふと声がかかり、そちらをみると、アリスが立っていた。出会った時と服装は変わっており、青いパーカーに白いTシャツ、青いミニスカート、白い靴下という具合だった。相変わらず青が好きなようだ。そしてこの状況から、俺が意識を失ってからしばらく経っていることを推測する。
「おう、アリス。えっと…俺また気を失ったのか」
我ながら情けないことである。決まりが悪く苦笑いになってしまう。それとは裏腹にアリスは心配そうに顔を覗き込む。
「昨日は急に倒れちゃったから心配したんだよ?」
「あ、ああ、ちょっと体調が悪くって。わるかったな、いろいろと」
「ううんっ、無事で何よりだよっ」
そう言ってアリスはまた蔓延の笑みを向けてくる。俺は目を逸らす。逸らした先には小さな窓があり、そこから日の光が差し込んでいる。
「ここは…お前の家なのか?」
「そだよっ。あの後、ここに運んできたんだよ」
アリスは近くにあったイスに腰掛ける。
「この部屋はお客さんが来たときの部屋でね、空いてたからここに寝かせようってことになったんだぁ」
と、そこで不意に言葉をきり、何かを言いたそうに見てくる。あ、そうか…前の話の続きか。俺は苦笑いでうなづく。
「大丈夫だ。もう落ち着いてるし、流石にもう気絶しないさ」
そっか と相手もうなづき返す。
そして、少し間を空けて話し始めた。
俺がいるここは、俺の知ってる世界ではないらしい。俗にいう異世界というところなのだろう。アリスはここをもう1つの地球と言っていたが、ここはかなり事情が異なるみたいだ。
「えと、まず地面が浮いててー」
「ちょっとまて爆弾発言をサラッと流すな」
1,浮いてるらしい
説明を聞くと、この地球は二層に地面が分かれており、下層は地球本来の地面。俺もご存知、地表である。正式名は「グランデ」と言う。
そして上層は地球から数千メートル上空にある浮遊する大地。これを「スカイラ」というらしい。大陸並みの大きさの大地が5つあり、それぞれに人が住んでいる。スケールがもはや分からない。
「えーと、それで俺たちはそのスカイラってところにいるのか」
「うんっ、そゆこと」
「でもさ、下の人…グランデの人達に迷惑じゃないのか?日当たりとか…」
「んんと、それは大丈夫らしいよ。魔法があるから。」
2,魔法がある
この世界には魔法があるようだ。体内にある魔力とかいう力を使って、起こすことのではないような超常現象を引き起こす。なんかすごいな。ちょっと感動するよな。だいたい大陸並みの大地を浮かせて、さらにその影響を無くすとか、滅茶苦茶だな…
「私も使えるんだ!魔法」
それには本気で俺も驚いた。
「本当か、それはすごいな。俺も興味あるしまた教えてくれよ」
そう言うとアリスはぱあっと顔を輝かせて、
「うんっ!約束だよ!」と妙に嬉しそうだった。
「他にはなんかないか?」
「他にかぁ…後は小人さんや精霊さんとかかな?」
3,異種族の人がいる
小人・ヴァンパイア・エルフ・精霊・ドラゴンなどなどのいろんな種族がスカイラそれぞれの大陸を領地としているらしい。人間もエルフと同盟を結び、大陸を共有させてもらっているそうだ。その大陸こそが、昨日言っていた、アル・ミドル大陸なのだろう。
「へえ、アリスはドラゴンも見たことあるのか?」
「ううん、見たことないなぁ。竜さんって自分の大陸から出るのが嫌いなんだって」
「ふーん、そんなもんか」
そういうのは確かに会う機会も少ないんだろうな。俺たちで言う海外旅行みたいなもんなのかも知れないし。
「うん。ま、叶人君から聞いた話だと、違うところはこれくらいかな」
俺は一から教えてくれたアリスに感謝を伝える。
「ありがとうな、面倒だっただろ、こんなの」
「そんなことないよ!全っ然思ってないから!」
アリスの必死な否定に苦笑いになる。優しい子なんだろう。出会ってすぐの人間にこんなに甲斐甲斐しくしてくれる、とても、心から優しい……まあ、知らない奴をほいほい家に上げるとは、度胸があると言うか不用心と言うか…
「そんなことより、お腹減ってるでしょ?ママが朝ごはんの用意してるから。行こっか」
そんな俺の心中も知らずに、アリスはニコニコしながら立ち上がる。そう言うとアリスは俺の服の袖を引っ張り、部屋の外に連れ出した。
まだまだのんびり