アリス・マグノリア
気の利いた言葉も浮かんでこず、間の抜けた返事になる。そうだな、昔の人も見かけで判断するなって言ってたもんな。でも、なんかおかしいっていうか、なんだろう違和感は…そして今更ながら重要な事に気付く。
「えっと…日本語話せるのか?」
なんかふつうに日本語話しているが、この子、外国の人じゃなくてハーフなのか?そんな意図も伝わっていないようできょとんと首をかしげる。
「へ?当たり前でしょ?昔に公用語は日本語に統一するって決められたの、小さい子でも知ってるよ?」
……ちょっとよく分からないが、とりあえず後回しだ。
「…まあ後でいい。自己紹介まだだったな。俺は水瀬 叶人、よろしく」
手を差し出すと彼女は慌てて手を握り返す。両手でにぎり、大きく上下に振ってくる。
「あっ、ごめんね!私もまだ名前言ってなかったね。私はアリス!アリス・マグノリアっていうんだ。よろしく、えと…叶人くん!」
アリスは俺にニッコリ笑いかけた。名前からするとやはり外国人のようだ。俺はアリスに最も疑問に思っていることを尋ねる。
「あの…アリスだったか?ここっていったいどこなんだ?」
その言葉にアリスは驚いたような顔をする。
「どこって…ここはアル・ミドル大陸のミーニアってとこだけど…」
それを聞いて俺は怪訝な顔をする。アル・ミドル大陸なんて聞いたことが無い。というかそんな国あるのだろうか。
「知らない大陸だな。ヨーロッパとかその辺りなのか?」
その質問に、アリスは驚いた表情になる。
「違うよ!?ヨーロッパは地表の大陸だよ!アル・ミドルは浮遊大陸だからっ」
アリスの言うことが理解できずに眉をひそめる。が、それからは考えこむように黙り込んで腕組みをする。
「お、おいーーー」
「ねぇ、叶人くんってもしかして違う世界から来たの?」
唐突にそんなことを聞いてきた。思わず目が点になる。
「…は?どういうことだ?」
質問の意味が理解できなかった。違う世界?どういうことなのだろうか。何故か背中から少し冷や汗が流れる。アリスは少し困ったように微笑んで、
「うーん、やっぱりかぁ」
自己完結して考え込んでいるアリスに、俺は顔を顰める。
「なんだよ、思わせぶりな」
俺の不貞腐れた態度に、ゴメンゴメンと笑いながら頭をかく。なんってゆーのかな といい、それからアリスは急に真面目な顔をして、
「たぶん、ここは叶人くんの知ってる世界じゃないよ」
とても真摯な目で見つめてくる。これはあれだ、フラグというやつだ。うわー、嫌な予感しかしない。予感はそれは見事に的中して、
「ここは「ディフィルド」。叶人くんのいるとことは全く違う、もう1つの地球なんだ」
なんだろう、俺の脳ではもう言葉を認識するのが無理になってきたようだ。いや、嘘だ。本当は理解しているのだ。それを理解したくないだけなのだ。俺は、直感的に、分かってしまった。この子は、嘘をつく子ではないと。俺は、本当にーーー
その事実に頭の許容範囲内を振り切ってしまった俺は、また意識を失った。