突然の来客
するとアリスと既に起きていたエールがまだ部屋に入らず、廊下で覗き込んでいるのがみえた。
「どうしたんだ?」
声をかけると振り向いて手招きする。そちらにいくとヒソヒソと、
(なんかね、知らない人がパパとママと話してるんだ)
(知らない人?)
そう尋ねて、おれも中を覗く。LDKの広い部屋の中で揃ってリビングにいた。ソファーには確かに見たことのないやつが座っていた。こちらからは後ろを向いていてうまく見えない。その向かいに座っているレスターさんとサラさんの表情はなぜか緊張して張り詰めたような顔をしていた。
「そ、それで、あのリーフメトラの子供に関しては今日中に輸送していただけるのですね?」
レスターさんが口を開く。
「おうぅ、午後には輸送準備も完了できるぜ。安心しな、きっちし送り届けてやっからよぉ」
そいつは、かなり口を悪い話し方をしていた。声のからすると若い男性だろうか。
「んで、さっきの続きだが…」
「で、ですから、その話はさっき叶人君がまだーーー」
「だから、規則だっつってんだろーが、オレはんなこたぁどーでもいいが、破ると後で上がうるせぇんでな。ま、これも仕事でよぉ。悪く思うな」
なんのことで揉めているかは知らないが、彼があの竜をどうにかしてくれるらしい。それにしても態度が悪いな…
(もう、パパとママにあんなこと言ってて許せない!)
横でアリスがそう呟いた。そしてオレが止める間もなく、そのまま部屋の中に入っていく。そして、
「ねえ!なんでそんなに怖い話し方をするのさ!パパとママに謝ってよ!」
その男の前にいって強く激昂する。突然のことに、その場の3人はポカーンとしている。いや、まあそうなるだろうけど。サラさんがハッとしてアリスに注意する。
「ダメじゃない、この方は高名な評議会の方でーーー」
「そんなの知らないもん!ねえ、早く謝ってよ!」
とその男の肩を掴んで揺さぶっている。仕方ないので俺も部屋に入り、アリスをとめる。
「おい、とりあえず落ち着けよ。まだ途中までしか話聞いてないんだろ?怒るのはそれからだ」
そういいながらも、俺はその訪問者を観察する。
身長は170cm後半、ボサボサの金髪頭。目つきの悪い威圧感のある目をもっている。
白い何かの軍服のようなものを着ており、上着を肩にかけ、その間から黒いインナーをきて腕を組んでいるのがみえた。
が、そんなことより、一際印象的だったのは、彼の目は左右の目の色が違ったことだった。
右目は鮮やかなブラウン、左目は深いダークブルーと言う異色の容姿をしていたのだ。
話には聞いたことはあるが、オッドアイと言うものらしい。
「んー!もう、わかったよ……」
アリスは不満げだったが渋々、という感じで金髪男から離れる。レスターさんがすかさず頭を下げる。
「僕達の娘がとんだご無礼をはたらき、申し訳ございません」
そいつはまだアリスをみて驚愕していたが、そちらもやがて落ち着きを取り戻す。
「…いや、オレも悪かったなぁ。ちったぁ、度が過ぎたかもしれねぇ」
そして、その男は静かにこう言った。
「オレは五大陸魔術評議会特務部アレク・ライトニング=サンダース、あのクソ蛇と今回の件で関わったそこの黒髪・水瀬叶人、レスター・マグノリアの娘・アリス・マグノリアには評議会まで同行してもらうぜ」