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ウタガミ  作者: らいとぱ
1章「そしてようやくオーバーチュア」
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結局と行方

  竜は、ものすごい音を立てて盛大に倒れ、地面が少し揺れた。短剣であの巨体には、浅い傷しかつけれなかったし、急所に攻撃を加えたわけではないので、死ぬことはないだろう。

 終わったのだ…ようやく緊張から解かれた俺は深く息を吐きだす。

 と、同時に、みなぎっていた不思議な力も抜けていくのを感じ取った。もっていた短剣をみると、これも少しずつ光の粒子になって飛散していき、やがて跡形もなく消えていった。

 途端にどっと疲れが押し寄せてきて、思わずへたり込む。

 一体全体、あれは何だったのだろうか。あの人物がさっきの力を与えてくれたとみて間違いないだろうが、方法も目的も全く分からない。謎だらけで意味が不明だ。

 と、向こうの遠くから人の声が聞こえてくる。アリスが呼んできてくれたのか。少し遅かったが助かった。ここから一歩も動ける気がしなかったからだ。

 俺はその声にむかって精一杯声を張り上げたーーー






 それから数日が過ぎた。ベッドの上で目を覚ます。寝起きで少し倦怠感もあるがのそのそと着替え始める。それが終わると部屋を出る。すると、アリスに出くわす。まだ寝癖をつけえアクビをしており、彼女もたった今起きたみたいだった。こちらに気づくとすぐに笑顔になる。


「叶人くん、おはよう!もうすっかり元気だね!」


「ああ、もともと傷もなかったからな。ただ大事をとっていただけだったし、もう大丈夫そうだ」


 それまで安静にしているようにアリスのお父さんレスターさんに言われていたのだが、ついに許可がおりてこうして日常に戻れている。

 あの後、俺はアリス一家に家へ担ぎ込まれ、とても手厚く看病され(ただ疲れただけなのだったが)、その次の日には質問攻めにされた。なぜ森から来たのか、竜にあった経緯、その後どうやって竜から自分の命を守ったのかと、知っている限り正直に話した。

 あの不思議な体験についても聞いてみたが、みんな知らないようだった。また短剣をだせるか試したものの、その後は全くでることはなかった。

 ちなみに、あの緑の竜は身動きがとれないように縛ったらしく、後から来る専門の人に任せておいたそうで、この2,3日で手配しているらしい。

 とにかく、こうしてまた平和な日常に戻ってこられたわけだ。久しぶりにベットから抜けだしたからか、のびが心地よい。


「あ、あのね…」


 不意にアリスが切り出す。


「ん?どうしたんだ?」


 俺が視線をむけると、少しアリスは落ち込んでいるように目を伏せていた。


「今回は無事でよかったけど、ホントだったら叶人くん、1人だったら死んじゃったかもなんだよ…」


「いや、別に俺は死ぬ気なんてなかったけどーーー」


「そーゆーことじゃないの!」


 突然大きい声を出したアリスに驚く。


「私がいいたいのはね、1人で全部頑張ろうとしないでってことなんだよ。私もいるもん、叶人くんは1人じゃない。2人でやればもっとうまくやれたかもしんないし、叶人くんだけ傷ついてるのなんてみたくないよ…」


 この深刻な雰囲気に耐えられない俺はおどけてみせる。


「大丈夫だって。ほら、あんあに怪我していたけどあの後ーーー」


「叶人くん……」


「…」


「次は私を頼ってね?」


「……ああ」


「ホントに?」


「約束するさ」


「うん、約束ね?」


 俺が頷くとようやくアリスにも笑顔が戻る。


「よし、じゃあいこっか。寝坊しちゃったから、きっともう朝ごはんできてるよ!」


 そう言って元気に階段を駆け下りていく。頼ってほしい、か。でもな、もう俺はお前に頼りっぱなしなんだ、アリス。もし森でアリスに出会っていなかったら、全然違う人生になっていた気がするんだ。お前には他愛のないことかもしれないが、俺にとってはとても重要なんだ……

 みんなをまたせるのも悪いので、ここで切り上げて俺も1階に降りていく。

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