翡翠の悪魔
「お、おい。この道で本当に合っているのか?」
「もう、何年ここ通ってきたと思ってるの?私にどーーんと任せときなさーいっ!」
「本当かよ………」
「ほ、ホントだよーっ!!!」
アリスの言っていた近道とは、森だった。家と街の間に直線的にあり、森を突っ切れば確かに最短ルートでいけるが…とにかく暗い。足元が見えず、何度も転びそうになった。月明かりはあるがそれだけでは厳しい状況だ。
「とりあえず、何か魔法で火は出せないか?ここを歩くには暗すぎる」
そう指摘すると、
「あ、確かにそだねー。うん、使えるけどちょっと待っててっ」
アリス手に持っていた荷物をまとめ、もう片方の手に火を灯す。
そのおかげで周りの木々が照らされ、大分視界がよくなった。
「お、ありがとう。これでましになったよ」
「えへへっ、どーいたしまして」
そして、また歩き始める。歩いてしばらくして、ある事に気付く。この森は俺がこの世界で最初に目覚めた森だ。
暗くて分かりにくかったが、間違いない。見覚えのある場所である。こんな近くだったのか。まあ、アリスが俺を運べられる距離を考えると妥当か。
途中まで行くと少し開けた道のような場所に出た。さっきよりは大分歩きやすい。
「あとどのくらいなんだ?」
「えとね…多分だけど20分くらいだと思うよっ」
20分か…遠いような遠くないような微妙なところ。と思っていたところだったのだが。
何かが前にあって、行き止まりのようだ。暗くてよく見えないが、2mほどの岩で周りが塞がっている。灰色のザラザラしていそうな変な岩だ。
「なあ、ここで本当に道は正しいんだよな?」
「あ、あれ?おっかしいなぁ…こんな岩あったっけ?」
不思議そうに大岩の近くに寄る。そしてペタッと手で触ったアリスが小さく飛び上がる。
「ひゃっっ!!!??」
「お、おい。どうした?」
「か、かか叶人くん、ここ、こここれ岩何かじゃなくてね……」
曖昧な言葉に眉をひそめて、聞き返そうとした時、
感じた
とてつもない殺気が上から降りかかる。普通の高校生には経験しえないことだ。悪意そのものだ。グルルルル……と頭上から音がし、その音に驚愕して一瞬凍りつく。アリスが触っていたのは岩などではなかった。それは、巨大な生物の腹だった。ゆっくりと首だけを音の元へ振り返ってみる。それは、体中が綺麗な翡翠色の鱗でびっしり覆われ、エメラルドのような目がギラギラと光輝きていた。