創作メモ:鳥と死と霊魂。
本当は活動報告向きかな、と思うチラシ裏記事。 某所感想欄の3倍マニアック
ほとんどネタ蘊蓄&愚痴話、長文乙ですので苦手な人はスルー推奨デス。
最近ちょっと、自分の持っていた妄想ネタを文章化しようとポチポチしていたのです。まぁ、いじっっているうちドツボにハマってにっちもさっちもならなくなりましたが。
題名:風鳥娼妓
あらすじ(というか設定)
その魔物は色街の間で、“道具”として使われるほどに美しき人の姿をもちながら、畜生に近き魔性と人はいう。
買う者達をゲテ喰いと蔑む向きはあれど、呵責あとくされなく責め捨てられると需要は高く、まま、冒険者や狩人に対し生け捕りの依頼がある。
依頼を請けた狩人は餌を使い魔性を寄せて、罠や投げ縄、投網で地に落とす。翼を封じられたこの妖鳥を捉えることは屈強な男どもにとって小娘を組みふせるが如し。
唯一気をつけるべきは、餌である腐肉に穢れた爪脚、それを知る狩人たちは人に似ぬその部位を、不要部として切り落とし、依頼主へと引き渡す。
して、娼館に関わる者たちは、この魔性を風鳥と呼ぶ。遠き異国の密林に棲むという脚無き鳥になぞらえて。
こんなんで。
その時の、調べものだなんだりから連鎖して、考察モドキがどこまでも走ったものでそのかけらを挙げてみようと埋めネタにしてた。本来は活動報告向けかなぁと思いながら。
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Harpuia:複数形でHarpuiai、英語だとHarpy。名前の由来は“掠め取るもの”。
元ネタはギリシア神話、クレタ島にて罪を犯したどこぞの王子を苦しめるために姉妹数柱で遣わされ、彼が食事を取ろうとするたびに現れては食料を奪い喰い荒し汚物で汚したりといった悪さを繰り返し、最後は退治されるか追い払われるかといった御役柄。退治されるべき怪物として描かれてはおりますが、その血筋は結構なものでございまして、神話の主神の伝令役を務める虹の神、Irusと両親を同じくする海神の系譜だそうでございます。
さて、そんな存在が最近のファンタジー創作ものにおいてどのような扱いを受けているかと申しますと……
原典通り退治されるべき怪物、魔物扱いをされていることが大抵。時折、人間に溶け込む存在としてえがかれることもありますが、傾向としてはやはりモンスターよりでしょう。あまり高位な幻想としては扱われない傾向がありますネ。
そしてその姿は、正直、一概には言えないといいました所。原典に由来し、顔や胸にかけての女性要素と翼と言う鳥要素を持ち合わせて描写されることが多いのですが、その程度の情報ではとても纏められない現状。まぁ、残されている神話時代の壺絵を見ても、女性の顔を持つ鳥~翼の生えた女性まで幅が広くはあるのですが。
思い当たるだけでも、アイテムを盗む変な怪鳥、老婆の顔持つ不潔な鳥、腕が翼になった美女、背中に羽のついた音痴な女性と取りとめもなく知能や生態も様々々。
登場させるのであればその形態や生態をぜひつっこんで描いて魔物でございます。 なお、トーラの個人的嗜好としては人体部はべっぴんさんだけど腰から下は骨格から鳥な姿であってほしい。尾羽は標準装備!膝は曲がった状態で固定、高踵(逆間接)蹴爪が後ろ向いた趾行性!!もちろん前肢も翼状で!!小翼羽が爪指になってるくらいは許す!!げふんげふ
それで、ですね、このハルピュイア、一説には神話形成期以前はまた別の性質を持っていたのではないかという考察も存在するのだとか。
一つは風の精霊。ギリシア神話でのハルピュイアイは幾人かの姉妹で登場するのですが、彼女たちに与えられた名前を個別にみると疾風や嵐に由来する・あるいは関係するような名称なのだそう。あぁそう言えばアンデルセンの“人魚姫”は“人魚”から“風の精”へと変わったわけで、中世以後人魚とされたサイレンが古代ギリシア時代には外見上ハルピュイアと見分きにくいことを―― 話が超それました。
改めまして、もう一つの性質ですが、“死者の魂を攫うもの・運ぶもの”。伝承地から発掘される遺物には人を攫う鳥女の姿が描かれているものがあり、一緒に描かれているものからそのような類推が出来るのだとか……。生死に関する芸術か考古学系の本で読んだ気がするうろ覚えの知識(本稿執筆中オデュッセイアにこの記述があるらしいとの情報ゲット)ですが、話を広げるのであれば此処かからだと電波。
まず想像が至りましたのは北欧神話の戦乙女“ワルキューレ/バルキリー”。その名称には“死者を運ぶもの”という意味合いがあり、戦で死んだ勇士の魂をどう見ても修羅道な天国(?)ヴァルハラへと導く(拉致する?)御役目を担う神の御使いにございます。うむ、共通点、
で、そんなヴァルキューレさんのファンタジー作品におけるお姿と言えば羽飾りのついた兜、時にはその背に翼を背負っていることもままあり、これはやっぱり鳥と関係あるのかな、と調べてみれば案の定。ちらほら“鳥の姿で”死者の魂を迎えに来るという伝承の情報が。中には戦場の死体を漁るワタリガラスがワルキューレの原型という説もあり、鳥葬あたりへと思考が逸りそうにもなつてみたり。……モリガン(ケルト)もやっぱ同源なのでしょうかねぇ。
神霊についての伝承など容易に混淆改変なされるもの、偶然の類似かもしれませんが、ここは、その起源の一筋を共有していたら、などと想像に胸を膨らませ。
もしかしたら、極楽に住まい美しき声で仏の道を説きを導くという迦陵頻伽なども死後世界にて魂を成仏へ導く鳥ということで関連する可能性も…… と、さすがに可能性薄いかとおもいつ自分の作品内だけならばとわくわく。
魂を肉体ごと攫う、とすれば割とまま見つけられそうなな気がしますが、女怪的要素もちでぱっと思い付けたのは姑獲鳥(天帝遊女)くらい?あれま。
そういえば姑獲鳥と白鳥の王子は逆ではあるが“着物”が鳥⇔人のキーになるのは同じなのだなぁ、とふと脱線。
えと、さてまぁ、それはよしといたしまして、死者から魂を掠め取る鳥の姿を死者の魂が鳥に姿を変えて肉体から飛び立ったと誤認、というか同じものとした、と考えてみると、つなげられる範囲はもっと広がります。古代エジプトでは死後人の体から霊魂の類はバーとカーという鳥の姿で飛び立つと間がられていました。本邦の神話上の英雄、ヤマトタケルは白鳥へと変じ、浦島太郎は老人を化したのち鶴へと変じました。殺された瓜子姫(東日本)は鳥に変じて自らの仇を討ち、弔わねぬ死骸は以津真天や陰摩羅鬼に変じ、産褥で亡くなった女は青鷺の火となりウグメやウバメ、間引きされた子はミミズクにやどってたたりもっけで各地に残る小鳥前生譚系列……て、思いつくものの大半が日本産ってどうなのん(苦笑)
あ、某悪魔召喚師のアイドル(?)モー・ショボーも愛を知らずに亡くなった少女の変じた凶鳥という設定。あのデザイン秀逸ですね、金子絵師ぃ……一応、頭翼はシ○ーヌという前例があるにはあるが…… というかモー・ショボーの情報ってメガ○ン経由の情報しか出回っていなくないか? モンゴルの妖怪について調べてみたけどたどりつけなかった覚えがあるのだよなぁ。民話が残っているのなら読んでみたいものなのだけれど……。
……まぁ、こんなことをいくら考えようと、構想を物語としてちゃんと形作れなければ結局はペケなのですが。 後半の思考暴走部とか全く関係ないですよはい。
ちなみこののち、別件にて吸血鬼についての資料を本棚からパラり(吸血鬼伝説.著:栗原成郎)したところ、ハルピュイアチックな吸血鬼の絵(E・ムンク1894)ですとか、ヴァンパイアの語源が“鳥に似て非なるも”説ですとか、鳥の姿で現れる吸血鬼ですとか関連していそうな情報が色々と載っておって、かなり思考が暴走したのでございます。 が、しかしそれはまた別の、吸血鬼話として語りたいかな、と思います。結構後半部と関連引けそうなのですが、さすがにそれは脱線しすぎと方向に行きそうではい。鳥でまとめようと思ったのに猫魂や飛頭蛮についてまで書きたくなるという……(汗)
……跡形ない位に話は広がるかとは思うのですが、がっつり著作権が残っていそうな底本がある小説(?)って、なろう的にはどうなのだろう(汗)