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There persons and a dog   作者: 浜崎汪《はまさきめーる》
8/17

~宇宙へ~そして、朝焼け・・・

サクラは戦死した夫の政夫と夢のようなひと時を過ごす。そのとき、サクラをいざなうものは・・・

そして、就活のため慶子と距離を置いていた英樹との再会。この物語の一つの山場にさしかかる。

花火の音はちいさくなっていく小さくなっていく。宵闇の中、政夫はサクラに言った。

「お前には、本当に苦労をかけたよ。しかし、正志も雅彦も立派に育っている。お前のお陰だ。」

そして、サクラの顔をじっと見つめた。

「あなた、これからもずっとここで一緒に暮らせるのよね。私はずっとあなたを待ってたのよ。」

サクラは政夫の腕に手を添えた。政夫の手の温もりが本当にそこに存在した。




二人の前に、パッと白い光が差しシャッと何かが落ちてきた。そして、大きな物体が、

「ワーン」

と、サクラに呼び掛けた。

犬の形をした宇宙船だ。

「未来へ行かれるかた、お急ぎください。」

そして、中から慶子と豊治が呼んでいる。

「サクラさん早く。」

サクラは政夫を見た。

「あなた!早く!」

政夫は言う。

「俺はそれには乗れない。それは生きているもののみ乗れる宇宙船だ。サクラはそんなには長くはないが、まだ生きていける。そして、残った人生で出来ることがある。そして、するべきことがある。俺は、いつでもお前の心の中にいるから。」

そして、闇の方へ歩いて行き、後ろ姿はどんどん小さくなっていく。

「サクラさん早く。」

サクラは宇宙船に乗った。

宇宙船の搭乗口のドアが閉まる。

そして、慶子がアナウンスをする。

「本日は、宇宙船フラワーフィールドにご搭乗くださいまして誠に有難うございます。操縦士は前田豊治、副操縦士は下野サクラ、そして、客室乗務員を勤めさせていただきます木下慶子でございます。ただ今、この宇宙船は福岡上空1キロメートルのところにございます。間もなく大気圏を出ますので、皆様安全ベルトを着用ください。」

慶子とサクラは乗客の安全ベルトを点検した。

「それでは、大気圏に突入します。」

ものすごい音とともにまばゆい光が差し、ふわっと体が軽くなった。眼下には透き通った青の地球が、小さく小さくなっていく。


慶子は、またマイクを持った。

「ただ今の時刻は21時3分です。22時に天王星付近を通りまして、0時にアンドロメダ星雲、帰りは最速で銀河系を突き抜け、月にて機内食を召し上がり、地球に戻ります。」


宇宙船フラワーフィールドは、無限に広がる宇宙を、そして、たくさんの塵の中を進んで進んで、もう銀河のはてまで来てしまった。そこへ、

ウィーン ウィーン ウィーン

と警報音が鳴った。

「宇宙船外部アンテナに異常が見られます。何者かが、アンテナを破損させています。」

豊治がモニターでアンテナ付近を見ると、タコのような真っ黒な宇宙人が何やら金属を集めている様子だ。

豊治、サクラ、慶子は手早く身支度をし宇宙船の外に出た。

「その、アンテナをどうするの?」

慶子は、宇宙人に言った。

「これか?これを集めてなー携帯電話を作って売るんだよ。私の星でも認知症の高齢者の家族には人気で金になるからねー。」

慶子は言う。

「それがないと、私たちは地球へ帰れません。やめてください。」

「経営者たるもの、人の言い分を聞いては仕事にならん。返さんぞー(笑)」

「それなら、これは戦うしかない。」

豊治の指令で、タコの形の宇宙人にレーザー光線を放った。

宇宙人は、円盤に乗ってブラックホールの中へ逃げていった。


挿絵(By みてみん)


宇宙船に戻った3人は話した。

「あれが、ブラックベーダーだったんだ!」

「噂よりずっと間抜けな感じがしたね。」

「でも、旅人のアンテナを取って携帯電話を作るとか許せない。」

「あいつは、あくどい商売するって有名だからな。」

と、話は盛り上がった。


宇宙船は、最速で銀河鉄道を追い越し、人工衛星はやぶさとすれ違い、星ぼしの表情をチラチラと見ながら太陽系に戻ってきた。ちょうど冥王星付近には、向日の世界との境が見えた。サクラは政夫を呼んだ。

「あなた」

すると、向こうの世界の声が聞こえてきたのである。慶子も、子どもの頃亡くなった祖母を呼んだ。やはり、向こうの声がする。慶子は豊治のほうを見て言う。

「不思議ですね。」

豊治は答える。

「わしは大学で物理を勉強したが、世の中に不思議なことなどないと思っていた。今だって科学で証明されないことはないと思っている。だが、科学で証明されていないことはたくさんあるんだ。わしはな、神とか幽霊などいるなら見てみたいと思っている。捕まえて正体を暴いてやりたいよ。だが、いるという証拠はない。いないという証拠もない。こんな風にわからないときには、そのことを考えるのを棚上げして避けて通る癖があるんた。」

「えー!言っていることがわからない。」

慶子が言う。


その日の午後、慶子は英樹の家にいた。

「久しぶりだな。」

「うん。内定おめでとう。」

「ありがとう、なかなか苦戦してな。」

英樹は嬉しそうだ。

「俺は、法学部で勉強して何ができるだろうと考えてた。就活していて、マスコミはいいなと思った。社会を批判的に見て、皆に伝えることで社会を良くすることができると思うんだ。」

英樹は、慶子に話しまくった。慶子は黙ってうなずいていた。窓からは西日が差し込む。5時を回った。英樹が慶子に言う。

「今日、泊まっていけ。」

「え?」

慶子は驚く。

「今日は、親父とお袋は親戚のところに泊まる。慶子と一緒にいたいんだ。」

慶子の心に迷いが生じた。

慶子が社会人一年生のとき、英樹は慶子の友達の久美が英樹と同じ大学の自治会の活動をし、悩みを相談し、一晩英樹と過ごしてしまったときのことを思い出してしまった。もちろん英樹と久美の間には何もなかったのだが。そして、今度の就活のときの「距離を置こう」という言葉もまた慶子を迷わせた。

しかし、一方で高校のときに出会った実習生の杉谷先生の話を思い出した。

「あのとき付いていってたら、違った人生もあったと思う。」

英さんなら大丈夫。



慶子はこくりと頷いた。


「もしもし、お母さん。今日は、友達と遅くまで遊ぶから泊まりになる。」

「そう、あんたももう大人だからね。気を付けてね。」


二人の世界。慶子の手作りのご飯。そして朝日を見る。

朝焼けの中、英樹は慶子の顔を覗いた。

「慶子、綺麗だよ。」

確かに、慶子は綺麗になっていた。

「山笠のときだったかな。一緒に朝日を見たの。」

「うん。」

慶子はにっこりと笑った。

「慶子に、話があるんだ。」



次月へ続く


ここは、皆様の想像にお任せしたいところです###

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