表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
There persons and a dog   作者: 浜崎汪《はまさきめーる》
13/17

第13話 雪道を進むように

春はまだまだ先

雪景色の中を進んでいくように

静かに 静かに

ゆっくり ゆっくり



挿絵(By みてみん)


 帰りは、地下鉄のダイヤも乱れ帰宅困難となり、慶子は家まで三時間かけて歩いて帰った。空気は冷え込んでいたが、寒さすら感じられず、しかし、吐く息は白かった。果して、家にたどり着いた。見ることすら忘れていたスマホを覗き、凍りついていたものが溶け、温かくなっていった。



英樹からのラインに気づいたのである。


おはようございます☆自信を持って頑張ってきてね。


慶子は思わず英樹に電話した。

そして、 英樹が電話に出た。


「どうだった?」


「なんとか、全部解答できた」


「そうか、きっと受かってるな。頑張ってたからな。」


「受かったら・・・」



 受かったら、英樹と一緒に旅に出たい と、言いたかったのだが・・・



「英樹は、どう?忙しいの?」


「3月に入ったら東京だ。会社のほうも早く社員を育てたいみたいで。卒業式には戻ってくるよ。」


「そうか、大変だね。体を壊さないように気をつけてね。」


「近いうちに会えるかな・・・慶子の顔をよく見ておきたいよ。」


 やはり、英樹が好き。英樹と話すと温かくなる。英樹に会いたい。英樹についていきたい。慶子はそう思ったのだ。



 翌日、慶子はフラワーフィールドカンパニーにいた。


「慶子ちゃん、今日は休むかと思ったよ。あはは。」


「試験で疲れて雪も積もっているから、きっと来ないんじゃないかって、豊治さんと話していたところだったのさ。」


豊治とサクラが茶化すと、


「失礼しちゃうわね。わたしがここを病気で休んだことは一度もないでしょう?雪が50センチ積もっても歩いてくるに決まってるでしょう。」


慶子は言った。


「ははは、慶子ちゃんは気丈だからね。わしらもそれで元気になるんだよ。慶子ちゃんの彼氏がうらやましいよ。」


豊治は笑った。そんな豊治に変化があった。


豊治の左手が上がらない。慶子はそれに気づき、看護職に報告した。



慶子の発見のお陰で、豊治はまた救われることになるのである。


一方、ここはF1333星のオメガリオンアルファの事務所である。

挿絵(By みてみん)

オメガリオンアルファは、器用な生物で同時に50ものことをこなすことができる。今日も、同時にパソコンで事務処理をし、大好物のハンバーガーを食べ、コーヒーを入れ、アイドルグループ茶目っこクラブの高橋まみこのDVDを観て、読書もし、コーヒーを淹れている。ブラックベイダーの報告を聞き、上機嫌になっている。

「そうか、フラワーフィールドカンパニーのグループに潜り込むことに成功したか。それは良かった。そうなると、あとはそこの経営主体となるように動いていくことだな。」

「はい。」

「これで、わがアルファグループも1億規模になる!ハッハッハ」

「それで、有給の件ですが・・・五月に家族旅行を計画しておりまして・・・」

ボスの顔を伺いながら話すブラックベイダーに、

「そんなの勝手に取るがよい。世の中金だ!金さえ儲かればワシは何も言わんぞ!」

と、ニヤリと笑って言う。

「そうですか!ありがとうございます。」

ブラックベイダーは事務所を出て電話をかける。

「ピーチ、ゴールデンウイークは家族旅行だ!今から予約するぞ。早くしないと満席になってしまう。」

「わかったわ。今から宿と交通機関を手配する。」

電話の向こうでは子どもたちの声がする。

「やったー」

「旅行だ!旅行だ!」

マンションの外では雪が積もり、静かに静かに時が流れている。

慶子は雪道を分け、介護福祉士試験開場から帰りそして翌日雪道を歩き出勤する。

ブラックベイダーの家族もまた雪に閉ざされて生活する。ピーチの夫寅五郎はF1333星のボスのところへ出勤。そして、英樹も。

大切な人との物理的距離は遠くとも、心が近く感じられる。

書いた後にそう感じました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ