7章
随分と期間が空きましたがとりあえずは続いています。気が向いたら読んでください。
その後は多少のハプニング(主に魔王が逃げ出そうとして勇者にボコられるか、ゼグラードに捕まって執務室に叩き込まれることがほとんど)はあったもののスケジュールは順調に消化されていき、新区画の完成式典まで数日までせまっていた。
「魔王さま、包囲都市の新区画の式典まであと数日ですが以前のように欠席したりしないでくださいね。あの時は随分と多方面への謝罪に苦労させられましたので、もし今回そのようなことがあれば・・・お分かりですよね?」
ゼグラードはその時のことを思い出し苦い表情になりながらスケジュールと決済漏れなどがないか書類を確認しつつ魔王に釘をさしていた。
「わかってるって、何度も聞かされてるんだから心配すんなって!今回の俺は一味違うぜ?」
わずらわしそうにしながらも、何故か自信満々に胸をはりながら答えを返す。
そんな魔王の言葉をスルーしながら、さらに注意を重ねる。
「そもそもゲームでの夜更かしでの寝坊で大切な式典を欠席するなど、自覚に欠けるとしか言いようがありません。今回は前日のゲームはもちろん、深夜のアニメ鑑賞も禁止させていただきますよ。」
「断る!」
「断らせませんし、見張りをつけさせていただきますよ。」
すかさず返した魔王に対して、間髪入れずに返す。
「そもそもなんであいつらは魔王を式典に呼びたがるんだよ。本来は敵同士なんだぜ?」
「友好的である、というところを強調して各国は国民に安心してもらいたいんですよ。そうしなければ不安が広がりそれこそ内輪もめの要因になりますからね。そもそも交流を持つことにしたのは魔王さまからですよ。」
魔王はその言葉を苦虫を噛み潰したかのような顔で聞かざるを得なかった、ゼグラードの言う通りだったからである。
「仕方なかったんだよ当時は必要だったからそうした、ただそれだけの理由だったんだけどな。しかし今となっちゃあ別に不干渉でもいいんだけどな~。今からでもそうしたいんだがダメか?」
「間違いなくダメでしょうね。ここで交流を打ち切ればなんらかの思惑があると思われてしまいますよ?魔都に攻め込まれることはありませんから内部の魔族の安全は保証されますが、交流のために外部に出ている魔族への迫害が始まる可能性が高いでしょうね。それを気にしない、ということであれば打ち切ったとしても問題ないでしょう。」
「まったく良くはないな。ちくしょうめ、なんで適度な距離ってのを保てないんだよ。パーソナルスペースはやたらと気にしやがるくせに、離れたら不満をぶちまけるめんどくさい彼女かよ、いたことないけど。」
魔王はひたすらに不満を垂れ流し続けるが、返ってくるのは無情な言葉しかなかった。
「彼女がいないことに関してはどうでもいいです。適切な距離というところは残念ながら戦争の結果が曖昧なままでしたからね、その適切さをはかりかねてるんでしょう。まぁ、決着をつければいいってものでもないでしょうけど。」
魔王さまがされたことですよ?今更ですね、という感じを隠しもせず返される。
「あーーーー、もうめんどくせぇなぁ!!普段は仲が悪くてまとまりがねぇくせにこんな時だけ無駄に一致団結しやがる。こっちを巻き込まないで人類だけでもめててくれねぇかなぁ。」
「恐らく確実に巻き込まれますし、もっと面倒なことになりますよ。」
「知ってるよ!わかってるよ!それでもこの書類の山と予定の詰まり具合を見てると言わずにはいられん!あー、レイド行きたい素材集め行きたいー!!」
床で手足をばたつかせながら駄々をこねるように(否こねている)のたうちまわっていたが、ゼグラードの視線の温度がだんだんと冷めてくる。
「別に床の上で暴れていただくのは結構ですが、仕事に必要な時間はなにをしてでも確保させていただきますので。」
必要な書類を揃えながら決して仕事からは逃がさないと宣言する。
「くそう、主君に向かってなんて奴だ!」
「主と敬えるだけの仕事をしていただければ態度も変わりますが?」
「なんでこう俺の周囲には俺への当たりがきつい臣下ばっかりなんだよ・・・」
「胸に手を当てて考えていただければおのずと答えが浮かんでくると思いますよ。」
魔王は考え込むフリをして、とぼける。
「んーーー、なんのことやら!まったく浮かばないなぁ。」
「はぁ・・・もう結構です、必要な業務さえしていただければね。」
ため息をつきつつなんとも言えない表情で答える。
「とりあえず今からここから全ての書類の決裁をしてもらいますからね、さっさと始めてください。それとも縛り付けられてからのほうがいいですか?」
「いやぁ緊縛の趣味はないから遠慮しとくわ、始める前にちょっとトイレにいってくるわ~。」
さりげなく(実際はかなりあからさま)部屋から離れようと立ち上がるが、即座に止められる。
「先ほどすませたばかりでしょうが、逃げ出すのでしたら順番にモニターから叩き割りますがよろしいでしょうか?」
「よくねぇよ!お前は悪魔か!」
「魔族ですよ、何回目ですかその返しは。ほら始めてください、あとがつかえてるんですから。」
「もう嫌なんだよぉ、数字を見るのも細かい文字を見るのも!目が乾いてきてしょぼしょぼするー」
心の底から嫌だと叫ぶ、しかしその声は誰にも届かない。届いたところでスルーされてしまうが・・・
「目が乾いたなら水魔法でも打ち込みましょうか?まったく嫌でも仕事は仕事ですからね、きっちりとしてください。」
「主君に魔法を打ち込むな!あぁぁぁぁぁぁ、仕事ばっかりめんどくせぇよぉぉぉぉぉぉ!」
魔王の慟哭が誰にも届かず夜の闇に吸い込まれていくのであった。
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またそのうち続きは投稿させていただきます。よろしくお願いします。