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4章

ようやく城にもどってきた魔王は上機嫌でスキップしながら部屋に戻っていた。

「ククク、ついに我自由を得たり。我が覇道を阻むものはなし!」

などとつぶやきながら廊下の角を曲がる。そこで部屋の前に立ちはだかる壁を見つけてしまいテンションが急降下。

「魔王さま、おかえりなさいませ。今少しお時間はよろしいでしょうか?」

と魔王防衛軍のトップであるヴァン将軍に声をかけられる。魔王は目線をそらしながら

「何用だ?我は忙しい後にはできぬか?」

と答えるもまるでその用事がなんなのか知っているかのように詰めてくる

「ほう、どのようなご要件で?私にお手伝いできることはありますか?もしないのでしたらどのようなご要件かお聞かせ願いたいのですが?」

魔王は背中に冷や汗をかきつつなんとか誤魔化そうとする

「いやぁ・・・そんな大層なものじゃないから・・・大丈夫だ」

あからさまな魔王の態度に将軍の眼光が鋭くなる

「まさか部屋で遊ばれることがお忙しいというわけではありますまいな?」

「それは・・・えっと・・・わかったわかった、要件を言え、聞くから」

「魔王さまそのようないい加減なことではこまります。そもそも・・・」

そこから約30分ほど将軍の説教が続き最終的には廊下で二人共正座をしてしいた。通り過ぎる使用人たちも慣れたもので「ああ、またか」程度にしか思われなかったとか

「ですので、この先の魔族の未来のためにもしっかりとしていただかねば」

「はい、わかりました。で、要件てなんなんでしょうか」

魔王は若干涙目になりながら最初の要件に話を戻そうとする

「おお、そうでしたな。以前魔王さまに提案させていただいた件についてお答えを聞きたいと思いまして」

「ああ、あの件か・・・」

魔王の表情が先ほどとは打って変わって厳しいものとなる

「答えは却下だ、認められん」

「なぜですか!我々は現状を打破するべきであり、そのためにはあの包囲都市が邪魔なことは事実ではありませんか!!」

「その必要はない、わざわざ今になって人間に戦争を仕掛けるなど私に恥をかけというのか?」

ヴァン将軍は声を荒らげ抗議を重ねる

「なにが恥ですか!この魔都に閉じ込められている状況こそ恥であり、我々魔族がまるで家畜かのように扱われ誇りが汚されているのですぞ!以前も申し上げたとおり勇者どもはこの街に入れませぬ、ならば魔都の内部よりこちらから攻撃をすれば一方的に攻め続けれるのです、これを使わない理由はありませぬ!」

「ならば以前と同じ回答をするぞ。こちらから和平を申し出たのだ、そのような行動にでることこそ誇りを汚すものだと知れ。」

二人はにらみ合い、空間が歪んだような印象を受けるほどのプレッシャーがそこにはあった

「わかりました、今日のところは戻らせていただきますが私の考えは変わりませんぞ。必ず現状打破の必要性を理解していただく」

そう告げるとヴァン将軍は足早に去っていった

「ふぅ・・・たまに真面目な話をすると疲れるねぇ・・・」

「でしょうね、おつかれさまです魔王さま」

「おおう?!いたのかよビックリするなぁ」

気づけば背後にゼグラードが飲みものを持ってきていた

「途中からですがね。ヴァン将軍にも困ったものです、魔王さまの決定に異を唱えるなど」

「まぁあいつが最後の戦場に出ようとしたのを止めたのは俺だからな、悪いとは思っているがこればっかりは覆らねぇよ」

魔王はお茶を飲みながら嘆息する・・・

「将軍と同じ考えのやつらも少なくない、長い生の魔族にとって50年程度ではまだまだ浸透するには時間がかかるな」

「私は慣れましたがね、これでも一応腹心なので」

「ハハ、ならもう少し自由にさせてくれませんかねぇ」

「それとこれとは話は別です、さぁ一休みは終わりですよ次のお仕事が待っていますよ」

「?!え?!今日のは終わったんじゃ・・・?」

「そうですね外での公務は終了です。書類の確認などはまだまだ残っていますので進めていただかないといけませんよ」

「いーやーだーーーー」

「どちらへ行かれるので?執務室は逆ですよ?」

魔王を捕まえ執務室まで連行していくのであった・・・

「ちくしょうめ!!!!」

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夜も深けてゆき執務室に淡い明かりが灯る中ひとりの男が仕事に励んでいた

「ククク、あやつも迂闊だな。まさか我がこの机に仕掛けをしていたとは露ほどにも思うまいて」

否励んでいたのは携帯魔晶機でのゲームだった。引き出しを二重底にして隠していたのでまだ気づかれていなかった。

「しかし、今回のアップデートで今までの装備の大半が役立たずになっちまったなぁ・・・運営め!!」

とぼやきながら装備集めをしていると、ドアをノックする音が聞こえた

「魔王さま、お茶とお菓子をお持ちしました。一区切り入れられてはいかがですか?」

魔王は超スピードで魔晶機を二重底に隠し仕事を進めていた振りをする

「おう、すまんな。そこに置いておいてくれ。」

「わかりました、どこまで進みましたか?」

と聞かれるもののゲームをしていたのでほとんど進んでいなかった。

「あー、そこまで進んでねぇな。量が多すぎてどこからやっていいのか分かんねぇわ」

「まったく・・・普段から少しづつでもやっていかないからです」

魔王は仕事をするふりをするため手近な書類に目を通すと、表情が強張る

「今度はオルガか・・・あいつらも好きだねぇ・・・」

意見を求めるようにゼグラードに書類を渡す

「今回はどのような内容ですか?ふむ・・・予算の増額の申請ですか。」

主に街の整備や修繕を行う部門の責任者のオルガはヴァン将軍と同じく攻めるべきと主張する派閥の一人だ。

「増額した予算は軍に都合のいいように使われるだろうな。」

「でしょうね、かねてから将軍は外壁の武装化を主張していましたからね。恐らくそこに使われるでしょうね。」

「めんどくせぇなぁ、外壁の修繕とか書いてあるがどんな修繕するんだかな。」

魔王は書類に却下の印を押し決済済みの箱に入れる

「老朽化には程遠いから却下って伝えとけ。食い下がってくるなら正確にどの部分をどのような修繕を実施するのか図面で出させろ。」

「かしこまりました、そのように伝えます。」

「いらねぇ仕事増やすなよなぁ・・・いい加減めんどくさくなってきた、どうにかならないかねぇ・・・」

ぼやきながらお茶を飲むべく席を立つと書類に手が当たり床に落ちてしまう

「魔王さませっかく整理して置かせていただいてましたのに、やり直しではありませんか。」

「すまんすまん、順番わからねぇから片付けといて。」

「まったく少しは整理してください」

ゼグラードが書類を拾い集めるべく机の方へ向かう、そこでふと足が止まる

「魔王さま・・・」

「ん?なんだよ、お茶飲んだら仕事するから書類置いといてよ?」

「ほう・・・お仕事ですか・・・このようなものをしながらで?」

ゼグラードの手には携帯魔晶機が握られていた、強く握り締めているためかミシミシと音がする

「アレ???ナンデソレヲモッテラッシャルノデスカ???」

「引き出しが開いておりまして、しかも二重底などという小細工までされて何をしておられるのですか?」

魔王はカタカタと鳴るティーカップを机にそっと置きソファーに深々と腰掛ける、そして諦めたかのように深く息を吐く

「さて・・・寝るか・・・」

「そんな訳ないでしょうが!!!今から私が監視しますから、終わるまでここから出しませんからね!!!あとこのゲームも返しませんからね!!!」

怒声が部屋に響き渡り、部屋の明かりが消えることはなかった・・・

----------------------------------------------------------------

その頃レティシアも期日が迫るセレモニーの準備で今夜も議会ホールに泊まり込みであった

「あいつがモタモタしてるせいでこっちの仕事までずれ込んだじゃない、今度絶対殴り飛ばす」

魔王への文句を言いながらもこちらは手を止めずに仕事を続ける

「大体なんであいつのせいで遅れた分まで私が嫌味言われなきゃならないのよ!」

魔王と別れた後議会に戻った彼女は新区長に延々と仕事の遅れを指摘され続けた

「まぁまぁそうカリカリしなさんなって、これでも飲んで落ち着けよ」

レティシアは驚いて顔を上げるそこには勇者議会の議長の一人カイルがコーヒーを持って立っていた

「あ、ありがとう。もう、カイル入ってくるときはノックくらいしてよね」

「したんだけど気付かなかれなかったんでね、悪いがはいらせてもらったよ」

そう言って彼女にコーヒーを差し出す

「それは・・・ごめんなさい」

「いいって、誰かさんのことで頭が一杯だったみたいだしな。」

「その言い方は誤解をまねくからやめて、そんないいものじゃないしね」

「ハハ、悪い悪い。お詫びついでに書類の整理手伝わしてもらうな」

そう言って近くにある書類から確認を始めていく

カイルに手伝ってもらったことにより予想以上のスピードで書類が減っていき、徹夜かと思われたが日付を少し超えたところで片付いた

「ん~~~~、疲れた~~~~」

肩を叩きながら今日の仕事が終わった喜びに少しばかりひたっていると

「さって後は簡単な片付けだけだし、じゃあ俺は帰るな。」

「ええ、助かったわ。ありがとう」

「いえいえ、どういたしまして」

手を振ってカイルを見送ろうとしたがふと確認したいことがあったので呼び止めて質問をする

「ねぇ、なんでウォーレンスのやつここに来たと思う?」

「いやぁ一応出世コースだからじゃないか?区長になったらそれなりの権限を持てるし悪い話じゃないと思うが?」

「ええ、そうよ悪い話じゃないわ。でもね元々聖都でエリートコースだったんだからさ、わざわざここに来なくても出世はできたわよ?それも今以上にね。ムカツク話だけどね」

ウォーレンスは聖都で時期聖王補佐官候補として教育、実務を行ってきていた。いくら魔都包囲都市の区長がおいしいポジションだとしても、補佐官となるためのコースからいささかはずれてしまうと言わざるをえない。そうなると今までの経験が無駄となってしまう。

「そういやウォーレンスは昔からギードとつながりがあったはずだ。その関係じゃないか?」

「あの根暗と?あいつが人と交流してるなんて聞いたことなかったわね」

「こらこら、あいつも同じ議長なんだから悪く言わないの。それに一応先輩なんだからさ」

3人目の議長ギードは現在の勇者議会の中では一番の古株だったが、あまり社交的とは言えず外向けの業務は2人にまかして自分はデスクワークを専門にしている

「はーい、わかったわよ。でも意外といえば意外よね、ウォーレンス嫌味ったらしいけど仕事は出来るみたいだし。それに結構強いわよ?あいつ」

「まぁ補佐官っていや文武両道でなけりゃなれないしな。」

「そうなのよだからこそ不思議なのよねぇ、いくら議長だからってさ、そんなエリートがあれに話しかける?」

「さぁな意外と気があっただけかもしれないしな、気にしても仕方ないだろ」

「まぁそれもそうか」

腑に落ちないと感じながらも深く追求する理由もないと思い、とりあえず放って置くことにする

「んじゃ今度こそ戻るわ、おやすみ~」

「変なこと言ってごめんなさいね、おやすみなさい」

カイルを見送ると、自分も帰るための準備をしていく。するとふと変な声が聞こえたような気がした

「ん?なんか聞いたことがあるような声がしたような・・・?気のせいかしらね」

ちなみにそれは魔王がゼグラードにゲームを破壊された悲鳴だったが、レティシアには知るよしもなかった

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その者は魔王城の地下に通じる扉の前に立っていた・・・

地下深くに封印されているモノに用があったのだが厳重に施された封印があるため入る事が出来なかった

「・・・早く解放せねば・・・」

誰にも聞かれることのない言葉を残すとその場から静かに立ち去っていった

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