第六話 娘 メイド 可愛い子!?
第六話 娘 メイド 可愛い子!?
どうやら俺は謝る機会を失ってしまったらしい。
「はぁ」
俺は溜め息をつきながら自室のベットにダイビングヘッドしていた。
あれから、何回か謝ろうとしたんだ。これでも。
だが、現在時刻は夜の九時。あれからそろそろ実に十時間が経とうとしていた。
「はあ」
俺はさっきより大きい溜め息をついてしまう。
我ながらなんてことを言ってしまったんだ。あいつはあいつなりに精一杯の努力だったんだろう。なのに、俺はそれを根本からへし折ってしまうなんて……最悪だ。
俺が考えているとトントンとドアがノックされた。
「だ、誰だ?」
まず、詩花ではない。何故ならあいつはノックという風習は持ち合わせていないからだ。
となると妹か? いや、それもない。あいつは俺に何か言うとき必ずと言っていいほどケータイで済ます。
なら、誰だ?
「お、お父さん?」
ああ、いたよ。俺の家にはもうひとり。問題の我が娘、空条叶羽が。
「な、なんだ?」
俺はテンパって適した答えを模索できないでいた。
「は、入ってもいいですか?」
な、なぜに敬語? てか、待て待て、今の俺の格好は大丈夫か? いや、ダメだろ。ズボンくらい穿けよ俺!
「ちょ、ちょっと待て」
「う、うん」
な、なんかいい子になってないか? まあいい、俺はまずズボンを探さなくては。
俺はズボンを穿き、身なりを整える。
あれ? なんで俺身なりを整えてんだ? たかが自分の娘に会うだけで。
「は、入っていいぞ」
俺は緊張気味に言った。なんで緊張してんだ俺は。
「へ?」
入って来たのは確かに叶羽だった。だが問題はその格好だ。
「な、なんでお前、メイド服を着てんだ?」
そう、叶羽はメイド服を着ていたんだ。
「だ、だって、木葉おば……が言ってたんだもん!」
木葉め、あいつ俺を出しにメイド服なんぞ着せやがって。
俺はこういうのわからんことをいいことに着させまくるんだよなぁ。
そ、それにしても似合いすぎてはいまいか? わが娘よ。
「……」
「な、なに?」
おっと、俺としたことが娘に見とれてしまうとは……。
もし、これがバレればメイド服が冥土服に早変わりだ。
はは、俺って結構うまいこと言うじゃないかぁ。
「や、やっぱり変?」
俺の反応に違和感を感じたのか叶羽はくるっと周り自分を見る。
お、おい。そんなに回ったらスカートの中が、見えちまうじゃないか!
「そ、そんなに回んな。似合ってるよ。大丈夫だ。お前はそういうのが似合っているから」
俺は手で目を隠しながら回らすのを止めようと試みる。
「そ、そう? お父さん、ごめんなさい」
叶羽はメイド服のまま頭を深く下げた。
「い、いや、俺も言いすぎた。ゴメンな」
俺はベットに座ったままだが誤った。これでさっきのはおしまいだな。
「さ、さあ、着替えてこい。あんまりそんな格好でいると風邪引くぞ」
俺が言うが叶羽が頭をあげようとしない。
俺はそんな叶羽の頭に手を乗せなでてやった。
「お前は自分で考えてここまで来たんだもんな。たとえ、それが正しくないことでもお前はここまで頑張ったんだ。それは誇っていいことだぞ? だからさ、泣くなよ」
そう、頭を上げなかったのは俺に泣き顔を見られたくなかったんだろう。
涙を床にぽたぽたと落としている。
「な、泣いてなんか……ないもん」
その声はかすれ、泣くのを我慢しているようにしか聞こえないが俺は分からないフリをした。きっとそれはこの場合の正しい選択肢だと思うから。
「透弥ぁ。ゲーム、しよう……わい」
俺のドアを開け放ち詩花が俺とするために持っていたであろうPLPを床に落とした。それだけではない。か、固まっている。
「「「……」」」
三人とも無言になる。
俺は今自分が置かれている状況を詳しく整理した。
メイド服を着た娘→頭を撫でる俺→泣いている娘→そこに一部しか見ていない詩花。
この状況はまずくないか?
「う、詩花。こ、これにはわけが……」
「うん、わかってわい」
そ、そうか。わかってるか。
「そりゃあ、可愛い女の子、しかも自分の娘だって言ってる女の子にコスなんたらをさせたくなったんだろうね」
おいおい、それは全体的に間違ってますよ、詩花さん。
「ち、違う。これは木葉が――」
「人のせいにするなわい!」
それはもう日本語じゃねぇ!
「あは、あははは。こ、困ったな。どう説明したらいいものか」
「とりあえず、寝ようかわい。ねぇ、透弥?」
それって、永遠が入っていませんよね? 入ってませんよね!?
「ね? 透弥?」
「……はい」
俺は死を受け入れるかのように返事をした。
「ふふ」
オー、神よ。なぜ俺はこんな人生に陥れるのですか。
「叶羽ちゃん、ちょっと部屋出ててくれるかわい?」
「え? う、うん」
か、叶羽、これで今生の別れだ。
忘れるな。この女、詩花は最凶の女だということを。そして、それに立ち向かった男がいたことを――
叶羽が出ていき、ドアがゆっくりと閉まっていく。まるで、俺の死へのカウントダウンが行われているかのように。
ガチャ
俺の部屋のドアが完全に閉まった。
「さあ、透弥? 悪い子にはお仕置きが必要だよね?」
俺は何もしちゃいねぇ!
「お、落ち着こうぜ? お、俺は何もしてないよ」
ニコッと詩花は笑う。目は笑っていないが。
俺はそれに向かって俺も笑顔を送ってみた。
「ねえ、透弥。スイカ割りと砂遊びどっちがいいわい?」
スイカ割りと砂遊び? なんだそれ?
「お、おい。スイカも砂もないだろ?」
「ああ、そっか、じゃあ綿でもいいや」
綿でもいい? それって……。
「さあ、どっちだわい?」
すいか(俺の頭)割りと綿遊び(綿の中に俺を入れる)って結局俺死んじゃうよね!?
「あ、あはは。冗談がうまいなぁ、詩花は」
「はは、とりあえず両方いっとく?」
ぎゃー、目が本気だぁぁぁぁ!! こ、殺されるぅぅぅぅ!!
「えい♪」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!」
その夜、暗い暗い夜道、静寂が支配する夜に俺の声はどこまでもどこまでも響き渡ったことだろう。
いやぁ、この作品ももう六話ですか。
まあ、私は三つしか書いてませんが(笑)
今回はなんとなく難しかったですよ、なごしさん(;_;)
でわでわ、次の作品までノシ