第二話 俺が君の父親で君が俺の娘で
第二話 俺が君の父親で君が俺の娘で
どうしたことだろう。
田中さんになぜか女の子が降ってきた?
いやいや、突然現れた?
違うだろ。今はそんなの関係ない。
今言えるのは俺んちのお隣さんが爆発した点にあるだろ。
しかもそこには俺をお父さんと呼ぶ少女が――
「はい? お父さん? 俺が? 君の?」
「そうだよ! あなたは未来で私のお父さんをしているんだよ!」
ああ、不思議っ子ですか。
昔は流行ったよねぇ。でも、今はそんなの流行らないぞ?
「その顔は信じてないでしょ」
当然だ。どうやったら信じられるんだ?
「ふっふっふ、私には秘密兵器があるんだよぉ」
不気味な表情を浮かべニヤつく少女。
ひ、秘密兵器? なんだそれ。
「保育園のときお父さんは隣の女の子の布団に寝ションベンしたこととか」
な、なぜそれを知っている!?
俺は詩花の方を向いた。保育園のとき俺は本当にそれをした。しかも、その女の子が詩花なのである。
詩花は頭にクエスチョンマークを浮かべ首を傾げている。
(おい、詩花。あのことは隠蔽しろって言ったろ!)
(うん、だから言ってないわい。でも、なんでこの子がそのことを知っているのかな?)
どうやら本当に知らんらしい。
どこかで俺の情報が漏れているのか?
それならプライバシーの侵害で訴えますよ?
「他にも知ってるよ? 小学校のときお父さんは女の子のパンツを奪って――」
「あああぁぁっぁぁああああぁぁあああああああ!!」
俺は近所迷惑もいいとこの声で叫んだ。
なぜだ! なぜそれを知っているぅぅぅぅ!! あ、あれは誰にも言ってないぞ?
「あとは……」
他にも言おうとしていたので俺は両手を挙げ降参のポーズをとる。
「お父さんが女の子の――」
「もう降参してますけど!?」
何なんだこいつ。俺の秘密を全部バラすつもりか!? それはもう死亡フラグですよ!?
「あははは、やっぱりお父さんだ。この反応はお父さん以外にはできないよ」
可愛い笑顔を浮かべてなんだか嬉しそうな顔をする少女。
「ああ、そのなんだ。お前が俺の娘だっていうのは信じがたいがそこまで知られていると信じてしまうよな」
俺は半ば諦め顔でそして、声で言った。
「もう、まだ信じてないの? まったくこれだから人間は」
「君も人間だよね!?」
少女はムスっとした顔を俺に向けてきた。
「その『君』って他人行儀みたいな呼び方やめて、私にはお父さんにもらった空条叶羽って名前があるの!」
空条叶羽か。
綺麗な音だな。とてもこいつに似合ってる、そんな気がする。
「叶羽、じゃあお前はどこから来たんだ?」
叶羽は首を傾げている。
「だから、未来のこの街だってば」
ああ、どこまでも不思議っ子を突き通すわけですか。
「そんな嘘は――」
俺が言いかけると少女は下を向き黙ってしまった。
いや、黙ったのではない。よく耳を傾けると泣き声だ。少女から泣き声の音がかすかにする。
「まさか……泣いてるのか?」
少女は下を向きながらブンブンと頭を横に振る。
その泣き方が妹に似ていた。その動作すらもが妹そっくりだ。
俺は無意識に叶羽の頭に手を乗せ撫でていた。
すると叶羽は頭をすっと挙げニッコリの笑顔で俺を見た。
「ね? やっぱりお父さんだよ。私が泣いているとき絶対にこうしてくれたもん」
「ち、違う! 今のは……今のは可愛そうな子がいたから! そうだ。可愛そうな子がいたからだ!」
俺は周囲を説得すると同時に俺までもを説得していた。
「そう、なんだ。うん。そうだよね。いきなり来た女の子に私はあなたの娘なのって言われても急には無理だよね。わかってたのにね。でも、私にはしなくちゃならないことがあるんだよ」
しなくちゃいけないこと?
「私ね? 私、お父さんのお嫁さんを助けに来たの!」
その場の空気が一気に氷点下まで下がった。
ナンダソレ、オレノオヨメサン?
「い、いいか?」
「うん?」
「お、俺は今現在お嫁さんではなく彼女さえいない」
叶羽の表情がフリーズした。驚きを隠せないでいるらしい。
「う、う、う、う、嘘だ!」
嘘じゃない! ホントだ! 悪かったな、俺が童貞で!
「そんなぁ、これじゃあぁ、お父さんとの約束も、果たせないよぉ」
叶羽はもうこの世の終わりみたいな顔をしてうなだれている。
すると遠くからパトカーのサイレンが近づいてくる。
どうやら、他の案件が終わり今度はこっちの番らしい。
「と、とりあえず俺んちに行くぞ。このままじゃサツに捕まる」
サツとは警察のことである。
俺は叶羽の手を取り走り出した。だが、途中で詩花のことを思い出し振り返る。
「詩花! 早く来いよ!」
詩花はどこか遠い目をして突っ立っていた。
「ったく、ボーッとしてんじゃねぇよ」
俺は空いている方の手で詩花の手を掴み引っ張って俺んちまで逃げ込んだ。
「さあ、続きだ。俺はお前のことを俺の娘だと認めてやっても構わない。ただし、条件がある」
叶羽は真剣に俺の言葉を聞いている。
「うん。なんでも聞いて、雑用でもなんでもするよ」
いや、さすがにこんな可愛い子に雑用はダメでしょ。
「俺が聞きたいのはただ一つ。お前は未来で幸せな生活を送ってたか?」
家出ってわけじゃなさそうだし、しかもさっきお母さんを助けに来たとかも言ってたような気がするし。だから、きっと未来でなにかあったんだろうと思う。
叶羽は少し考えパッと俺の方を向き
「うん。お父さんとの生活はすっごく楽しいよ♪」
言っている顔がとても笑顔だ。嘘はついていないだろう。
「そうか。楽しいか。はは、それならいいんだ。そうか。楽しいか」
なんか。俺まで嬉しくなってきたよ。未来は楽しいか。そうかそうか。
俺が妙に理解がよくてびっくりしたみたいだった。
「だってさぁ、こんな可愛い子のことを信じないのは罪だと思わないか?」
俺が平然と言い放つと
「ど、どうしよう。お父さんが変態のサラブレットだったよぉ」
「それはどうかと私は思うわい」
あ、あれ? なんか空気が重いのは気のせい?
どうして? なんで? え? 俺何か間違えた?
「ま、まあ、これで信じてもらえたと思えば安いもんかな」
なんか、理解されちゃったよ? え? なんか、呆れてる?
「そういえば、叶羽はお母さんとやらを助けに来たんじゃないか?」
俺が問うと叶羽はハッと何かに気がついたかのように俺の方を見た。
「そうだよ。そうなんですよ! 私、お母さんを助けに来たんだよ! なのに、お父さんは知らないって言うじゃないですか! どういうことなんですかまったく!」
怒ったり、呆れたり大変だなぁ、こいつも。
「な、何か、ヒントはないのか? そのお母さんの写真とか」
「うん。五年前、この時間じゃ二十年後か。この家が放火されて火事になって写真は愚か痕跡すら残ってないんだよ」
へ? 家が放火されちゃうの?
「私のお母さんは小さい頃に死んじゃって顔も覚えていないし、写真はないから私は何も知らなかった。お父さんはそのことは話したくないって言って全然話してくれないし……」
なんか、どんどん話が暗くなってないか?
あれ? さっき未来は楽しいって言ってたよね?
「え、ええーっと。それで、俺に何をして欲しいの?」
俺が聞くと叶羽は涙を浮かべた目で
「私とお母さんを探して!」
はい。なんのヒントもなく今日から俺はお嫁さん探しに明け暮れるみたいです。
はい。任されました。
ヲサダここからです!
いやぁ、まさか変態のサラブレット(今ハマってる)と小説を書くことになるなんて思っていませんでしたよ(笑)
さてさて、今回はむ、娘が未来からやってきただと……的な感じで始めてみました!
いやぁ、これ、なかなかに面白いんじゃないか?
と思いましたよぉ
ま、これからの進展によっては泣けるところができるかも……。
ということで変態のサ――なごしさーん、バトンタァァァァアアアアッチ