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We love PK!  作者: ケレンコフ
第一章。
8/11

親バカ達。

「あーちゃんあーちゃん!!!可愛いリボン買ってきたヨ!!可愛くおめかしするヨ!!!」


「あーちゃんあーちゃん!!!さっきロンドンで可愛い服を見つけたんだ!!明日日本に送るぞ!!!楽しみに待っててね!!!」


少女が加わってから早一月、ヤマザキ達のギルドは連日大騒ぎである。

年長二人組が、これでもかと言うほど少女に構うのだ。


その様子を見たヤマザキが


「まるで初孫が生まれたおじいちゃんとおばあちゃん見たいっすね。」


と漏らした所、軍麗に殺されかけた。



「う、うん、ありがとう。」


プレゼント攻勢を受ける少女も、若干困り顔だ。


「もー、二人ともいい加減にするッすよ。あーちゃんのアイテムボックスも、俺らの部屋も、もういっぱいいっぱいなんすからね!!」


ヤマザキの言うとおり、部屋もアイテムボックスも、必要な空き分がかなり圧迫されてしまっている。


「………ふむ。それはいかんな。」


「確かにネ。あーちゃんが困るは、良くないよ。」


「全くもう。分ったら当分プレゼントアタックは」


「よし!!そうと決まれば、ギルドホームの拡張だ!!!資金調達だ!!!」


「うぇ!?なんでそうなるんすか!!」


「序に二人の部屋の引っ越しも出来る位に稼ぐネ!!趣味と実益を兼ねた、最高のお仕事を始めるヨ!!」


そう言って、ゲイツと軍麗がホームを飛び出そうとする。


「あ、あの!!」


そんな二人の背中に、少女が声をかける。


「二人とも、気をつけて下さいね。」


心底心配そうな、二人を気遣う声。


そんな少女の声に軍麗は


「分ったヨ!心配しないで待ってるといいヨ!!」


と、整ったその顔をデレデレに緩ませて答える。


因みにゲイツは


「あーちゃんの心配ktkr!!!みwwwなwwwぎwwwってwwwきwwwたwww………別に、一日で稼いでしまっても構わんのだろう(キリッ!!なーんつってなwwwなーんつってなwww」


と、良く分らないテンションでホームを飛び出していった。何というか、色々駄目なおっさんである。






二人が居なくなった後、静寂がホーム内に満ちる。


「………どうっすか?此処に来るようになって、大体一カ月になるッす。」


「え?あ、はい。ゲイツさんも軍麗さんも、もちろんヤマザキさんもとっても優しくって、面白くって………前と比べると何だか、夢みたい。」


二人が現実世界で暮らすようになってからも、ほぼ一月が経っている。二人で暮らし始めた当初、少女が夜中に泣きながらヤマザキの布団に潜り込んでくる事が有った。

死んだ両親が夢に出たそうだ。

ヤマザキがそんな少女の背中を撫で、あやしながら一晩を過ごしたこともあった。


だがヤマザキ達の優しさや騒がしさに触れるにつれ、少しづつ少女のトラウマは薄れているようだ。

最近では、笑顔も良く見せてくれる。


「ただ、皆さんが、その、お金を稼ぐのが………」


「………。」


ヤマザキ達は、社会不適合者の集まりだ。殺人を生業とし、趣味とし、ヴァーチャルの世界に入り浸る。彼らが稼ぐ生活費は、他人の命を喰らって得たもの。一人の少女を育てる環境としては、余りに不健全であり壮絶だ。

だが………


「それについては、申し訳ないと思うッす。でも、俺らはそれしか出来ない奴らの集まりなんす。俺らは、其れしか知らないんす。理解してほしいとは思わないっす。許して欲しいとも思わないっす。ただ、俺らを嫌わないで欲しいッす………」


ヤマザキ達は、其れしか出来ない。其れしか知らない、知る事が出来ない。今から他の生き方を知るには、余りに殺し過ぎている。


有る喜劇王は言った。


一人殺せば犯罪者で、百人殺せば英雄だ。


だが、彼らは幾ら殺そうとも英雄にはなれない。楽しみながら殺し続ける快楽殺人者で有る以上、何処まで行っても只の人殺しなのだ。




「………ヤマザキさん達に、其れしかないんだとしても………やっぱり、私は………」


だが、少女は否定する。ヤマザキ達の生き方を。


「………私には、ヤマザキさん達がどんなに誰かを殺しても嫌いになんてなれません。知らない誰かにとって、嫌われ者の皆さんでも、私にとっては、誰よりも、何よりも、大切な家族なんです。」


ただ、ただ、彼女は………


「怖いんです。もし今日ゲイツさんが帰ってこなかったら、軍麗さんに会えなくなったら、ヤマザキさんが私の前から居なくなったらって………」


彼女は、手に入れた幸せを。本来ならば当り前の家族という幸せを、失くさない為に否定する。


ヤマザキは、ぽろぽろと涙を流しながら語る彼女の頭にそっと手を載せる。

涙を溜めた彼女の瞳に映るヤマザキの表情は、困ったような安堵したような。それでも、彼女の為に見せる温かい表情をしていた。


此処に居ない二人は、彼女の気持ちを知っているのだろうか?


そんな事をぼんやりと考えながら、ヤマザキは少女の頭を撫で続けるのだった。
































「ヤマザキ、何してるネ。」


「ううぇ!!?」


「ひゃぁ!?」


そんな二人だけの空間をぶち壊したのは、背後から突然聞こえた片言の日本語。


「軍麗さん!!びっくりさせないで下さいよ!!!心臓が止まるかと思ったッす!!!」


「何してたか、お姉さんに正直に言うヨ。返答次第では、ホントに心臓止めるヨ?」


「いやいや、これは違うんっす!!」


傍から見れば二人が抱き合っているように見えた事を、瞬時に悟ったヤマザキ。

弁解を試みようとするが………


「………っ!」


自分達の体勢を認識した少女が、顔を真っ赤にしてヤマザキの胸に顔を埋めた事で最早どうしようもない事を悟る。

一瞬、己の死すら幻視したヤマザキであったが。


「なんてネ。冗談ヨ。実は初めから聞いてたネ。」


「んな!」


「いや、ワタシ悪くないヨ。忘れ物取りに来たら、桃色空間作ってた二人の所為ネ!!」


「………!!!」


更に顔を赤くする少女。

そんな彼女の頭を、軍麗は優しく撫でる。


「あーちゃん、大丈夫ヨ。ワタシ達は、どうしようも無い奴らだけど、殺す事以上に生き残る事が上手ヨ。あーちゃんを一人きりになんて、絶対しないヨ。」


「ぞのどうり!!!」


バン!!と勢いよくホームの扉が開き、顔を涙でぐちゃぐちゃにしたおっさんが現れた。


「「うわぁ。」」


ゲイツの泣き顔にドン引きするヤマザキと軍麗、顔をひきつらせるあーちゃん。


「おでだぢば!!あーじゃんを、ひどりにじない!!!」


………色々、ぶち壊しだった。







この日から、ギルドホームに掛け軸が掛けられる事になった。

そこには、一言こう書いてある。



『生きて、帰る。』

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