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We love PK!  作者: ケレンコフ
第一章。
7/11

はみ出し者達。

此処から本編的な?

ヤマザキ達は、やっとギルドのホームに帰りついた。


少女の母親を殺した後、更に他者の襲撃を受けるような事は無かったが、ヤマザキは満身創痍だ。


森の中で二人でいる所をゲイツに見られて、勘違いした彼が


「貴様ヤマザキ!!!子供を手にかけようとは見損なったぁ!!!ぶっころーす!!!」


と言いながら襲いかかってきたり。


兎に角、身内で色々ごたごたが有ったのだ。







現在少女はギルドホームのリビングで、出されたお茶を見つめたまま固まっている。


帰ってくる道すがらヤマザキは森での出来事を二人に説明したのだが、よくよく考えてみれば少女の名前すらまだ聞いていない。


「………。」


だが、少女は無言のままだ。彼女も気まずいのだろう、出されたお茶に取りあえず口を付けていた。


「………えぇと。」


ヤマザキは孤児院の中でも少し浮いていた。

そのため孤児院では年下の者の面倒を見る事が殆どなく、言ってしまえば子供との接し方が全く分らないのだ。


「………はぁ、ヤマザキ。そんなんじゃ駄目だろうが。」


見かねたゲイツが助け船を出す。


「お嬢ちゃん、俺はこのギルドのマスターでびびる・ゲイツってんだ。」


「ぶっ!」


少女がお茶を吹く。巨体のおっさんが、真顔で、びびる。なんて名乗ったからだろう。


「おお、笑った笑った。うんうん、子供はそうじゃなきゃな。なに、大丈夫だ。此処には君をいじめる奴は居ない。チョット人殺しの好きな気の良い奴らばっかりだ。心配しなさんな。」


一部物騒な単語が含まれていたが、ゲイツは気にせずに続ける。


「お嬢ちゃん、名前は?」


「橋本 真莉依(まりい)。」


一瞬場が凍る。


「………それは、ゲームの外での名前かい?」


どうやら、彼女はネットゲームにおいてド素人のようだ。


「…うん。」


見事なまでにDQNネーム。いや、キラキラネームと言うべきか。

兎に角、親が周囲に誇る為だけに付けたであろう事が良く分る少女の本名だった。


「えーっとな。悪い人に悪い事をされないようにも、こういう時は、ゲームのキャラクターの名前を見るもんだ。」


ステータスを見ようとすれば彼女の名前くらいはすぐ分るのだが、コミニュケーションの一環として自己紹介を続けようとするゲイツ。


「………あ。」


「………あ?」


「ゲームでの私の名前。お父さんが、笑いながら付けてた。」


「………。」


何とも言えない静寂が場を支配する。

念のために皆揃って彼女のステータスを確認する。


そこには、確かに一文字『あ』という文字が躍っていた。

何とも虚しいソロダンスだ。



「じゃぁ、今から『あーちゃん』と呼ぶネ!」


と、場の雰囲気を振り払うように軍麗が言う。


「私は、軍麗(ジュンリー)ヨ。よろしくネ!!」


朗らかにそう言った軍麗に対し、少女はキョトンとしてから


「よ、宜しくお願いします。軍麗おねぇちゃん。」


そう返した。


「………ヤマザキ、ゲイツ。この子滅茶苦茶良い子ね!!!決めた、ワタシ絶対この子を守って見せる!!!」


「軍麗さん軍麗さん!!キャラ!キャラ崩れてるッす!!!」


おねぇちゃんと呼ばれたのが、相当嬉しかったのだろう軍麗が流暢な日本語で捲し立てる。


「ははは、確かに良い子だ!!こりゃ、将来が楽しみだな!!!」




………少女の将来。

三人の中に彼女を役所に任せようと思う人間は一人も居なかった。

ゲーム内で両親を失った子供に対して、政府は孤児院に入れる事で対処をしている。

だが、余り良い噂は聞かない。

そのため通常の孤児院は何処もパンク状態で、なかなか入れる場所もない。

少女から話を聞く限り、頼りになりそうな親戚も居ない。


幸い、ゲームのお陰で三人とも貯蓄に余裕はある。



「んじゃ、俺ん家であーちゃんの面倒見るって事で良いっすかね?」


反論の声は無い。



こうして、少女の新しい日々が始まった。

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